土曜日, 9月 6, 2025
ホームつくばつくばの「日本茅葺き文化協会」 国選定保存技術の保存団体に認定へ

つくばの「日本茅葺き文化協会」 国選定保存技術の保存団体に認定へ

国の文化審議会(島谷弘幸会長)は19日、つくば市北条に事務局があり、茅葺き(かやぶき)に関わる文化と技術の継承と振興に取り組む「日本茅葺き文化協会」(代表・安藤邦廣筑波大名誉教授)を、国選定保存技術の一つである「茅葺」の保存団体に認定することを文科相に答申した。官報告示後に正式認定される。

同協会は、地域的にいくつかの技法が見られる「茅葺き」の地域性に配慮して技能の継承を図り、さらに同協会の茅葺き職人が全国の文化財の保存修理工事に従事するなどの実績が認められた。

茅葺きの保存団体の認定は全国社寺等屋根工事技術保存会(1980年認定)に次いで2団体目になる。一方、同協会は2018年にすでに「茅採取」の保存団体に認定されており、今回の認定で「茅採取」と「茅葺」の2件の技術の保存団体となる。またユネスコ無形文化遺産「伝統建築工匠の技・木造建造物を受け継ぐ伝統技術」団体にもなっている。

文化財保護法は、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術または技能のうち、保存の措置を講ずる必要があるものを「選定保存技術」として選定し、その技を保持している個人または技の保存事業を行う団体を保持者または保存団体として認定している。「茅葺」は1980年に選定保存技術に認定された。今回の認定により、選定保存技術は計89件、保持者は67人、保存団体は48団体(重複があるため実団体は40)になる。

安藤邦廣代表理事 (同)

新たに茅葺きの保存団体に認定された同協会は、日本ナショナルトラストの活動の中で1999年に設立された「全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会」が前身。2010年に安藤代表(76)らの尽力により「日本茅葺き文化協会」として発足した。

茅葺きは、日本の多様な気候風土に適応し、地域性豊かな農村景観をつくり上げてきた一方、近代化、都市化が進み、その姿は失われ、伝統技能が失われつつあることから、茅葺きの文化と技術の継承と振興を図ろうと設立された。

活動は、茅葺き職人のほか一般会員も参加して、茅刈りや茅葺きなどの技能研修をしたり、全国の地域間の交流と連携を図る茅葺きフォーラムを開いたり、すそ野を広げる普及活動としてワークショップを開催している。海外とも、技術や文化の交流を図る国際交流などにも取り組んでいる。

具体的には2020年に熊本県高森町で茅刈り研修を開催、21年には静岡県御殿場市秩父宮記念公園で茅葺き研修、22年には沖縄県海洋博会場で茅葺き体験などを開催している。国際交流としては19年に欧州や南アフリカから茅葺き職人ら約120人を招いて岐阜県白川村で日本大会を開催している。

事務局があるつくば市北条の里山建築研究所

事務局は、安藤代表が主宰する同市北条の里山建築研究所内にある。会員は180人の個人と42の団体で構成し、122人の茅葺き職人がいる。年齢構成は50代以下が中心で、40代が最も多い。茅葺き職人は全国に200人ほどしかおらず、6割が同協会に所属する。80代以上の職人が全体の半数以上を占めるが、同協会に加盟していない人が多いという。

茅葺きの保存団体の認定について安藤代表は「茅刈りと茅葺きの一貫した、そして地域性に配慮した技能の継承と研修事業に取り組んできた。そのことが評価され、『茅採取」に加えて『茅葺』の追加認定を受けたことは大変うれしい」とし「今後は、技能の向上に努めると共に、若手の職人育成に力を入れ、そのためにも新しい茅葺きの技術開発やデザインにも取り組んでいきたい。また、茅場、草原の持つ生物多様性の維持や環境保全に果たす役割を広く啓発し、地域の茅葺き文化の継承と発展をはかりたい」と述べる。(榎田智司)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

祭囃子と縁日と、それからラムネ《ことばのおはなし》85

【コラム・山口絹記】つくばに住むようになってから、新型コロナによる中止期間を除いて、なんだかんだと毎年つくばの夏祭りには足を運んでいる。目的はつくば駅周辺で行われるパレードとねぶた、というよりも縁日の方である。今年はこどもたちを連れて2日連続での参加だ。 私が育った東京の下町では、縁日は夏以外にも定期的に行われている、日常の延長にあるものだった。たまたま出かけた日に縁日がやっていれば、友人とたこ焼きを買って半分ずつ食べたりするのだが、いつ縁日がやっているか、ということは意識したことがなかった。 しかし、つくばではおそらく(私が知らないだけかもしれないが)縁日は夏にしかやっていない。東京に住んでいた頃はありがたみなど感じていなかったのに、いざ日常から消えてしまうと恋しくなるもので、この10年くらいは日程を調べて縁日に通っているというわけだ。 毎年の特別なイベントに こどもたちのラムネの瓶をあけて手渡す。喉を鳴らして飲むこどもたちにつられて、自分も一口飲んでみる。最近のラムネ瓶はプラスチック製なので、なんとなく風情に欠けるような気もするが、猛暑の中で祭囃子(ばやし)を聞きながら飲むラムネはいつの時代でも格別においしい。 つくばに来た当初は妻と2人で気ままに歩いた縁日も、気が付けば上の娘を肩車して行くようになった。小さかった娘はもう手をつながずに人ごみを歩けるようになり、今は目を離すとどこかへ行ってしまう下の息子の腕をつかんでいなくてはならない。そのうち、こどもたちもそれぞれの友達と祭りに行くようになると思うと、いつの間にか日常の延長だった縁日が、毎年の特別なイベントに思えてくるのだから不思議なものだ。 何かを見つけて人ごみに消えていく息子を追いかけながら、そんなことを考える。(言語研究者)

「神経多様性」を妄想する《看取り医者は見た!》44

【コラム・平野国美】非常事態で輝いた自閉症スペクトラムの図書館員の話(前回コラム)から、私の妄想は膨らむのです。人類がまだ獲物を追いかけ、新天地を求めて移動していた時代。その集団の先頭を歩いたのは、神経多動性(ニューロダイバーシティ)という特性を持つ人々だったのかもしれません。彼らの飽くなき探究心と衝動性は、集団を未開の地へと導く力となりました。しかし、その旅もいつか終わりを迎えます。 肥沃な土地に恵まれ、食料を安定して得られるようになったとき、人類は定住という新しいフェーズへと突入したのです。そして、この定住化という歴史的な大転換を支えたのが、「自閉症スペクトラム(ASD)」の特性を持つ人々だったのではないでしょうか。 定住生活の象徴ともいえるのが稲作です。稲作は、広大な土地を移動し続ける狩猟採集とは全く異なる、精密な「システム」でした。いつ種をまくか? 水を引くタイミングは? 収穫の時期は? すべては綿密な計画と繰り返されるルーティンワークによって成り立っています。 ここで、ASDの特性である「ルーティンへの強いこだわり」「シングルフォーカス(一点集中)」という才能が、驚くべき力を発揮したはずです。多動性を持つ人々が絶えず新しい刺激を求める一方で、ASDの特性を持つ人々は定まった手順を厳密に守ることで心の安定を保ちます。稲作という変化の少ない重要な作業を安定して続ける上で、彼らの「変わらないこと」へのこだわりは、集団全体の基盤を築く上で不可欠な要素だったのです。 稲作に生きた「守り人」の才能 稲作は、単に作業を繰り返すだけでは達成できません。その年の気候や土壌の状態、稲の成長具合といった、目に見えない無数の情報を読み解き、次の年に生かす必要があります。ASDの特性を持つ人々の中には、人間関係の複雑な「空気」を読むのは苦手でも、特定の分野で驚異的な観察力を発揮する人が多くいます。稲の葉のわずかな色の変化、土の湿り気、病害虫の兆候…。 彼らは、そうした非言語的な情報を誰よりも正確に把握し、集団に伝える「知恵袋」であり、「データベース」だったのではないでしょうか。彼らの緻密な観察力と、それを体系的に記憶する能力がなければ、稲作という文化は次世代へと受け継がれなかったかもしれません。 彼らは、稲作というシステムを維持し、集団の知恵を次世代へと伝える「守り人」だったのです。集団の中に「神経多様性」を持つことによって、我々はここまで生き抜いてきたのです。つまり、社会や組織が生き抜くためには、この多様性を持つことが必要不可欠だったと思われるのです。(訪問診療医師)

除草中に小石跳ね 割れたガラスで幼児がけが つくば市

つくば市流星台、桜庁舎跡地で2日午後3時ごろ、市の委託業者が除草作業中、小石が跳ね、隣接の市子育て総合支援センターのガラス3枚が破損し、割れたガラスの破片で2歳の男児がけがをする事故が発生した。3日、市が発表した。 市公共資産利活用推進課によると、業者が肩掛け式草刈り機で、同支援センターから約2メートルほど離れた場所の草を刈っていたところ、小さな小石が複数個跳ね、同支援センター内の一部ガラス張りの部屋のガラス3枚が破損した。ガラスは1枚の大きさが高さ2メートル、幅80センチの強化ガラスで、3枚にひびが入り、ひびの一部が細かく粒状になって床に落ち、近くにいた市内に住む2歳男児が足の裏に長さ約1センチの切り傷を負った。男児は破損したガラスが当たったか、踏んだかしてけがをしたと見られている。 男児はこの日、母親と同支援センターを利用していた。事故後、母親が病院に連れて行き、男児はけがの治療を受けた。 市こども政策課によると、事故があった部屋は、未就学児と保護者が自由に遊べる「子育て親子のつどいの場(けやき広場)」という部屋で、事故当時、子ども18人と保護者13人が利用していた。 事故原因について市公共資産利活用推進課は、除草作業中、委託業者は飛び石防止ネットを使用することになっているにもかかわらず、事故時、業者は南側の道路側にしかネットを使用しておらず、同センターがある北側ではネットを使用していなかったためとしている。市はけがをした家族に謝罪、今後、業者が被害者への補償と施設の修繕を行うという。 ガラスが割れた箇所は現在、板が張られている。同つどいの場では、床に落ちた粒状のガラス片の清掃が実施されているほか、室内にあるマットやおもちゃなどにもガラス片が付着している恐れがあるため清掃作業を実施し、3日から5日まで利用を停止する。一方、つどいの場以外の一時預かりやラウンジ、他の部屋は引き続き利用できる。つどいの場は6日から利用を再開する。強化ガラスは納品でき次第、設置するが、特殊な製品であることから日数がかかるという。 五十嵐立青市長は「利用者の方にけがを負わせてしまい深くお詫びします。他の利用者の方にもご迷惑をお掛けしました。再びこのような事故を起こさぬよう、除草業務受託者に対して作業時の安全対策の徹底と再発防止を強く要請しました」などとするコメントを発表した。

紙を折って月に行こう《続・気軽にSOS》164

【コラム・浅井和幸】やりたいこと、やらなければいけないことがたくさんあるのに、ダラダラしてしまう。人生を変えるような大きなイベントがなぜ自分には起きないんだと思う。やる気を出すにはどうすればよいのか、自分のやる気スイッチの場所を知りたいと悩む人もいるでしょう。 そこまでやりたいことではないんでしょ?とか、やらなくていけないことをやらなくても支障がないんでしょ?という突っ込みは、今回は置いておきます。 今回は、素晴らしいこととか、大きなことを成すための動きはやる気が出てからという発想の、逆の方法を試してみてはいかがだろうかという提案です。その方法の一つは、やる気のあるなしではなく、それをやる構造を作る方法です(やらない構造を外す)。二つ目は、大きなまとまりではなく、小さく区切るという方法です。 やる気というのは、何か行動をしてからついてくるものです。大掃除をしようとしても、面倒だし時間もないし、体力も使うしと、行動しない理由が先に出て、掃除は後回しになってしまうものですが、机の上をちょっとだけ拭こうと動いたら、別の汚れも気になって広い範囲の掃除をしてしまうというようなことです。 これを一つ目で言うと、部屋のあちこちにごみ箱や掃除用具を置いておくことです。二つ目では、その掃除用具のある周りを少しだけきれいにするということです。 これだけで、普段見もしない奥の方に掃除用具を閉まっているよりも、ずっと掃除をする習慣がつきやすくなります。ギターの練習をしたい時は、いつも座っているところの脇にギターを置きすぐ触れるようにして、ちょっとだけでも触る構造をつくるというものです。 ダイエットのためにポテトチップを食べないという行動をするのであれば、食べないという行動がしやすいように目の前にポテトチップを置かないこと。手の届かない、取るのが少し面倒な棚の中にしまうだけでも、効果はあります。 ささいなことの積み重ねが大事 理論上、紙を42回折ると月に届くそうです。0.1ミリの厚さの紙を42回折ると、38万キロメートル(地球と月の間隔)を大きく超える暑さになる計算です。もちろん、そんな大きな紙もなければ、そんなにたくさん紙を折り返せないなど現実的には不可能なことらしいです。 今回伝えたいのは、ほんのささいなことの積み重ねが大きな変化になるということです。バットの素振りをする、絵を描く、小さな善行を行う、ささいな工夫をする、笑顔を向ける、知識を得る、筋トレをする、お金をためるなど、ほんのささいなことを続け積み上げることで、どれだけ大きな成果が得られるかは、はかり知れません。 宝くじに当たるなどの明確な大きな一回は感じやすいのですが、ささいなことの積み上げは感じ取りにくいので、ほとんどの人は行いません。ほとんどの人が行っていない、気づいていないからこそ、ささいな積み重ねを長年行うと大きな成果、特別な人というところに到達できる大きな要因になるのです。 不健康になる、不幸になる、嫌な人間になる、そんな積み重ねはしないようにしてくださいね。(精神保健福祉士)