里親登録1000人プロジェクト
里親のリクルートや研修、マッチング、支援などを行うフォスタリング(里親養育包括支援)機関の一つで、社会福祉法人同仁会(塩沢幸一理事長)が運営するつくば市高崎の「さくらの森乳児院」で里親リクルーターとして活動する増子洋一さん(44)は「里親登録を増やすためには、まずは制度を知ってもらうことが必要」だと話す。
増子さんら県内のフォスタリング機関が協力して始めたのが、「茨城県里親登録1000人プロジェクト」だ。地域のドラッグストアや漫画喫茶、スーパーなどの協力を得て待合スペースで説明会を開いたり、ポスターを設置したりしている。SNSでの発信も活発だ。
増子さんは、里親には4つのタイプがあると説明する。一般的に里親として最も認知されているのが、子どもが自立するまでの一定期間を一般家庭で養育する「養育里親」。原則、子どもが18歳になるまでと養育期間は最長だが、大学進学などを理由に22歳まで延長することもある。養育里親のうち5、6人の里子を受け入れるグループホームをファミリーホームという。虐待によって心身が不安定だったり、障がいがあったりする子どもを専門的な研修を受けて養育するのが「専門里親」。その他、養子縁組を希望する「養子縁組里親」、里親制度を活用して親族が養育する「親族里親」がある。
現在、何らかの理由で家庭で暮らせない子どもは全国に約4万2000人いるとされる。そのうち施設で暮らす子どもは約8割で、里親家庭で暮らすのは2割ほど。国は「家庭で育つことが望ましい」として、2016年に「新しい社会的養育ビジョン」を策定。29年度までにすべての自治体で保護を必要とする乳幼児の75%以上、学童期以降の50%以上が里親に委託されるよう求めている。
短期で受け入れる里親を増やしたい
活動の成果もあり、さまざまな形で里親を希望する人が増えつつあると増子さんは話す。「養子縁組を中心に考える人、実子がいて2人目の子は社会貢献の意味で里子を迎えようと考える人もいる。単身者でも『1人でもできませんか?』と質問する方もいる」。目立つのが30代や40代の希望者だという。「血縁にこだわらず、柔軟に多様な家族の形を考える若い世代が増えているように感じている」と語る。
現在、フォスタリング機関により、週末や月に数日間など、短期で受け入れが可能な里親の募集もしている。理由の一つが、子どもの委託を受けている里親を支えるためだ。増子さんは「虐待を受けた子どもを養育するのは大変な面がある。他の里親さんに一時的に子どもを預けて休息を取るレスパイトケアも必要」と語る。
もう一つ理由として、増え続ける子どもへの虐待予防を挙げる。各自治体では、一般家庭の子育てを支援する事業として、ショートステイを行っている。病気にかかったり育児に疲れたりして、保護者が子どもを養育できない状態にある時に、児童養護施設や里親家庭に子どもを一時的に預ける制度だ。育児の負担を和らげるだけでなく、必要な支援とつながる一歩になることも期待されている。
増子さんは「家庭の中で『虐待』になってしまう状況をどう食い止められるのか。未然に防ぐためにも里親さんに協力してもらうことが重要。地域で子どもを守るために、地域ぐるみで協力できる体制を整える必要がある」と話す。
また「年齢による体力的な心配や、実子がいることなどから長期間の受け入れは難しいという方、夫婦の時間、仕事、生活も大切にしていきたいという方が、短期間の里親を始めるケースも増えている。長期を見据えてまずは短期からという方もいる」とし、「子どもは家庭的な環境で健全に成長するというのが改正児童福祉法でも明示されており、虐待で保護される子どもがより家庭に近い環境で暮らすためには里親が必要になる。1人でも多くの方に、里親に登録してもらえたら」と語る。
続く