【コラム・小峯学】尿路結石症、中でも尿管結石症は七転八倒して嘔吐(おうと)・発汗などの自律神経症状も伴い、救急車で来院される方も珍しくありません。「あんな思いはもうしたくない」「死ぬかと思った」と多くの方がおっしゃいます。今回は上部尿路結石症(腎および尿管)の診断と治療、原因と予防法について説明します。
尿路結石症の症状と診断
腎結石・尿管結石の症状としては、突然に片側のわき腹や背中が痛くなることが多く、時に血尿を伴います。このときの激痛は『疝痛発作(せんつうほっさ)』と呼ばれ、嘔吐・発汗などを伴い、胃腸の病気と間違われることもあります。結石が膀胱(ぼうこう)近くまで、あるいは膀胱内に移動すると、トイレが近いあるいは残尿感といった膀胱炎症状が出現することもあります。
一方、無症状で、他の疾患の検査や人間ドックなどで偶然発見されることもあります。症状がない場合でも、結石が尿の流れを止めてしまって、腎臓が腫れる『水腎症』とよばれる状態になると、腎臓機能低下を引き起こすため治療が必要となります。
医療機関での検査は、主に尿検査や超音波検査・レントゲン検査が行われます。CTスキャンが必要になることもあります。
上部尿路結石症の治療
結石が薬物治療によって溶解することは特殊な場合に限られ、非現実的です。おおむね8ミリ程度までは尿と一緒に自然に体外に排出されることが期待できるため、水分摂取を心掛け、痛みを伴う場合には鎮痛剤を服用することになります。自然排石しない場合や10ミリ超の結石の場合には手術的治療が推奨されます。
38度以上の発熱を伴う場合には、重篤な細菌感染症(閉塞性腎盂腎炎→敗血症)を併発している危険性があり、この場合には緊急処置や集中治療が必要になります。手術的治療としては、開腹手術・腹腔(ふくくう)鏡下手術はほとんど適応とならず、以下にご紹介するESWL・TUL・PNL(併用含む)が診療ガイドライン上、推奨されています。
ESWL(体外衝撃波結石破砕術)
体外から衝撃波を結石に当て結石を破砕する治療です。鎮痛剤投与による治療が可能で1~2日の短期入院治療で行えるメリットがあります。1センチ程度の腎および上部尿管の結石が適応となりますが、2~3回の治療を要することもあります。当院にはESWL機器はなく、ご希望される方には対応可能な施設へご紹介しております。
TUL(経尿道的腎尿管砕石術)
細径の内視鏡を尿管内に入れ、結石に直接ホルミウムレーザーなどを当て細かく砕石、可能な限り砕石片も回収する治療です。麻酔および数日の入院が必要となりますが、確実性の高い治療となります。治療後には尿管ステントという細いカテーテルを留置して、1~2週後に外来で抜去となります。治療機器および高度の技術が必要で、数年前までは他の施設へ紹介しておりましたが、現在では当院でもTULが可能となり、多くの施設よりご紹介いただいております。
PNL(経皮的腎砕石術)
背中から腎臓に内視鏡のルートを作成して、直接腎臓の結石を砕石して回収する方法です。他の治療法では時間および期間を要する大きな結石も短時間で治療可能ですが、出血などのリスクがあります。腎臓へ直達できる特殊な内視鏡機器が必要であり、整備され次第、速やかに導入したいと考えております(時期は未定)。
上部尿路結石症の疫学と予防
誰しも結石の痛みは経験したくないものですが、上部尿路結石症の患者さんは急増しています。いわゆる生活習慣病の増加と比例しています。肥満の方に多い傾向であることもわかっています。40年前の3倍となっており、男性は7人に1人、女性は15人に1人の割合で、生涯に一度は尿路結石症に罹患するといわれています。
また、再発率の高い疾患でもあります。尿のミネラル濃度が濃くなると結石ができやすくなるので、水分摂取を心掛けて十分な尿量を確保するとよいでしょう。しかし、ビールなどのアルコール類、糖分入りのソフトドリンクは結石のもとになる成分が多めに含まれており、逆効果になってしまいます。
最も多い尿路結石はシュウ酸カルシウム結石であり、尿中のシュウ酸排せつを少なくすることが結石予防において重要です。シュウ酸はカルシウムと結合しやすいため、不足しがちなカルシウムを意識して摂取し、腸管からのシュウ酸吸収を抑制すること、また脂肪摂取を少なくすることもシュウ酸吸収の抑制につながり、結石の予防となります。
次に多い結石が尿酸結石であり、尿酸値が高い「痛風(高尿酸血症)」の方にできやすい結石です。プリン体を多く含む食品を過剰に摂取すると尿酸値が高くなり、尿中の尿酸濃度も濃くなるため結石ができやすくなります。これらの食品摂取を控えることが高尿酸血症の予防、ひいては尿酸結石の予防につながりますので心がけてみてください。(筑波メディカルセンター病院 泌尿器科 診療科長)