10月20日告示、27日投開票のつくば市長選・市議選で、市は移動困難な市全域の高齢者や障害者を対象に、期日前投票をするためのタクシー券を配布し運賃を全額助成する方針だ。配布対象は、同市の助成制度に申請しタクシー運賃助成を受けている高齢者や障害者など約4000人。市は6月6日開会の市議会6月定例会議に同事業の補正予算案約2000万円を提案する。
今年3月議会で市は、ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで行くオンデマンド型移動期日前投票を市北部の一部地区で実施するとし、予算を計上した。これに対し市議会から投票の公平性を懸念する意見が出され、市は市全域を対象にした施策を実施するとしていた。
期日前投票のタクシー券助成は県内で大子町、常陸大宮市などが実施している。ただし寝たきりで期日前投票ができない高齢者などは、郵便投票の利用が必要になる。
タクシー運賃助成は、自宅から各期日前投票所までの往復運賃と、投票時の待ち時間の運賃を全額助成する。1人当たり片道3~5キロ程度、運賃5000円程度を想定している。
すでにタクシー運賃の助成を受けている高齢者や障害者は申請不要で、期日前投票が始まる告示日翌日までに、市から期日前投票のタクシー券が自宅に届く。現在、助成を受けていないが、移動困難なためタクシー券が必要な高齢者や障害者には、6月定例会議で議決後、随時、市選挙管理委員会で申請を受け付ける。利用できるタクシーは市内の会社とする方針。
市議会からの懸念受け
同市は22年4月、今年の市長選・市議選でインターネット投票を実施することを看板施策に掲げ、国からスーパーシティ国家戦略特区の認定を受けた(22年8月3日付)。しかしネット投票に対して、なりすましや強要をどう防ぐかなどの課題が指摘される中、今秋の選挙では実施しない。代わって市は、ネット投票導入につながるステップだと位置付け、投票箱を積んだワゴン車が高齢者や障害者などの自宅前まで出向いて、立会人を付け、車内で紙で投票してもらうオンデマンド型移動期日前投票を実施する方向で、今年1月、高齢化率が高い市北部の筑波、臼井地区で模擬投票の実証実験を実施した(1月26日付)。
実証実験を受けて市は、移動期日前投票を市北部で実施するとして、3月議会で約1300万円の当初予算を計上した(2月1日付)。
これに対し市議会から「タクシー券発行の方が投票の権利や公正さ、利用しやすさから現実的」(昨年9月議会、川村直子市議)、「(筑波、臼井地区の)2カ所の地区だけで行うのは、各地区から候補者が出る市議選では公平性、公正性という選挙の大原則が保たれるのか」(今年3月議会、飯岡宏之市議)などの質問が出ていた。今年3月議会で五十嵐立青市長は飯岡市議に対し「実証実験の結果を踏まえて選管で十分協議していただく。市内全域で、移動が困難な高齢者、障害者が投票しやすい施策を検討したい」などと答弁していた。
その後、4月9日と24日に開かれた市選挙管理委員会(南文男委員長)では、移動期日前投票の実施の是非について、一部地域で実施することは公平性の観点から時期尚早だとする意見が出ている。タクシー運賃助成については5月7日の市選管で「市全域で実施するなら別段問題ない」とする見解が出ていた。
オンデマンド移動期日前投票実施の是非については6月3日の市選管で引き続き協議する。20日時点で五十嵐市長は、NEWSつくばの取材に対し「タクシー券とオンデマンドをセットで考えている。市選管に協議していただいている」としている。(鈴木宏子)