マレーシアの大臣がつくば本社訪問
筑波大発のスタートアップ企業「サイバーダイン」(本社つくば市学園南、社長・山海嘉之筑波大教授)が開発する医療用の装着型ロボット「HAL(ハル)」が、マレーシアに建設中の東南アジア最大の医療複合施設「国立神経ロボット・サイバニクスセンター」で、患者の機能改善治療に使用されることになった。23日、同国のスティーブ・シム・チー・キオン人的資源庁大臣がつくば市のサイバーダイン本社を訪れ、山海社長に発注リストを手渡した。
医療用HALは、交通事故や脳卒中、難病などにより自力で動かすことが難しくなった手足や腰などに、脳からの信号を伝え、筋肉や関節などの動きを補助して、脳や神経の働きを活性化し歩行改善などを促す最先端技術を使った装置。すでにドイツなど世界20カ国で機能改善治療に使用され、日本でもリハビリに活用されている。
マレーシアではすでに12の医療施設で112台のHALが使用されている。新センターはHALを使用する同国13カ所目の施設として今年11月に完成する。下肢、関節、腰用の3タイプ計65台がレンタルで提供され、同時期に700人を治療する予定だ。HALを使用する医療機関としては世界最大になる。
キオン大臣は「(すでにHALで治療を行っている)マラッカにある施設を訪れ、技術がどれだけ人を助けるかを目の当たりにした。患者の約半数が実際に歩けるようになった。サイバニクスセンターは今年11月から稼働する。今後もっと施設を増やし、東海岸に最低でも二つの施設をつくりたい」などと話した。
山海社長は「次の社会は、人とサイバーフィジルカル空間(インターネットやネットワーク上の空間と実世界)が融合する社会になる。新興国が積極的に新しい技術を取り入れ、社会がどんどん変わっていく『リープフロッグ』という現象が起こっており、サイバニクスセンターはひじょうに重要なセンターとなる。治療だけでなく人材育成も一緒にやっていきたい」などと語った。
サイバニクスセンターは、マレーシア政府系の従業員社会保障機構が運営する公的病院で、22年6月に着工した。面積は37ヘクタールで、医療費は無料。センターの名称になる「サイバニクス」は、山海社長が提唱した新しい学術領域だ。(鈴木宏子)