火曜日, 10月 6, 2026
ホーム土浦実際にどう対応? 「合理的配慮」義務化スタート 土浦

実際にどう対応? 「合理的配慮」義務化スタート 土浦

情報不足に戸惑いも

改正障害者差別解消法の施行に伴い、段差があればスロープをつけるなど障害の特性に応じた配慮をする「合理的配慮」が1日から民間事業者にも義務化された。実際にどう対応すべきなのか、現場では情報不足からくる戸惑いの声も聞こえてくる。実際の現場で事業者や当事者はどのように課題に向き合っているのか、土浦で話を聞いた。

一部でも助成があれば

「絶対にやりたくないのは入店拒否」だと話すのは、昨年、土浦市川口にオープンした古書店「生存書房」の店主・藤田康元さん(57)だ。

同店は、歩道に面した入り口に15センチほどの段差が2段あり車椅子の人が一人で入店するのは難しい。大幅なバリアフリー改修は費用面から現実的ではない。そこで藤田さんが最初にとった「配慮」が、入り口前に「ハンドベル」を置くことだ。玄関にチャイムをつけても歩道からは手が届かない。車椅子でも店主を呼び出せると考えた。

手に取りやすい場所に置かれた古書店のハンドベル

「入り口にスロープがないことでバリアを感じる人はいるはず。入店を諦めさせているかもしれないと思った。諦めないで店主を呼んで欲しいという意味を込めた」と話す。後に折りたたみ式の簡易スロープを購入し、必要な時だけ設置できるようにした。費用は約4万円。ネットで購入したものだ。「これが個人店でできる範囲。出費は厳しい」とこぼす。「大規模な改修費用とまでは言わないが、せめて一部でも助成があれば」と希望を話す。

障害者以外のためにもなる

土浦市乙戸で料理店「ママのごはん」を営む高橋理恵さん(62)は、2017年のオープン時から入り口にスロープを設置しトイレに手すりをつけてきた。障害のある夫の助言からだった。高橋さんは、スロープや手すりのおかげで「車椅子のお客さんが増えた」と言い、喜んでくれるのは障害者だけではないとも話す。

「ママのごはん」入り口に設置されたスロープ=同市乙戸

「つえをついていたり歩幅が小さかったりする高齢者や、ベビーカーで来るお客さんも『入りやすい』と言ってくれる」。何より自分も歩きやすい。「大きな荷物を抱えて段差を上がるのは大変ですから」。

様々な人が出入りする中で必要な「配慮」が身についた。車椅子に限らず、ベビーカーに子どもを乗せたままテーブル席に着きたい人にも、さっと椅子をどかして対応する。

大切なことは、当事者との接点を持つことだと指摘する。「私は身内に障害があることで気づいたことはたくさんある。うちの店には車椅子のお客さんが来るのを他のお客さんもわかってくれているから来店時に手伝ってくれる」と言う。

「ママのごはん」を営む高橋理恵さん

一方で「個人の飲食店だと対応が難しい事情もわかる」と、合理的配慮の実践を躊躇する個人店にも思いを寄せる。実際に家族で外出して入店できないこともあった。「行く前に『車椅子でも入れます』と聞いても混んでいて入れないこともある。車椅子や障害のある人が来ることが前提になっていないお店は多い。私も家族に障害があるなど身近でなければ、必要な配慮への気づきはなかったかもしれない」

4月からの義務化については「(行政などから)手紙での通知などはなく、商工会に入っているわけではないので情報を得る機会が限られていた」といい、周知の不足を指摘する。実際に街で話を聞くと「義務化は知らなかった」と言う人は少なくない。

特性の理解を

同市で障害者福祉の課題に取り組む目黒英一市議(54)は、合理的配慮で大事なことは「特性を理解すること」だと言い、そのためにも「当事者の生の声」に触れることが欠かせないと話す。目黒市議は知的障害を伴う自閉症のある子の父としても活動している。

「知的障害のある方は、性格と同様に個々の特性がある。大きい音が苦手だったり、飛び跳ねたり声を出してしまったりすることもある」。周囲が障害の特性への理解があれば、大きな音が苦手な人と大声を出しがちな人を隣り合わないよう配慮することで、互いに心地よく過ごすことができると指摘する。

「子どものうちから合理的配慮を学ぶべき。(今の社会は)障害のある人が世の中に適応していかなければいけない状況にあるが、障害のある人の目線で物事を考えられれば」とし、「当事者との接点を持つことで『スロープつけなきゃだめだよな』という気持ちになる。合理的配慮は、スロープをつけておしまいではない。大切なのはそこから先。どうすれば車椅子でも通りやすくなるか、接客にはどう気を遣えばいいか。相手のことを考えられることが大事」だと語る。

当事者の声を聞いてほしい

「障害の当事者は、こんな時はどうすればいいのかというアイディアを十分持っているので、まずは当事者に聞いて欲しい」と話すのは、当事者として障害の理解啓発活動をする「茨城県に障害のある人の権利条例をつくる会」共同代表の生井祐介さん(46)だ。同会は、2015年に施行された障害者への差別を禁止する県障害者権利条例を作るために発足した。生井さんは合理的配慮についてこう思いを話す。

「当事者の声を聞いてほしい」と語る、生井祐介さん(中央)

「『過重な負担』というのがあるが、初めから断るのではなくその場で当事者に相談して欲しい。例えば商店の入り口に段差があって車椅子で店内に入れなければ、当事者の希望を聞いて商品を入り口まで持ってきて選んでもらうこともできるし、車椅子を何人かで持ち上げてあげることもできるかもしれない。私たちはそのやり方を説明できる」

「『うちは無理なんです』と断らずに相談してほしい。解決策が見つかれば僕たちも行けるお店が増える。よりいい関係が作れるはず」と語る。

店舗入り口に置かれる取り外し可能な簡易スロープ

7市村に助成制度

県内には現在、合理的配慮への助成制度がある自治体が7市村(つくば、水戸、ひたちなか、取手、つくばみらい、那珂市、東海村)ある。生井さんは「制度を使えばスロープの設置などもしやすくなる」とし、「茨城には『障害者権利条例』があり、全ての差別を禁止すると言っていることも忘れないでほしい」と思いを述べる。

合理的配慮の義務化に関して土浦市は、周辺自治体などで実施されている助成制度については「制度を実施する予定はない」とする。また、合理的配慮は「障害者との建設的対話を通じて事業者が提供できることを考え、実施に伴う負担が過重であれば、過重でない代替方法を対話を通じて見つけていくことが法の趣旨」であるとし、「合理的配慮の具体的な取り組み例を紹介していくことはできる」と述べ、県障害者差別相談室や市障害福祉課への問い合わせを求めている。周知活動については今後も継続していくとしている。(柴田大輔)

【メモ】合理的配慮とは、段差があればスロープをつけたり、声や音が聞き取りにくい人に対して手話や筆談ボードを用意するなど障害の特性に応じた配慮をすること。時間を調整するなどルール・慣行の柔軟な変更も合理的配慮に当たる。障害がある人もない人も平等に社会に参加できることを目的としている。

障害を理由に来店を拒否したり、サービスを提供する時間や場所を限定するなど条件をつけることは「差別」にあたり、「障害があるからと特別扱いはできない」「前例がない」と、求められた配慮を無碍(むげ)に拒むことは認められていない。一方で、事業者にとって過度の費用負担や物理的に実現不可能な場合など、「提供に伴う負担が過重でない」ことが提供範囲とされている。

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