水曜日, 11月 27, 2024
ホームコラムバイデン氏は勝てるか?米大統領選(4)《雑記帳》58

バイデン氏は勝てるか?米大統領選(4)《雑記帳》58

【コラム・瀧田薫】2024年11月の米大統領選挙は、前回に続いて、バイデンとトランプ両氏の対決となった。選挙までまだ半年余りあるが、現時点での各種世論調査結果や投票行動分析の専門家の見方では、トランプ氏の優勢を伝えるものが多数を占めており、選挙はトランプ勝利で決まりといった気の早いご託宣を下す向きもある。

前々回の大統領選(トランプ対ヒラリー・クリントン)では、事前調査の数字はクリントン氏の圧倒的優勢を示していたのだが、結果は「まさかのトランプ」勝利であった。この番狂わせで、選挙予測の専門家や世論調査そのものへの信頼感は大きく損なわれた。

近年、若者を中心に無党派層が増えており、これが世論調査の精度を狂わせる最大の要因となっている。無党派層の動向は極めて流動的で、極端な場合、1カ月いや1週間で潮目が変わることもあり、定点観測たる世論調査の網ではすくい上げにくいのである。

今回の大統領選でも、民主、共和両党の支持者に対するグリップ力の衰えとも相まって、無党派層が勝敗を分ける鍵になると見られている。

A・リクトマン教授の選挙予測理論

世論調査の信頼度が落ち込むと、それに代わる方法が試される。アメリカン大の歴史学者、アラン・リクトマン教授が考案した選挙結果予測理論は、有権者の意識ではなく現職大統領とその政権与党の強さ(支持率)と政策実績を分析対象とする。この理論によって、彼は1984年以降の10回の大統領選のうち9回で勝者を正しく予測してきた(毎日新聞「驚異の的中率を誇る教授に聞く」2023年12月23日付)。

この理論の具体的な方法は、「ホワイトハウスへの鍵」と呼ぶ13の指標を取り出し、その指標ごとに現職大統領と政権与党を査定し、成果が上がったかあるいはライバルに優っている指標については〇を、成果が上がっていないかライバルよりも劣っている指標については✕をつける。

最後に〇の数を数え、13指標中8以上で〇がつけば、現職の再選もしくは政権与党の指名候補者が大統領選に勝利すると判定される。なお、ラクトマン氏は今回の選挙の分析をすでに実施している。

ラクトマン理論が成果をあげた理由は、13の指標を選び出す困難かつ長期にわたる試行錯誤に彼が耐えたこと、さらに13の指標が精妙なバランスを保ってお互いを支え合うように工夫し、それに成功したことにあると思う。ただし、この理論にも欠点がないわけではない。理論に従って予測がされても、その賞味期限は意外に短いということだ。

バイデン氏にまだチャンスあり

そう言っては身も蓋(ふた)もないが、昨年12月時点でのラックマン教授の判定はすでに期限が切れている。今後、適当な時期に彼が再判定を下すのを待つか、13の指標に沿って自分自身で判定を下すこともできる。筆者の最近の判定では、バイデン氏にまだチャンスはあると出た。具体的には、残り半年、経済面(インフレへの対処、財政赤字への対処)で実績を上げることが重要な条件となる。(茨城キリスト教大学名誉教授)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

自動車盗難被害 つくば市が全国ワースト1 住宅駐車場が5割 

自動車の盗難被害が多発する茨城県内で、県南地域での被害が顕著だ。特につくば市は、10月末時点で年間75件を数え、全国市区町村別でワースト1位となっている。県内で2番目に多いのは38件の土浦市で、両市の合計は2024年の県内自動車盗難件数461件の約4分の1を占める。県警は、市民の防犯意識を高めようと啓発活動に力を入れているが、大きな変化に結びついていないのが現状だ。 「11月9日夕方から11月10日の朝方までの間に、茨城県つくば市筑穂で盗難に遭いました」ー。 10日午後5時、トヨタ・ハイエースの写真と共にX(旧ツイッター)に情報提供を求めるメッセージが流れた。投稿したのは北海道空知郡奈井江町の土木関連会社、剛健工業(浜島剛社長)のアカウントだ。北海道からつくば市内の建設現場に出張中の同社社員が車両盗難の被害に遭った。同社の柴田大輔さん(40)が異変に気づいたのは10日早朝。滞在する市内のアパートから外を見ると、目の前の駐車場にあるはずの車がない。「まさかと思った」と振り返る。すぐに警察へ届けるも、「見つかるか分からない」と言われたと話す。 柴田さんら社員4人がつくばに来たのは今月6日。市内の工場現場で、来年4月末までの予定でフェンスの基礎や縁石ブロックの設置工事にあたるためだった。陸路とフェリーを利用し、2台の車で茨城に来た。被害にあった日、前日は休みで午後9時ごろには就寝し、10日は朝6時に起床した。車内にはドライバーやつり金具、グラインダーなど40万円相当の工具が積まれていた。盗難後は急場をしのぐため必要最低限の工具を買いそろえ、車両は再度、北海道から呼び寄せた。「会社でも盗難は初めて。全く気づかなかった。盗られたのはしようがない」と気持ちを切り替える。 夜間から早朝にかけ連日 県内の犯罪情報を知らせる県警による防犯アプリ「いばらきポリス」によると、11月だけでもつくば市内では他に▽2~3日にかけて妻木付近▽6~7日に陣場付近▽7~8日に小野崎付近▽9~10日に蓮沼付近▽11~12日に学園南付近▽12~13日の間に二の宮付近と、連日、車両盗難が起きている。土浦市内でも今月、都和、神立、真鍋などで発生している。被害に遭うのは夜間から早朝にかけて。乗用車はトヨタのプリウス、ランドクルーザーなどが、貨物車ではトヨタ・ハイエース、いすゞ・エルフなどが被害の上位を占めている。その他にアルファードやレクサスなどの高級車の被害も目立つ。県内では貨物車の被害も多く、盗難全体の約半数が住宅の駐車場などで起きている。 茨城県は、人口10万人あたりの車両盗難件数が、2023年まで17年連続で全国1位を記録している。首都圏に近く港湾へのアクセスが良いことや、広い土地を比較的安く使用できることから盗難車を解体する「ヤード」がつくりやすいことなどが背景にあるという。盗難車は解体後に部品として国内外で販売されていく。つくばや土浦で特に被害が多い理由について県警の担当課は「被害が増えている県南や県西地域は人口が多く、相対的に車の保有台数が多い」ことだとし、犯罪グループの活動が広域化、組織化していることが検挙を難しくしていると話す。 2022年2月に福島県内で工事用車両を盗んだとして逮捕されたつくば市の自動車整備工の男ら2人は、関東、東北、東海で計280台を盗んだグループのメンバーとみられる。他に23人が同グループメンバーとして逮捕されている。また同年8月に高級車「レクサスLX」を盗品と知りながら取引し、保管した疑いで逮捕された筑西市の自動車整備会社経営の男ら5人は、大阪や愛知で盗まれた高級車約200台を引き取り輸出目的で解体した。被害総額は10億円超に上るとされる。今月7日には潮来市の男ら4人が関東5県で車両110台超を盗み、被害は約1億円に及んでいる。これらの事件は日本人、外国人を含む犯罪グループによるもので、犯行が複数の都府県に及ぶため合同捜査体制が組まれている。 防犯意識向上を 県警は「盗難場所として最も多いのは、住宅等の駐車場で全体の約5割。その他、会社や事務所、月極駐車場、工事現場や資材置き場などが続いている」とし、「犯人は物理的に時間がかかることを嫌う。バー式ハンドルロックや鍵でタイヤを固定するタイヤロックなどが有効。防犯カメラやセンターライトの設置も推奨している。複数組み合わせることでより効果的になる」と、二重、三重の防犯対策を呼び掛け、「個人では費用的に難しいこともあると思うが、防犯意識の向上につなげてほしい」と語る。

通り雨《短いおはなし》33

【ノベル・伊東葎花】 突然雨が降り出したので、夫の傘を持って家を出た。駅から家までは5分ほどの距離だけど、冷たい雨だ。風邪を引いたらかわいそう。 夕暮れの駅は、たくさんの人であふれていた。夫は背が高いので、すぐに見つけた。声をかけようと近づくと、となりに髪の長い女がいた。親し気に話している。偶然会った会社の同僚という雰囲気ではない。ひとつの傘にふたりで入り、家と逆方向に歩き出した。ぬれないように寄り添って、まるで恋人同士のようだった。 「どういうこと?」 信じられない出来事に声も出せず、混乱したまま家に帰った。雨はいつの間にか止んでいて、傘を畳んでドアを開けた。そこには、夫がいた。タオルで濡れた頭をゴシゴシ拭いている夫がいた。 「電車降りたら雨だったから濡れちゃったよ。あれ? もしかして迎えに来てくれたの? 行き違いだったのかな」 ホッとした。さっき女と歩いて行ったのは、よく似た他人だったのだ。同じような背格好で、同じようなスーツを着ていた人を、夫と間違えたのだ。 「すぐにご飯にするね」 私は自分の勘違いがおかしくて、ひとりで笑った。 しかし、その日を境に、得体(えたい)のしれない違和感が私を襲った。夫は確かに今まで通りの夫なのに、なぜだか妙な違和感がある。ちょっとした仕草や言い回しが、別人のように思えるときがある。 「あれ、この人、こんな笑い方したかな?」といった、ささいなことだけど、それは私の中でどんどん大きくなっていった。 数週間後、再び雨が降った。私は夫の傘を持ち、駅まで迎えに行った。改札から出てくる夫を見つけて近づくと、その横には女がいた。しかも前に見かけた女とは別の、若い女だ。ふたりは楽しそうに笑いながら、私の前を通り過ぎた。 「あなた!」 思わず声をかけると、ふたり同時に振り向いた。「知り合い?」女が言うと、「いや、知らない」と、夫は、怪訝(けげん)な顔で私を見た。 夫だ。似ている人などではない。確かに夫だ。服装も表情も、髪の分け目もホクロの位置も、何もかも同じだ。それなのに、まるで初めて会う人のように首をかしげ、背を向けた。 「待って」 追いかけようとしたとき、後ろから肩を叩かれた。 「迎えに来てくれたんだ。助かったよ」 そこには、笑顔の夫が立っていた。 今、目の前にいるのは、確かに夫だ。ホッとしているはずなのに、なぜだろう。「この人誰?」と思ってしまう。得体のしれない違和感が、スコールみたいに私を襲う。さっきの人は誰? そしてこの人は誰? 駅を出ると、雨は止んでいた。 「雨やんじゃったな。久々に、相合い傘でもしたかったな」 夫が子どもみたいな顔で言った。あれ? こんなことを言う人だったかしら。そう思いながらも私は、「そうね」と答えた。そして拭いきれない違和感を振り払うように、夫の手を握った。 (作家)

お薬手帳を入れておくケース《くずかごの唄》144

【コラム・奥井登美子】私たち薬剤師は、薬を調剤したあと、その情報をお薬手帳に記入しなければならない。 「すみません、お薬手帳を出していただけますか、記入しますので…」 「お薬手帳あるはず、だけれど、どこへ入れたかしら…」 かばんの中に、いろいろな書類や印刷物が入っていて、大事な書類、コンビニでもらった領収書、どうでもいい書類の分類ができていない。探すのに時間がかかるご老人が多い。 保険証、診察券、お薬手帳、個人の医療にとって大事な書類。かばんの中に入れておいても、急に身体が痛くなったり、転んだり、交通事故にあったりしたとき、すぐに取り出せるように、個性的なケースに入れておくべきだと、私は考えている。 メーカーで作っている診察券などを入れるビニールケース、紙のケース、革のケース、いろいろあるが、皮革のケースは高価で立派。しかも重量があって、重たくて、お年寄りには向かない。布のケースを探してみたけれど、売っていない。 着物の端布を貼ってみた 仕方がないので、ビニールケースに布を貼り付けてみることにした。どんな布にしようかなあ。亡くなった姑(しゅうとめ)の着物の端布。姑は生きているとき、3人の子育て、薬局経営、自然保護運動で超忙しい私の健康を心配してくれていた。 「天国にいるおかあさん、私の健康を守ってくださいね…」 姑に祈りながら、端切れの布をお薬手帳ケースに貼り付けてみた。和服の布の色といい模様といい、その個性はかばんの中の他の資料と全然違うので、すぐ取り出せる。 石川県で大地震。関東地方も大震災から100年。関東地方で、いつ大震災が起こってもおかしくない。災害時に備えて、緊急避難のときも、心臓の薬、血圧の薬、胃の薬など、毎日飲まなければならない薬の情報は、命を守るために必要不可欠だ。 私たちはいま、緊急避難時に備えて、自分の医療情報をいつでも取り出せるようにしたいと思う。(随筆家、薬剤師)

特定外来生物セアカゴケグモ 今年に入り各地で10件目撃 つくば市

毒をもち、かまれると重症化することがあるセアカゴケグモが、今年に入りつくば市内の各地で目撃されている。市環境保全課によると、11月14日に同市島名、香取台吉祥公園で20匹以上が確認された。定着していたとみられる。今年7月から11月、昨年の5倍にあたる計10件の目撃情報がすでに市に寄せられている。10件についてはいずれも発見者や市がそれぞれ成虫や卵を駆除した。 セアカゴケグモは駆除が求められる特定外来生物に指定されている。環境省や同市のホームページによると、オーストラリア原産と考えられ、建築資材などに紛れ込んで船で運ばれ侵入し、貨物と一緒に各地に運ばれたとみられる。体は光沢のある黒色で、腹部の背面に赤い模様がある。メスが毒をもち、体長0.7~1センチほど。生息場所は日当たりのいい暖かい場所で、プランターの底やエアコン室外機の裏など地面のくぼみや隙間などに巣を作る。暑い時期に活動的になり6~10月ごろ繁殖する。攻撃性はないが、触るとかまれることがあり、痛みやかゆみのほか、脱力、頭痛、筋肉痛、不眠などの全身症状が現れ、重症化することもある。環境省や市は、かまれた時は速やかに医療機関に相談するよう注意喚起している。 同課によると、市内で初めて目撃されたのは昨年5月で、昨年は2件の目撃情報があった。今年に入ってからの10件の目撃場所は、並木3丁目と4丁目、みどりの東、森の里(疑い)、香取台、大久保、松代と広範囲に及び、個人宅や事業所、公園などという。市は注意を呼び掛けている。 目撃場所の個人情報を小中学校の保護者に漏えい つくば市は25日、セアカゴケグモが今年目撃された市内の5カ所に関し、小中学校3校が、目撃場所の住所の地番を、学校用配信アプリを使って保護者計1253人に配信してしまったと発表した。住所の地番から個人宅や事業所が特定でき、個人情報に当たる。 市によると9月19日、市環境保全課から市教育局学務課に、セアカゴケグモが目撃されていることから注意を喚起する情報が提供された。情報には、目撃された5カ所の住所の地番が記載されていた。学務課は、市内の幼稚園、小中学校、義務教育学校に市環境保全課からの注意喚起情報を通知。情報を受け取った各校のうち、9月20日に小学校1校が、同24日に中学校1校が、目撃された5カ所の住所の地番を含む情報を添付し、学校用配信アプリで保護者に配信した。 さらに11月14日、市環境保全課が市内の公園でセアカゴケグモが定着しているのを確認したことから、再度、学務課に5カ所の住所の地番が記載された同じ内容の注意喚起情報を提供。別の小学校1校が、5カ所の住所の地番が記載された情報を添付して学校用配信アプリで保護者に通知した。 同14日、自宅の住所の地番が記載された一人から、学校と市に対し、個人情報が掲載されている旨の問い合わせがあり、学校は同日夜、個人情報を削除して再度配信した。 学務課がさらに市内の幼稚園、小中学校、義務教育学校に個人情報の漏えいについて調査したところ、9月20日と24日にも2校で、目撃場所の個人情報を含む注意喚起情報の通知を配信してしまったことが分かったという。 市環境保全課は、住所の地番が漏えいした5人に対し25日までに電話で謝罪。さらに直接出向いて謝罪し今後の対応などを説明するとしている。再発防止策として市は、個人情報の取り扱いや外部への情報提供方法について見直すとしている。