【ガチ中華で活用可能性】上
生態系に悪影響を及ぼすことから特定外来生物に指定されている霞ケ浦のアメリカナマズを使った新メニューの提供が17日から、つくば市天久保の中国四川料理店「麻辣(マーラー)十食」で始まった。アメリカナマズを食べて活用できないかと、市民団体「桜川ナマズプロジェクト」が、釣り上げた魚を同店に持ち込んだのがきっかけとなった。
新メニューは「ラーズ―ナマズ(麻子鯰魚)」。ナマズの白身を油で揚げ、唐辛子と花椒(ホアジャオ)で作った四川料理特有の麻辣と炒めた料理だ。霞ケ浦の養殖業者が、天然のアメリカナマズの稚魚を捕獲し養殖したものを使う。中国四川省は内陸部であることから香辛料を使って川魚を調理する食文化を持ち、ナマズも人気の魚の一つ。四川料理に精通する料理長の羅彬(ラヒン)さんが腕を振るう。
料理の見た目は、ぶつ切りにした大量の唐辛子のインパクトが強いが、唐辛子は香りづけで、さほど辛くはない。この料理を知らない日本人が唐辛子を食べてしまうことがあるが、唐辛子は食べず、揚げたナマズの身を食べる。ナマズの身はふんわりとして旨味があり、花椒がさわやかに香る。四川ではナマズを使ったラーズーナマズは人気料理の一つだそうで、同店によると「メニューを知る人はすぐ注文する」。
水槽に入れナマズづくしコースも
仕入れるナマズは1匹が体長約50~60センチ、重さ約2キロほど。同店では今後、毎月5~10キロ程度を定期的に仕入れる予定だ。現在はさばいてあるものを仕入れているが、要望があれば、生きたナマズを仕入れて店頭の水槽に入れておき、まるごと1匹を食べる直前にさばいて、ラーズーナマズのほか、スープ、蒸し料理など、様々な料理で振る舞うナマズづくしコースも提供したい意向だ。新メニュー提供初日の17日には2件の注文があり、「ナマズのふわっとした食感にびっくり。おいしい」という感想が聞かれた。
真空パックの調理食品も開発中
ラーズーナマズを真空パックし、家庭でも味わえるようにした調理済み食品「つくばの辣子鯰(ラーズーナマズ)」も開発中だ。中華料理は通常温かい状態で出来立てを食べるものが多いが、ラーズ―は風味が強く冷たいまま食べてもおいしいことから、中国ではあえて冷たいまま食べる風習もある。真空パックのラーズ―ナマズは常温でも、温めても食べてもおいしいそうで、つくばの新しい名物として、同店や市内の物産店などでの販売を目指している。
コイ、ハクレンも中華の技で
同店は、中国の伝統料理、麻辣烤魚(マーラーカオユイ)が看板人気メニューの一つ。焼いたコイと野菜を麻辣で煮込んだ火鍋のようなメニューで、これには霞ケ浦で養殖したコイを使用し、淡水魚の魅力を中華の技術で引き出していた。
同店でメニュー開発を手がける孫麗さんは四川省の出身。幼い頃は四川の山や、自然に囲まれて暮らし、季節の野菜や魚を調理して食べる豊かな食生活を経験した。孫さんは「霞ケ浦にはコイやナマズだけでなく、ハクレンやシラウオなどおいしい魚がたくさんいる。特にナマズは在来種を食い荒らして生態系のバランスが崩れていると聞いている」と話し、ナマズを積極的に活用しながら、霞ケ浦の環境問題について考えていけたらという。「この土地のすばらしいものをぜひたくさんの方々に知ってもらい、本物の豊かさをつくりたい。ハクレンの活用も考えている」と新メニュー開発に意欲を見せる。(田中めぐみ)
◆新メニュー、ラーズーナマズは1皿2~3人前で価格は2680円(消費税込)。
続く