木曜日, 5月 14, 2026
ホームコラム県に請求書送付を つくば市の高校通学費補助《吾妻カガミ》177

県に請求書送付を つくば市の高校通学費補助《吾妻カガミ》177

【コラム・坂本栄】つくば市は洞峰公園の維持管理を県から押し付けられましたが、県立高校問題では県の施策にはまりました。本来は県が負担してしかるべき費用を市の予算案に盛り込んだからです。この半年の間に、市民は知事の巧みさと市長の拙さを相次いで目撃したことになります。

遠距離通学に年間3万円補助

つくば市は2月1日に発表した来年度予算案に、土浦市、牛久市、常総市、下妻市など、遠距離の高校に通う生徒にバスや鉄道の通学費用を補助する予算を挿入しました。1億6152万円を計上し、通学に年間10万円以上かかる生徒には3万円を補助するという内容です。

この善政について、市は「急増する市内在住の高校通学者数と市内立地の高校定員数との不均衡により生じる遠距離通学負担に対して、経済的負担の軽減を図る」と説明しています。簡単に言うと、市内の県立高不足のために市外の高校に通学しなければならない学生の持ち出しを少し軽くする施策です。

つくば市は、学生数と定員数の不均衡を解消する策として、市内に県立高を新設するよう県に要求してきました。しかし県は、県全体の少子化・人口減を理由に、県全体の傾向とは逆に人口が増えているつくば市での県立高新設にも消極的です。

そして、(A)市内にある既存県立高の学級増(高校経営予算の節約)、(B)近隣市の県立高への通学奨励(広域化による問題解決)―の2代替策で、高校新設を見送ろうとしています。

市長は新設実現を諦めたわけではないと言っていますが、遠距離通学補助によってTX沿線エリアに県立高を新設せよという声が弱まらないか心配です。

高校新設<既存高活用+広域通学圏

県の考え方(新設を渋る理由、代替策、高校教育の目玉)を整理すると、こういうことです。

▼少子化・人口減で県内の高校入学者は減っており、県立高は統合・廃止で減らす。

▼県全体の傾向とは逆のTX沿線についても県立高の新設は極力避ける。

▼これで生じる学生数と定員数の不均衡は既存高学級増と通学圏広域化で乗り切る。

▼上位の既存県立高については中高一貫併設によって学生のレベル・アップを図る。

県がこういった県立高経営の枠組みにこだわるのであれば、市が通学補助の窓口業務を代行するとしても、その費用は県に出してもらうべきです。県の仕掛け(B)に追随していると、県立高不足問題の解決は既存高学級増と通学圏広域化で進みます。

新設までの暫定措置として県ないし市が遠距離通学費を補助するにしても、年3万円では少な過ぎます。実際にかかる費用の3分の1以下ということですから。県に送る請求書は、少なくとも1億6152万円✕3=4億8456万円にする必要があるでしょう。

通学補助を大幅県に請求書送付

高校生徒数と定員数のミスマッチ解消は、人口が増えているTX沿線市の重要課題です。それなのに、県も市も目先の対策でごまかそうとしています。生徒に遠距離通学の時間的負担を強い、保護者には経済的負担を強いるのを放置し、微々たる通学補助金を出す「善政」で取り繕うとする市長も困ったものです。

市議会は来年度予算案を否決し、総額4億8456万円の修正案を出し直させ、県に同額の請求書を送らせる議案を決議すべきでしょう。研究学園市=高校過疎地では「世界に笑われるまち」TSUKUBAになってしまいます。(経済ジャーナリスト)

<参考>

▽記事「…市の新年度予算案 過去最大を…連続更新」(2024年2月1日掲載

▽コラム139「上り坂の市と下り坂の県のおはなし」(2022年8月15日掲載

▽コラム118「つくば学園都市は公立高の過疎地」(2021年10月18日掲載

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

66 コメント

66 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

児童扶養手当を過少に支給 つくば市 1165人に計153万円

ひとり親家庭などに支給される児童扶養手当について、つくば市は13日、4月分から全国消費者物価指数の上昇に応じて手当額が3.2%引き上げとなったにもかかわらず、引き上げ分を加算せず、本来の金額よりも過少に支給してしまったと発表した。 市こども政策課によると、支給対象保護者約1200人のうち1165人に対し、4月引き上げ分の合計153万8650円を加算せず過少に支給した。過少だった分は保護者1人当たり330円~2640円になるという。 3月と4月の2カ月分を5月11日に対象者に振り込んだところ、複数から市に問い合わせがあり分かった。市は4月分から支給額が変更になることについて4月下旬にあらかじめ対象者に通知を出していた、 同課によると、支給額を変更した上で対象者の口座に振り込む手続きをシステム上で行う際、担当者がシステム処理の手順を誤ったのが原因という。一方、新たに支給対象となった36人については、支給額を変更する操作を実施した後に振り込み手続きをしたため、誤りはなかった。 不足額について同課は、対象者1165人に謝罪の通知を出した上で、5月末までに不足額を振り込むとしている。 再発防止策として、制度の変更については部署内で細心の注意を払うと共に、管理職が必ず確認を行うことを徹底するとしている。

がんに対する構え、対処・治療方法《ハチドリ暮らし》61

【コラム・山口京子】がん関連の本をあれこれ読みつつ、書き手によって、がんに対するまなざしが随分違うと感じます。それによって、がんに対する構え、対処方法、治療方法などが変わってきます。どれが正解かはわかりません。参考にしつつ、そこから自分はどういう教訓を得ればいいのか考えます。 1人1人身体の状況も、がんの種類も進行度も異なります。それを無視して、一つの言説を信じ込んでしまったら、後で後悔することになるでしょう。がんと診断されて、治療するのか、しないのか。治療も標準治療なのか、それ以外の治療なのか。調べるほど選択肢が広がり、迷うことが多くなります。 がん治療には、3つの目的があると言われています。根治、延命、緩和です。標準治療(手術・放射線・抗がん剤)がスタンダードですが、それらは対処療法だという指摘があります。標準治療で時間稼ぎをしながら、自助努力し、自己免疫力を高め、体力・体重の維持を意識することが大事だという医師の言葉に出会いました。 どのみち、人生は有限です。自分のできることをして、あとは運にまかせる、開き直りもありだ、とも思います。 がんによる死亡というとき、がん自体で死亡するより、栄養失調、臓器機能不全、免疫機能不全による感染症などで死亡することが多いようです。進行の早い末期がんと診断された私の場合、治療をしないという選択をしたら、臓器の機能不全による腸閉塞や腹水などに苦しめられたでしょう。 生き抜くぞ! いつでも死ねるぞ! 対処療法と言われても、抗がん剤治療をしてよかった、と思います。それによって、がんの進行が抑制され、臓器の機能不全も抑えられ、体力が維持でき、日常生活ができ、延命にもつながっている、と。 ただ、抗がん剤もいずれ効かなくなる時期がきます。そのときにどうするのか。二番手、三番手の薬があるそうですが、効果はだんだん小さくなるようです。体力や副作用の程度を踏まえながら、治療の止め時を決めることになるでしょう。 がん患者本人がすることとして、心を定めること、食事を改めること、睡眠確保や運動習慣など、多くの本は生活全体の見直しを勧めていました。治療と並行して、生活全体の改善も行うことが、延命や緩和のヒントになるような…。ある本は「生き抜くぞ、いつでも死ねるぞ」という気持ちを持つことが大事と言っていました。そうかもしれませんが、どうなることやら…。(消費生活アドバイザー)

過去最高益に 筑波銀行26年3月期決算

筑波銀行(本店・土浦市、生田雅彦頭取)は12日、2026年3月期(25年4月-26年3月)決算を発表した。金利の上昇や貸し倒れに備える与信関係費用の減少などから、当期純利益は単体で過去最高の65億円(前期比25億円、62.4%増)となった。 売上高に当たる経常収益は単体で前期比91億円(22.2%)増の500億円と、こちらも過去最高の増収となった。経常利益は同比29億円(66.6%)増の73億円。 銀行の本業によって得られる業務粗利益は、国内債券の損切り実施に伴い国債などの債権売却損が増加した一方、金利の上昇や与信関係費用の減少などにより単体で前期比2億円減の278億円となり、本業で稼いだ利益のコア業務純利益は前期比30億円増と過去最高の99億円となった。 貸出金の状況は、前年度末比911億円増の2兆2071億円で、住宅ローンなど個人ローンや中小企業への貸出が増加したことが主な要因となった。生田頭取は住宅ローンの増加について「TX沿線を中心に、東京に比べ、地価が安く購入しやすい価格帯にあり、比較的伸びている」とし、中小企業については「県南を中心に資金需要があり、『とことん支援』をうたい、ひざ詰めできめ細かく対応している」成果だと強調した。 預金・預かり資産の状況については、投資信託や生命保険などの預かり資産が増加したのに対し、預金は、茨城県が最も高い金利を提示した金融機関に定期預金などを預け入れる入札制を導入したなどから、公金預金が減少し、預金・預かり資産の合計は2兆9803億円になった。 一方、地域経済については、ホルムズ海峡封鎖など中東情勢の地域経済への影響について生田頭取は「足元では影響はほぼ出てないに等しいが、今後影響が出るであろうと思っている経営者の方たち結構な比率でいる。不安を抱えているお客様はいらっしゃるので、これについてはさまざまな支援を用意している」と話し、「心配ごとは中東情勢だけではない。そもそもモノが高くなり、人繰りで人がいなくて仕事が行きつかないなどがある。我々もいろいろな情報をキャッチしながら、ひざ詰めでやりたい」と話した。(鈴木宏子)

イチジクなんちゅうのは…《続・平熱日記》192

【コラム・斉藤裕之】毎年のように描いているもの。ナツツバキ、ドクダミ、クズの花、お茶の花…、そしてイチジク。「イチジクなんちゅうのは、家の周りのどこにでもあって、買ってまで食べるもんじゃない…」というのが私の正直なイチジク観。ところがカミさんはイチジクが好物で季節になると買ってくる。好きなものに文句も言えず、私はイチジクを描くことはあっても一度も口にすることがなかった。 夏のある日、近所の方から大変立派なイチジクをもらった。半分に割ったら鮮やかな赤い色が見えて、まずは絵を描いた。そしてガブリといってみた。とてもおいしかった。なぜ今までこれを食べなかったのか。 そんなことを知ってか知らずか、次女がイチジクの苗を買ってきた。イチジクが果物の中で一番好きだと言う。へー、初耳。しかし困った。次女は想像だにしていないだろう。イチジクがどれだけ奔放に枝葉を延ばすことかを。我が家のような住宅地では地植えは諦めるしかない。 とりあえず、大きめの鉢に植えて様子を見ることにしたが、春が近づくとイチジクにきれいな緑の葉が生え始めた。結局、山口の弟の家の敷地に植えることにした。 ロンドンの美術館は無料 春、山口滞在中に、ロンドンに赴任している姪(めい)夫婦が一時帰国した。母親はおいしい料理を作り、父親は異国の土産話を肴(さかな)に酒を飲む。「最近、絵を習い始めたんです…」と話すのは、休職して姪に帯同している義理の甥(おい)。美術とは全く無縁だった彼が最近絵を描き始めたと言う。きっかけは美術館なんだと。 なんと、ロンドンの美術館は誰でも無料で入れると言う。今や日本の美術館博物館には稼ぐノルマが課せられている。なんでもコスパ? そもそも芸術はその対極にあるものなのに…。文化の裾野を広げるには北風と太陽どっちが良策? 散歩がてら幾度も美術館に赴くうちに絵に興味が湧いてきて、とうとうデッサンの講座に通い始めたとのこと。描き始めたデッサンの画像を見せてくれたが、悪くない。その夜は彼とデッサンのことや好きな画家、ヨーロッパの美術館などについて楽しく語らった。 大きな実をつけますように さて、イチジクは漢字で無花果と書くが、花は実の中にあるらしい。つまり私が描いたり食べたりしているあの赤いツブツブの正体は花。自らの内に花を咲かせるなんて、ちょっと粋なイチジクだが、アダムとイブが最初に身に着けたのがイチジクの葉だったり、西洋ではさまざまな逸話に登場する象徴的な果実で、豊かさや知識の象徴とされることもある。 そういえば、南仏の山間で道端に生えているイチジクをもいで食べさせられたな。日本のものより青く小さかったが、見た目と違って甘く柔らかだったのを思い出した。 桜の咲くころ「大きな実をつけますように」と、いい場所を選んでイチジクの苗を地植えにした。何年かたって次女が忘れたころに、このイチジクの実を食べさせてやろう。あとは「弟が草刈り機で雑草と一緒に刈り取ってしまいませんように…」(画家)