月曜日, 6月 16, 2025
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茨城の干し芋 最近の話題《邑から日本を見る》153

【コラム・先﨑千尋】茨城県の冬の風物詩は干し芋。と言っても、県南や県西地区の人はあまり関係ないと思っているかもしれない。私が県北地区に住んでいるからそう思うのだろうか。

誰にも好かれるその干し芋。全国の干し芋の産出額(生産額)は2021年のデータで130億円(1万910トン)。うち茨城が129億円。先進地だった静岡県などすべてを足しても1億円にすぎないのだから、ダントツ、独壇場だ。

その茨城の中でも、ひたちなか市、東海村、那珂市で90%を占める。他では、鉾田市、茨城町、那珂市などで生産量が多い。

干し芋は県内や首都圏などでは知られていても、全国レベルでの知名度は高くない。そこで県は1月10日を「ほしいもの日」と制定し、認知度の向上をめざすことにした。この日にしたのは、芋という字が草冠(くさかんむり)の下に一と十が入っているからだそうだ。

そうした県の動きに合わせて、干し芋加工業者の中にも新たな試みが見られる。そのうちの一つに、ひたちなか市阿字ケ浦町のマルヒがある。同社ではこの1月から、「あなただけの特別な干し芋を作りませんか(MAKE HOSIIMO  YOURSELF)と消費者に呼びかけ、干し芋の手づくり体験ができる施設を作った。

会場は同社が海水浴シーズンに営業しているビーチガーデンの一室で、同社専務の黒澤一欽さんが、最初に干し芋の歴史や作り方を映像で紹介する。その後、エプロンや手袋、帽子などの作業着を身に着けてもらい、作業にとりかかる。

体験では、あらかじめ蒸しておいた約2キロのサツマイモを使う。イモの種類は、古くからある「玉豊」か、人気の高い「べにはるか」で、体験者が事前に選んでおく。作業は、ナイフでイモの皮をむき、スライサーを通して薄く切り、用意されたすだれに並べる。

すだれに並べたサツマイモは同社で預かり、1週間ほど天日で干し、完成した干し芋を体験者の名前が入ったパックに袋詰めし、届けられる。体験できるのは、1月から4月までの金・土曜日。申込者は県内や首都圏の干し芋が好きな人が多く、大阪からも来ている。

干し芋の皮で焼酎造り

マルヒのもう一つの話題は、蒸したサツマイモの皮や、大きくなりすぎて干し芋に適さないサツマイモなど、干し芋の製造工程でこれまで捨てられてきた残渣(ざんさ)を利用して3種類の焼酎を製造し、販売を始めたことだ。

干し芋の残渣を利用した焼酎

大量に出る干し芋の皮の処分は、放置しておくとクサくなり、これまで生産者の頭痛のタネだった。焼酎は3種類ともサツマイモの甘い香りが楽しめ、品種やサツマイモの状態の違いから生じる味の差を感じ取るのも楽しみの一つだ。

干し芋焼酎はこれまでにもひたちなか農協(現常陸農協)の「へのかっぱ」などがあるが、残渣を利用しての焼酎づくりは、干し芋産地の課題解決の新たな手法として注目されよう。

黒澤専務は2009年にスタートした「ほしいも学校」の最初からのメンバーだ。ほしいも学校のコンセプトは、コミュニケーション、商品開発、教育、広報、農業、志気。干し芋の体験教室や残渣を利用した焼酎造りは、ほしいも学校の目指す方向に沿った活動と言える。拍手を送りたい。(元瓜連町長)

◆問い合わせ先は㈱マルヒ(電話0120-028056)

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難民支援へ連帯 つくば市役所を青色にライトアップ

6月20日は世界難民の日 国連が定めた「世界難民の日(6月20日)」を前に12日夜、つくば市役所本庁舎東側壁面が4灯の青いライトで照らされた。ライトアップの期間は12日から29日まで、毎日夜7時から10時まで点灯される。 世界難民の日は、難民の保護と支援に世界的な関心を高めることを目的に2000年12月4日に国連総会で決議された。各地の建物を国連のシンボルカラーである青色でライトアップすることは、難民支援への連帯を示す。世界約130カ国で難民支援などに取り組む国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の駐日事務所が、この日に合わせて呼び掛けた。 県内ではつくば市役所のほか水戸芸術館(水戸市)が参加している。ほかに札幌市時計台(札幌市)、鶴ケ城天守閣(福島県会津若松市)、都庁第一本庁舎(東京都新宿区)、東寺(京都市)、熊本城天守閣(熊本市)など全国67カ所が青色にライトアップされる。また期間中は、国連大学(東京都渋谷区)やの佐賀県庁旧館(佐賀市)など全国6カ所で「世界難民の日こいのぼり」が掲揚される。 つくば市は今年5月、UNHCRが進める国際キャンペーン「難民を支える自治体ネットワーク」に加入し、5月18日に市内で行われた科学と国際交流イベント「つくばフェスティバル2025」内で同ネットワークへの加入署名式が行われ、UNHCR駐日主席副代表代行の桒原妙子さんと五十嵐立青市長が同ネットワークへの賛同表明文に署名した(5月19日付)。昨年、同市は世界難民の日に合わせて、2021年に開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」に参加した難民アスリートの活躍やヒューマンストーリーを収めた「難民アスリート写真展」や、市国際交流協会主催の国際理解講座「世界お茶のみ話」で「難民ワークショップ」を開催するなど、難民支援への理解啓発に取り組んできた。 企画を担当する同市国際都市推進課は「今回の企画を通じて多くの市民が難民問題に関心を持つ機会につなげたい」とし、「つくば市には多様な国や地域出身の方が暮らしている。誰にとっても暮らしやすい街にしていきたい」とする。一方で「他の国々には、さまざまな環境の中で現地に留まらざるを得ない方々もいる。そういった方々へ、UNHCRを通じて今後も支援をしていきたい」と思いを語った。今回のライトアップにかかる事業費はライトの設置費など約50万円という。(柴田大輔)