霞ケ浦を望む歩崎公園にひっそりとたたずむ「霞ケ浦周航歌」の歌碑―。霞ケ浦の名所を叙情豊かに歌い上げている。土浦で育った禅の研究家が「霞ケ浦を浄化し、誇りにして宝にしたい」と作詞し、1997年に完成したが広まらなかった。歌を作ったのは一体どのような人で、どうして幻の歌となってしまったのか。
歌碑には楽譜と歌詞が刻み込まれているが、その曲を知る人はほとんどいない。歌碑を目にしたサイクリストも「聞いたことがない。ネットで検索しても何も出てこない」と話す。歌碑には「作詞 赤根祥道、作曲 安田優」とある。
霞ケ浦を一周
「筑波の嶺をあとにして 花の筏(いかだ)の桜川 亀城の櫓(やぐら) 壁白く めざすは霞浦(かほ)の湖ぞ」という歌詞から始まるこの歌は、1番から9番まである。楽譜を見ると8分の6拍子の曲で、歌詞には、土浦、江戸崎、浮島、潮来、鹿島、麻生、玉造、石岡、歩崎と霞ケ浦を反時計回りに一周する地名を詠み込んでいる。それぞれの地の歴史、文化に触れる内容になっており、その歌詞からは郷土への愛が伝わってくる。
作詞は赤根祥道さん
作詞をした赤根祥道さんは1930年、中国・大連市生まれ。2001年に亡くなっている。土浦一高を卒業し、東北大学と駒澤大学大学院で哲学と禅を、青山学院大学大学院で経営学を学んだ禅の研究家だった。1990年から亡くなる2001年まで、山城経営研究所(東京都千代田区)が主催するビジネス禅の研修会「赤根塾」で講師を務めていた。
「赤根塾」では、禅語の書物「碧巌録(へきがんろく)」などを用いて、全国の有名企業、中小企業の社長や重役などに禅の知恵を解き、経営の心を教えていた。禅に関する多数の著作があり、1998年には土浦市立図書館に「赤根祥道文庫」として著書約200冊と視聴覚資料を寄贈している。
歌はアマチュア作曲家の安田優さんが曲を付けて1997年に完成し、同年に開かれた「泳げる霞ケ浦市民フェスティバル」で披露された。安田さんの詳細は不明。歌のCDは地域の中学校などにも寄贈されたという。しかしその後広まらず、幻の楽曲となってしまった。(田中めぐみ)
続く