木曜日, 3月 19, 2026
ホームつくば障害者の工賃アップ目指し不要パソコンを回収 つくばの就労支援施設

障害者の工賃アップ目指し不要パソコンを回収 つくばの就労支援施設

「さくら学園」

障害者の工賃をアップさせたいと、つくば市島名の障害者就労支援施設「さくら学園」(NPO明豊会運営、飯島喜代志代表)が、不要になったパソコンの回収と希少金属などのリサイクルに取り組んでいる。

パソコンの情報漏えい対策として、企業や学校などに出向き、記憶媒体装置のHDD(ハードディスクドライブ)を依頼者の目の前でパソコンから抜き取り、工具で傷付けて物理的に破壊してから回収するのが特徴だ。昨年夏、県内の障害者施設として初めてスタートした。

22、23日の2日間、市内の県立つくば特別支援学校に、障害者とスタッフ延べ7人が出張し、廃棄予定の150台のパソコンからHDDを取り出した。ゴーグルと手袋を着用した障害者が、100本の精密ドライバーセットの中から、ねじの太さや形に合ったドライバーを選んで、パソコンのねじをはずしながら解体していく。HDDを取り出すと、作業を見守る同校教員の目の前で、工具で傷付け情報を物理的に破壊する。

情報漏えい対策として、取り出し、傷を付けたHDD=同

HDDを破壊した後はさくら学園に持ち帰り、パソコンを鉄、アルミ、基板、プラスチックなど40種類ほどの部品に分解して分別する。1台のパソコンを解体するのに20種類ほどのドライバーを使いこなし、早い人で1台当たり30分、平均1時間程度で解体することができるという。現在、同学園を利用する35人の障害者のうち、7人がパソコンの解体作業に従事している。

介護福祉士で同学園サービス管理責任者の戸村雅一さん(68)によると「これまで従事した全員がパソコン解体作業を継続することができており、仕事として達成感があると思う」と話す。23日、同特別支援学校でHDDの取り出し作業をした同園を利用する砂長祐季さん(20)は「ねじが固いので大変」と話し、沖山大稀さん(19)は「ねじ回しが楽しい」と話していた。

平均工賃を2倍に

分別した部品は、資源として販売する。特に半導体が載った基板は金や銀など希少金属を含むことから高く販売でき、障害者の工賃アップにつながる。一方プラスチックなど同学園が費用を支払って処分する部品もあるが、95%は再資源化できるという。

同園では現在、障害者に対し、全国平均とほぼ同額の月平均1万6000円ほどの工賃を支払っているが、パソコン回収・解体作業により、従事した本人だけでなく、全体の工賃を2年後に現在の2倍の月平均3万円に上げることを目標にしている。

パソコンの処分を依頼したつくば特別支援学校の上野俊輔教諭(41)は「去年の夏に話があり、HDDの情報漏えい対策をどうするか検討していたところ、年末にさくら学園の方が来校し、処分を依頼することを決めた。さくら学園は卒業生が利用しており、卒業生の仕事が増え、工賃アップにつながれば」と話す。

さくら学園のスタッフに時折質問しながらパソコンを解体する沖山大稀さん(左端)。1カ月前からパソコン解体作業に取り組み始めたばかり=同

全国の事業所とネットワーク

きっかけは1年半ほど前、障害者施設の仕事量を増やす取り組みをしている茨城県共同受発注センター(水戸市)の担当者から、工賃をアップできる仕事として紹介を受けたこと。すでにパソコン回収作業に取り組んでいた神奈川県平塚市の障害者施設に戸村さんらが見学に行き勉強、さらに全国の障害者施設とネットワークを組んでパソコンの回収と再資源化に取り組んでいる「日本基板ネットワーク」(新潟市)の指導を受けた。

同ネットワークの取り組みは昨年3月、首相が本部長を務めるSDGs推進本部主催の「第6回ジャパンSDGsアワード」で、廃棄物を減らして環境負荷を低減し障害者の賃金向上と自立に寄与しているとして、特別賞を受賞した。現在も3カ月に1度、同ネットワークの指導を受けながら作業のさらなる安全性向上と効率アップに取り組む。

回収するのはパソコンのほか、携帯電話やゲーム機など。企業や団体のほか、個人からも回収し、寄付を受ける形で有価物として無料で引き取る。解体、分別後は、鉄、アルミ、銅は廃棄物回収業者に販売し、希少金属を含む基板などは新潟市の日本基板ネットワークに送り、兵庫県内の溶鉱炉で溶かし、金や銀を取り出す。

戸村さんは「利用者の平均工賃を上げるのが一番の目標」とし「利用者が他の事業所を訪れて作業する機会はあまりないので、出張解体を通して地域の人とつながることもできる」と意義を強調する。さらに「レアメタルは都市鉱山とも言われるが、限られた資源をリサイクルするということもやっていかなくてはらないことだと思う」とし、「県内に一緒にやれる事業所の仲間を増やしたい」と呼び掛ける。現在、パソコン回収に取り組んでいる福祉事業所はさくら学園を含めまだ2カ所のみという。(鈴木宏子)

◆回収するのは、パソコンと、ルーターやケーブルなどの周辺機器、携帯電話、ゲーム機など。コピー機、プリンター、故障した液晶モニターは不可。つくば市内の場合、10台以上は引き取りに行き、土浦市など周辺市町村は20台以上は引き取りに行く。個人の場合、さくら学園に直接持ち込むか、宅配便などで送付すれば引き取り可能。持ち込みや宅配便などの場合、破壊したHDDを写真撮影し解体証明書などと共に後日メールで送付する。さくら学園はつくば市島名2304。詳しくは電話029-875-3517またはメールinfo@sakura-gakuen.orgへ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

4 コメント

4 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

土浦の新小学1年生に黄色い帽子を寄付 JA水郷つくば

新年度に土浦市内の市立小学校と義務教育学校に入学する全ての新小学1年生に向けて、JA水郷つくば(土浦市小岩田西、池田正組合長)が883個の黄色い交通安全帽子を土浦市に寄付し、18日同市役所で寄贈式が催された。池田組合長から安藤真理子市長に目録などが手渡された。 交通安全帽子の寄付は同JAが地域貢献活動の一環で1977年から始め、今年で49年目となる。以前は男子がキャップ型、女子はハット型と性別で形が異なっていたが、2024年度から性別を問わず共通のハット型とした。 式典でJA水郷つくばの池田組合長は「この事業が始まった時は農協が合併する前だった。自分が入所した頃からやっていることなので感慨深い。小学1年生は、黄色い帽子をかぶっているのが知れ渡っているので、運転手も気をつけてくれる。今後も支援を続けていきたい」と話し「帽子ではなくヘルメットという声もあったが従来通り黄色い帽子となった」と付け加えた。 寄付を受けた土浦市の安藤真理子市長は「交通安全は市としても大事なことなので、長い期間寄付を続けていただき大変感謝している。子供たちには毎日元気に登下校してもらいたい」と述べた。 寄贈式では土浦市が1976年から毎年、入学祝い品として新1年生に無料で贈呈しているランドセルも用意された。ランドセルも今春から性別に関係なくジェンダーレスの薄い茶色になる(25年5月2日付)。 新小学1年生に対するJA水郷つくばの交通安全帽子の寄付は、土浦市のほか、管轄する龍ケ崎、牛久、かすみがうら、利根、美浦、阿見の7市町村全ての公立小学校と義務教育学校に対して行われる。(榎田智司)

つくばエクスプレスの車窓から《ご近所スケッチ》22

【コラム・川浪せつ子】今回はつくばエクスプレス(TX)の窓から見えた筑波山とつくば市内の絵です。TXは2005年8月に開通しました。都内からつくば市に引っ越してきた私は、それまで乗用車でJR荒川沖駅まで行き、常磐線で東京に通いました。免許証を持っていなかったので、教習所に通わねばならず、いろいろ大変でした。 TXは待ち望んだ電車でした。今は都心部から帰るとき、TXに乗り、筑波山が見えると心が休まります。車窓からの風景は穏やかで、都会の喧騒(けんそう)を忘れさせてくれ、地方の良さをつくづく感じます。つくば市に来てよかったと、しみじみ思うときです。 交通の便は良くなったものの、つくば市の「景観の方はどうかしら?」と思っていました。そんなとき2月に「つくば市景観講演会」という市主催の企画があったので、参加してみました。建築業界の隅っこで仕事をしていますが、これまで景観のことはあまり考えず、受けた仕事をこなしているだけの生活でした。 「便利」だけでなく「景観」も 「つくば市の景観100」「つくば景観ルートマップ」という冊子、ご覧になったことありますか? 少し前に発行されたものですが、時々見て、絵を描く資料にしていました。つくば市とその周辺部には、ステキな自然や景観がたくさんあります。 電車も通り、人口も増え、便利にはなったものの、それは景観の悪化につながっているのだと、今回の企画で感じました。仕事で「あれ?こんなのいいの?」と思うような看板を描いたこともありましたが、ソレです。「再生エネルギー」の太陽光発電パネルが、筑波山に造られたこともありました。コレ、禁止なんじゃないの? 大学の先生の話も面白かったです。先生+市民の協力で、街を再生・進化させた事例など。 上の絵のように、つくば市はまだ開発中ですが、「便利」だけでなく「景観」も、「住みやすい街」には大切と思いました。(イラストレーター)

学生宿舎値上げを1年延期 筑波大

永田学長「値上げかなわなければ宿舎廃止」 筑波大学(つくば市天王台)が4月1日から実施するとしていた学生宿舎の寄宿料値上げ=3月11日付=について、永田恭介学長は18日の定例記者会見で、値上げを1年間延期すると発表した。一方で「残念ながら値上げがかなわなければ、宿舎廃止が順番に行われる」とも発言。学生らからの反発は必至で、大学側と学生側との話し合いにも影響が出そうだ。 永田学長は会見で「宿舎値上げについては、かなりご理解をいただいている」と、大半の学生から理解を得ていると強調し「一部の学生さんにはまだご理解いただけていない」との見解を述べた。その上で「さらに対話を続けるという意味合いで、もう少し値上げの時期を遅らせるということにした」と述べ、宿舎値上げを1年間延期するとした。 一方で「いろんな意見交換を行いながら最終的に値上げを行いたい」と、値上げへの強い意向を示し「残念ながら値上げがかなわなければ、宿舎廃止が順番に行われる」と強硬な姿勢をちらつかせた。 その上で永田学長は「国立大学の財産の部分であり、当然ながら安心安全が見込めない建物は使えなくなる。僕ら(筑波大学)が廃止するよりも、廃止せざるを得ない状況になると思う。改修については概算要求で認められることはほとんどなく、校舎などもほとんど自力で直している」と説明した。 一方で経済的に厳しい学生や、障害を持つ学生への配慮については「少し思慮が足りなかった部分があるので、来年(2027年入学)の学生が入るまでに順序良くチャートを作って、それぞれが適正なところに入れるよう、その準備が必要になる」との考えを示した。 平均で1.4倍から1.5倍に及ぶ賃料や共益費の値上げ幅圧縮などの選択肢の有無について永田学長は、宿舎にwi-fi環境を整備することを挙げて「値下げするのは非常に難しい」との考えを強調した。 弁護士「全く反省してない」 これに対し学生有志の代理人である指宿昭一弁護士は「(大学側は)全く反省していない。この値上げを聞いて宿舎から出て行った学生もいる。学生の声を聞かずに一方的に(値上げを)決めてしまったことを反省してほしい」と憤りを見せた。その上で「大幅値上げをしないで宿舎を維持できるよう大学側は追求すべき」と、同大に対し宿舎維持方策の検討を求めた。 宿舎値上げをめぐっては、大学公認の学生代表組織「全学学類・専門学群・総合学域群代表者会議」(全代会)が1月7日付で学生担当の千葉親文副学長に対し▽値上げについて学生と議論を通じての合意の形成▽寄宿料、共益費の値上げを2027年4月1日まで延期▽経済的に困窮している学生に対して、援助の方法を用意し周知を行うことによって保護を与えること―の計3項目からなる要請書を提出。学生有志らで作る「筑波大学学生宿舎寄宿料増額の撤回を求める会」は3月2日、賃料値上げ撤回や値上げ実施延期のほかに、学生宿舎入居者代表や全代会との協議や同意なしで値上げを行わないこと、学生が申し入れをしたことを理由に学業や生活上の不利益を一切与えないことの確約などを求める要求書と交渉申入書を提出している。(崎山勝功)

廃棄していた果肉を活用 福来みかんのドリンク開発 筑波山神社参道の土産店

筑波山麓特産の福来みかんの皮を使った七味を販売する筑波山神社参道の土産店「神橋亭」(つくば市筑波、店主・渡辺由美さん)が昨年末から、これまで廃棄していた福来みかんの果実を活用しドリンクを販売している。福来みかん特有のさわやかな香りと甘酸っぱさが特徴だ。七味はみかんの皮だけを利用するため、果肉はこれまで廃棄したり、人にあげたりしていた。 同店の七味は、先代店主の渡辺美代子さん(86)手作りの「みよこの七味」で知られる。渡辺さん一家は筑波山中腹の約990平方メートルで福来みかんを100本ほど栽培している。みかんが黄色に色付く11月になると毎年、店主の由美さん(43)と義母の美代子さんが、収穫したみかんの皮をむいて、干して乾かし、焙煎して「陳皮(ちんぴ)」を作り、粉にして唐辛子やごま、青のりなどと混ぜて福来みかんの七味を手作りし販売している。 一方、みかんの果肉は毎年2トンほど出る。一部を冷凍し知人にあげたりしているが、毎年1トンほど廃棄している。 由美さんは「捨てるのはもったいない。みかんの果肉をどうすればいいか」とずっと考えていたという。昨年、美代子さんから果肉をもらった知人が、果肉のシロップ漬けを作って持ってきてくれた。甘みも苦みもあっておいしく、シロップ漬けの作り方を教わったのが始まりという。 その後、由美さんは、果肉を焼酎に漬けたり、他のアルコール類に入れたりなど試行錯誤を繰り返し、砂糖の量や煮込み時間なども調整を繰り返した。果肉を生のまま使うより冷凍した果肉を使った方が甘味が増すということも分かった。 さらに砂糖を入れて煮込む際、当初みかんの種を取り除いていたが、種を取り除かずそのまま煮込んだ方が甘味が増すほか、加工の手間が省けるなどの利点も発見。こうして果肉を丸ごと使用した福来みかんのシロップ漬けが完成した。 シロップ漬けは果実酒の瓶に詰めて店頭に並べ、寒い日は体を温める「福来みかんホット」として、暑い日は炭酸割の「福来みかんスカッシュ」として1杯(300ミリリットル)500円(税込み)で提供する。ドリンクには果肉がほぼ1個分入っており、スプーンですくって食べられるようになっている。 店主の由美さんは「炭酸で割ったりお湯で割ったりするほか、紅茶で割ったり、ソフトクリームのトッピングができないかなど考えている。福来みかんのジェラードの試作品もできたので提供していきたい」と話す。 神橋亭は明治半ばの1894年に創業した。筑波山神社の神橋の脇にあり、登山客や観光客、神社の参拝者が立ち寄る。福来みかんの陳皮が入った七味は40年前ぐらいから販売している。 店舗は2024年9月に事業継承引継ぎ補助金を活用してリニューアルした。七味の加工工房は元々みかん畑の近くに作っていたが、福来みかんの粉の香りを来店客にかいでもらいたくて土産店に移設した。茨城県よろず支援拠点からの支援を受けている。同支援員の吉村千鶴子さんは「支援する側も、福来みかんの果肉の部分をどうするかが課題だった、今回、果肉のまま種もとらずに煮込むという画期的な方法が見つかり、とてもうれしい」とコメントする。(榎田智司)