水曜日, 12月 3, 2025
ホームつくば当事者学生はどう見るか【LGBT法、つくば市議アンケート】下

当事者学生はどう見るか【LGBT法、つくば市議アンケート】下

NEWSつくばがつくば市議に行ったLGBT理解増進法関連施策に関するアンケート調査の結果を当事者はどう見るのか。筑波大生の木原里沙さん、同大学院生の澤田彬良さん、黒原澪さん(活動名)に話を聞いた。木原さんは、自分を男女の枠では認識しない「ノンバイナリー」かつ、性的にひかれることに相手の性のあり方は関係ない「パンセクシュアル(全性愛者)」、澤田さんはゲイである。2人とも、大学内のサークルや所属組織で、LGBT当事者学生や友人が集まる居場所をつくっている。黒原さんもLGBT当事者だ。

ー全議員の回答を見た率直な感想は?

木原 SNSではLGBTに対するヘイトが広がっているけれど、今回、ほとんどの議員が新たな法整備や学校での取り組みが「必要」「どちらかといえば必要」と回答し、何人かの議員は、具体的な施策や取り組みまで書いていて、うれしい。

黒原 パートナーシップ制度と婚姻制度の差を埋める施策について書いている議員は、当事者の具体的な困難に寄り添おうとしてくれていると感じる。今回の調査に書いたことを全部やったら、つくば市が変わると思う。

澤田 川久保皆実議員が「理解増進法をもとに、取り組んでいく」と書いている。理解増進法を、何もできない言い訳にするのではなく、具体的な取り組みをするための根拠として使おうとしてくれている。

ー反対に残念な回答は?

木原 「専門家の意見を聞く」との意見があるけれど、現実に困っている当事者の声は聞こうとは思わないのかな。

澤田 専門家の中でも意見が異なるから、誰を専門家として呼ぶかに既に政治性が強く出ると思う。当事者からも意見を聞かないと、偏った意見になりかねない。

黒原 高校の探求学習の授業に参加したとき、毎回、ジェンダーをテーマに選ぶグループがいくつかあり、子どもたちは大人が思う以上に考えている。今の子どもたちの現状を捉えきれているのか疑問。特に、数人の議員が制服の選択制について触れているが、スカートかスラックスを制度的に選べるからいいのではなく、本来やるべきは、スカートを履きたい生徒が、何の葛藤もなく、自由に選べる状況をつくることだろう。

ー今回、10人の議員が無回答でした。

木原 無回答の人は、議員としての責任を果たしているのだろうか。

黒原 理解しようとしてくれている議員は、深い部分まで考えている一方、最初から回答しない議員がいるのは残念。今は地域によっても、市民や議員の意識に差があるが、国として理解を進める法律ができたので、今後、足並みはそろうと期待したい。

澤田 議員として市民の生活をよくするなら、つくばに住むLGBT当事者の市民のことも考えないといけないはず。「難しいから」と何も回答しないのは、LGBTを市民として見ていないのかと思い、悲しい。

無回答の議員は、ほとんど自民党だ。無回答の議員の中には、本当は個人の意見として書けることがあるのに、政党の方針だからと回答しない人もいるのではないか。どの党派にいても、人権は保障すべきもの。市議会は市民の生活に直接影響するのだから、政党としての意見ではなく、1人の議員として回答してほしい。

ー今回の意識調査は五頭泰誠議長のSNSへの投稿が契機になった。アンケート調査の中で五頭議長は「自分のSNSを読んでほしい」と書いている。五頭議長は昨年2月、自身のX(旧ツイッター)に「LGBTを声高に主張する人。胡散(うさん)臭い」と投稿し、数日後に削除した。5月には、ツイッター投稿に関する釈明文を自身のフェイスブックで公開。五頭議長が読んでほしいと書いたのは、そのフェイスブック上の投稿だと思われる。

黒原 大学院進学を機に引っ越してきたつくばで、様々な国の出身者が自分らしく暮らす様子を見て、今まで自分の何気ない発言で、無自覚に傷つけてしまった人もいるかもしれないと反省した。五頭議長は自分の見たいようにしかLGBTを見ておらず、もっと様々な視点を持ってほしい。

澤田 大学の授業や研究では、今まで自分が持ってきた思い込みを捨てて、新しい考え方を既存の考え方に融合する作業を日常的に行う。自分の主張を持つことは大切なことだが、その主張に検討の余地があるかもしれないと気づいたときは、自分と異なる意見も取り入れて、新しい考え方を自分の中でつくっていく覚悟を、市議の人たちにも持ってほしい。

「声高に主張する人」という表現

澤田 五頭議長は(Xで『胡散臭い』と言及したことに対する)釈明文の中で「『声高に主張する人』は、LGBTの皆さんを利用している人」としている。しかし、LGBT当事者の中にも、自分たちの権利を社会に強く訴える人もいれば、そうでない人もいる。議長は権利主張をしない当事者の存在は認めるけれど、権利主張をする当事者は認めない、としているように思える。実際、釈明文で、法整備に肯定的な当事者の声は執拗なまでに書かれていない。

またX投稿後、当事者から「あまり騒がないでほしい」などの声が寄せられたことを、議長は釈明文の中で、自分への支持として紹介している。しかし、LGBTに対する差別がまだ根強い社会の中で、自分の性を隠さないと生きていけない当事者もいる。LGBTが社会で注目されることで、自分の性が暴かれ、今の立場が脅かされると思っている当事者が「そっとしてほしい」と言っているのだとしたら、その意見は、つくば市が当事者にとって安全ではないことの裏返しであり、議長への支持ではない。

木原 「マイノリティーは声高に主張する」とよく言うけれど、マジョリティーは特に声を上げなくても、比較的安全に暮らせる。マイノリティーは声を上げないと、存在が可視化されないから、声が大きくなるのは当たり前。声高に主張しなければならない当事者の背景を想像してほしい。

性犯罪に結びつけられるトランスジェンダー

澤田 議長は、性自認を女性とする人が女性更衣室で性犯罪等を起こした海外の事件を参照し、法整備により女性や子どもまでが危険にさらされると主張するが、五頭議長も指摘するとおり、トランス女性にもいろいろな人がいる。具体的な海外の事例を挙げるなら、膨大にある事例のうち、どの事例を引用し、その事件の犯人が本当にトランス女性だったのか、トランス女性と偽って犯行に及んだのかまで明記してほしい。

木原 多くのトランス当事者は周囲の人を驚かせないかを気にしながら、トイレを使っている。その中で、疑われるような性別のトイレに堂々と入る当事者がそんなにいるのだろうか。

澤田 性犯罪はトランスジェンダーだけの問題ではなく、多数派とされるシスジェンダー、異性愛者を含む犯罪者の問題。トランスジェンダーの権利を保障しないことで、性犯罪がなくなるわけではない。トランスジェンダーと女性を対峙させるのではなく、トランスジェンダーの権利を保障するのと同時に、性犯罪の取り締まりを強化する議論が必要だろう。社会的な弱者同士を対立させ、どちらかの権利を奪うのではなく、どちらの権利も守るための議論をしてほしい。

黒原 これまでも、女性たちは性犯罪に悩まされてきて、声を上げてきた。その人たちの立場は忘れてはいけないと思う。

澤田 性犯罪はトランスジェンダーだけの問題ではないけれど、LGBTを含めた社会に生きる全ての人の問題だから、LGBT当事者も性犯罪の問題に無関心でいてはいけないと一方で思う。

LGBTを含めた全ての人が生きやすい社会とは

木原 五頭議長は意識調査の中で、「トイレなどは今のまままでよいかと」と回答しているが、トイレは毎日使うので、ストレスが蓄積される。私は男女の枠に当てはまらないノンバイナリーなので、多目的トイレを使う場合もあるが、多目的トイレしか使えない人の迷惑にならないか、心配になる。性別に関係なく使えるトイレが増えれば、生きやすくなる人も増えるし、その変化で悪影響を被る人はいないのでは。

黒原 公衆トイレ以外でも、仕組みを変えることで、当事者の負担を減らせることがあるはず。例えば、今はほとんどの公的書類に性別欄があるが、性別を聞かれることがしんどい人もいる。統計調査など性別の情報が必須の時以外は、性別表記をなくしても誰も困らないと思う。

ー五頭議長の投稿以外でも、現在、SNSではLGBTに対する批判的な発言が飛び交っている。どう感じる?

黒原 SNSでどんな情報が流れてくるかは、人によって変わる。私はSNSでLGBTに肯定的な投稿ばかりに反応するから、似たような投稿しか出てこない。反対に、批判的な投稿ばかり見る人は「みんな、LGBTを批判している」と思ってしまうだろう。

木原 議長の釈明文は、「LGBTを声高に主張する人は胡散臭い」ことを主張するために、X上のいろんな人の投稿をまとめたと感じる。議長の投稿が、攻撃的なことを発信する人たちの後ろ盾になってしまうのは怖い。

澤田 ここ数年、今までLGBTに興味のなかった人たちが、ニュースやSNSで批判的な情報やデマに触れることで、LGBTに批判的な発言をする学生が自分の周囲でも増えた。当事者学生として、大学を含む身近な社会が安全でなくなってきたと感じている。だからこそ、批判的な情報を流してきた人たちも、今度は当事者の生きづらさを解消するための議論をしてほしい。

(川端舞)

終わり

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

4 コメント

4 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

サイン本コレクター 中山光昭さん《ふるほんや見聞記》11

【コラム・岡田富朗】今年30周年を迎えた「アートウェーブつくば」。その初期から参加し、長年にわたり作品を発表してきたのが、中山光昭さん(70)です。アートウェーブつくばは、つくば市周辺で活動する作家による展覧会で、日本画・洋画・立体・平面・書・彫刻・工芸・写真など、幅広いジャンルの作品が一堂に会します。 1985年のつくば万博をきっかけに始まり、現在も毎年開催されている地域密着の美術イベントで、5年に一度は五浦の県立天心美術館(北茨城市大津町)でも展示が行われます。アート制作のかたわら、中山さんはつくば市文化協会の芸術副部長を務め、さらに筑波山神社の氏子総代としても地域に寄り添ってこられました。その活動の幅は実に多岐にわたります。 中山さんは、サイン本のコレクターでもあります。2〜3年かけてご自身の足でコツコツと集められたサイン本は、実に300冊を超えるとのこと。古本屋やリサイクルショップで偶然出会ったものから、サイン会に足を運んで手に入れたものまで、収集の方法はさまざまです。 今回12月9日から3日間、つくば市民ギャラリーにて、コレクションの中から50冊前後のサイン本を見ることができる展示が開催されます。写真に写っているサイン本だけでも、谷川俊太郎(詩人)、永六輔(放送作家)、ピーコ(タレント)、神田伯山(講談師)、柳生博(俳優)、桂三枝(落語家)、中島潔(画家)─と、実に多彩な顔ぶれが並びます。 著名人の人柄を感じられる 古いものや骨董にも関心があったという中山さんに、サイン本の魅力について伺いました。 「サイン本との出会いは偶然が多く、たまたま気になって手に取った本にサインが入っていることがよくあります。まるで本に呼ばれているかのように感じることもあります。サイン本と一口に言っても、サイン会で書かれたもの、作家が贈呈のために記したもの、編集者への推薦として他者の著作に署名したものなど、実にさまざまです。サインに絵が添えられていたり、言葉が書き加えられているものもあります」 「また、どのような経緯で、誰から誰へと渡ってきたのかを想像すると、その本が歩んできた“時間”を感じることができます。現在は手書きのものも少なくなりつつあり、著名な方々の人柄を感じられるサインは、とても貴重で魅力的なものだと思います。今後も自分が納得できるまでは、サイン本の収集を続けていくつもりです」と語ってくださいました。(ブックセンター・キャンパス店主) 中山光昭コレクション サイン本展・他(仮)・会期:12月9日〜12月11日・会場:つくば市民ギャラリー(つくば市吾妻2-7-5、中央公園内)・時間:午前9時〜午後5時

愛犬ミミの自然死《くずかごの唄》153

【コラム・奥井登美子】戦時中の小学4年生の時、かわいがっていた犬を愛国婦人会のおばさんたちに連れていかれてしまってから、私はショックで、しばらく犬の顔が見られなかった(10月23日掲載)。 結婚して東京から土浦に住むようになり、舅(しゅうと)と姑(しゅうとめ)の介護に振り回された。国の介護制度が整っていなかった時代だったので、ご近所の人や医療関係の友達に助けていただいて、何とか家族の危機を乗り切ることができた。 それから何十年か経ち、介護の苦労もすっかり忘れたころ、孫が犬の赤ちゃんをもらって来て、ミミと名付けた。わが家のアイドル犬ミミは特別元気な犬で、庭の中を駆け回って昆虫を追いかけるのが大好きだった。力が強く、つながれた鎖を引きちぎってしまったこともある。 犬の自然な寿命はよく分からないが、15歳くらいらしい。赤ちゃんの時にもらわれてきたミミは、18歳で歩くことができなくなってしまった。 人間は歩けなくなってしまっても、言葉で意志を通じることができるので、介護の人が適切に動いてくれれば生活できる。しかし犬は困る。ワンワンという言葉しかしゃべらないから、歩けなくなったイラダチをどう表現するのかわからない。何を考え、何を望んでいるのか、飼い主にも見当がつかない。 歩けなくなってしまったミミ 歩けなくなった犬はどうしたらいいのだろうか…。 難しい問題である。私は犬の自然死を体験してみるのも、自分の死に方に参考になるのではないかと思った。人間も明治時代前は自然死に近かった。漢方医など医者はいたが、かかれない人も多く、薬の成分はほぼ天然由来の植物や鉱物ばかりだった。 ミミを日当たりのよいサンルームに移動し、鎖は金属で重いから、軽い布のひもに取り替えた。排泄物はどこでどうするのかわからない。サンルームにゴザを敷き、その上にオシッコでぬれても構わない色々な種類のカーペットを敷き、ミミがその日に自分の気にいった場所を選べるようにしてみた。 難しいのはドックフード。今はいろいろな種類のドックフードを売っている。何種類か買ってきて、別々の容器に入れて何を食べてくれるのか試してみた。スープと水と漢方薬もお湯で溶いて、何種類か置いてみた。 歩けなくなってしまったミミは、私の作った犬介護ベッドで108日間生きていた。最後の一週間は何も食べなくなり、私の胸に抱かれながら、静かに満足そうな顔をして息を引き取った。(随筆家、薬剤師)

隣国・中国を視察して《令和樂学ラボ》38

【コラム・川上美智子】水戸市は、中国 重慶と友好交流協定を25年前に結んでいる。重慶は、上海、北京、天津と並ぶ中国四つの直轄市の一つであり、面積も人口も世界最大で、3200万人超の人々が住んでいる。日本では、広島市と水戸市の2市が友好交流都市となっており、水戸市と重慶は定期的に相互の国を表敬訪問し友好関係を深めてきた。 10月15~19日、水戸市は、団長・髙橋靖市長、副団長・綿引健市議会副議長とする総勢33名の友好交流25周年記念親善訪問団を仕立て、5日間の視察を行ってきた。私自身は、8年前に次いで2回目の訪問であったが、その後の重慶の発展ぶりを見たいという強い思いで参加した。 現在、高市早苗首相の衆議院予算委員会の答弁が発端で、日中関係が目まぐるしく変化し、気になるところであるが、日本にとっては大切な隣国である。本視察は今後の日中関係を考える上でも、学びの多い有意義な5日間であった。 中国は、私の長年の研究対象<茶>の故郷であることから、30代のころより研究や学会発表などで訪問し、隣国の移り変わりを見てきたが、超高層ビルが林立する重慶に迎えられて、今回ほどその発展ぶりに驚かされたことはなかった。また、日本文化のルーツでもある中国の歴史文化のスケールの大きさに触れる貴重な機会にもなった。 訪問2日目の公式行事で、重慶市人民政府外事弁公室を表敬訪問した。訪問では、沔子敏(Feng Zimin)副主任と日本国駐重慶総領事館の高田真里総領事、横山理紗副領事がお出迎えくださり、歓迎レセプションが開かれた。 沔副主任は、団員一人ひとりとシャンパンで乾杯を交わされ、名刺交換の際には、子(Zi)という字が私の名前にも入っていることを見つけられ、同じだねと喜んでくださった。本当に丁寧にもてなされて、一同感激し、友好を深められたことを喜んだ。また、日本の外務省に所属する女性官僚2人が領事、副領事を務められ、国際社会の前線で活躍される姿に頼もしさを感じた。 両国友好こそが平和維持に不可欠 水陸の要所であり、一帯一路の中心に位置する重慶は、習近平が掲げる「中国を世界の工場にする」との方針のもと、世界的な工業都市として発展を続けてきた。私たちは重慶九州神鷹通航公司と重慶長安汽車工場を視察した。 重慶九州神鷹通航公司は、ドローンやヘリコプター、プライベート飛行機などの利用拡大のための施設で、機器の貸し出しや操縦指導などの支援を行っていた。広大な領土を有する中国ならではの空の利用促進を狙ったものとなっていた。 重慶長安汽車工場は、中国でBYDや吉利汽車、テスラ中国に次ぐ、販売台数シェア第4位の最先端の電気自動車工場である。ラインのロボットアームが金属板の切断、曲げ、溶接、塗装、組み立ての一連の作業を行い、タイヤをはめるのと最終チェックだけを人が関わっていた。その場で360度回転する車や、センサーを多用した車など、利便性の面では日本車より遥かに先端を行っていた。 中国には59のユネスコ世界遺産があるが、その一つ、大足石刻を訪れ、丘陵石窟に彫られた仏教、儒教、道教の1万体の石像も見学した。唐代から宋代まで500年間かけ造られた壮大な芸術群に驚かされた。今回の視察は、中国がもつ底力や未来への伸び代を理解する上で大変意義深いものであった。 今年、日中国交正常化53年目を迎えたが、両国間の友好こそが平和維持に不可欠であることは言うまでもない。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事株式会社アドバイザー)

「来年はもっとバージョンアップ」 関彰商事とハノイ工科大 スポンサー契約を更新

日本商工会議所が関心 関彰商事(本社 筑西市・つくば市、関正樹社長)つくば本社で28日、同社が包括連携協定を結ぶベトナム・ハノイ工科大学とのスポンサー契約更新の調印式が催された。関社長は「ハノイ工科大学とは10年の付き合いがあるが、来年はもっとバージョンアップいきたい。今回、日本商工会議所が関心をもってくれたことが成果。日本とベトナムの架け橋になれるようがんばっていきたい」と話した。 調印式には同大からヴー・ヴァン・イエム副学長ら3人が出席し、同社社員らがベトナムの国旗を持って一行を出迎えた。関社長は「壁は日本語、さらに多くの学生が日本企業で活躍できることと、この事業が持続していくことを期待している」と述べた。 同大からは、優秀な学生に奨学金を出し最終的に日本企業に貢献してもらうことや、高校生の交換留学を進めることなど二つの提案があった。 同社は2016年にハノイ市に事務所を開設し、ベトナムでの事業をスタートした。グループの人材派遣会社である「セキショウキャリアプラス」が、今年第12回目の合同企業説明会「セキショウ ジョブ フェア」をハノイ工科大学で開催。日系企業によるベトナム人大卒エンジニアなど高度外国人材採用や、ベトナム人求職者の就労をサポートしている。18年にはハノイ工科大学を支援するスポンサー契約を結び、継続している。 同大は1956年に設立されたベトナム初の技術系総合国立大学で、同国の理科系大学では最難関とされる。学生数は4万人以上を超え、1学年600人余りが日本語を学ぶ。11月2日と3日に同大で開催されたジョブフェアには2000人以上が参加している。日本では東京工業大学、慶応大学などが姉妹校となっている。 同社の寄付金により同大に建設中の日本とベトナムの文化交流施設「越日スペース」は、来年8月に完成が予定されている。施設は2階建てで、日本語学習や関連セミナー、文化交流などのイベントが開催されることになっている。(榎田智司)