第4回いばらきイノベーションアワード(同アワード実行委員会制定)の授賞式が8日、水戸市の茨城県庁で行われた。賞金100万円の大賞受賞のThermalytica(サーマリティカ、本社・つくば市桜、小沼和夫代表)と優秀賞受賞の3企業に大井川和彦知事から表彰状が手渡された。
同アワードは先端技術を活用した新製品や新サービスを対象に募集し、革新性や市場性を評価し顕彰する事業。茨城県が事務局となる。今回大賞に選ばれたのは、断熱材「TIISA(ティーサ)」を開発し、本格的な事業展開に乗り出したサーマリティカ社。物質・材料研究機構(つくば市)の研究成果をもとに、2021年起業したNIMS発ベンチャーだ。
「TIISA」は、エアロゲル(酸化シリコン)の一種で、特殊な微細構造により、軽量かつ液体のような流動性を持つ粒子として開発された。市販の断熱材よりも桁違いに高い断熱性と遮炎性(耐火性)を備えており、「超断熱素材」として売り出している。断熱塗料として利用できるので、建物の断熱性や工場の加熱設備の保温性を高めることで地域の省エネルギーに貢献できるという。
加えてマイナス253℃の極低温でも優れた断熱性能を発揮するため、極低温保冷断熱材として非常に高い優位性を持つ。また、液化水素の保冷材として利用すれば水素の気化損失を大幅に防ぎ、地域の水素利用の促進に貢献できるとしている。建設関係から自動車、家電など各方面から照会や提案を受けており、同社はこの春、新たな資金として1億1250万円を調達、素材の量産化と多用途対応に乗り出している。
この成果に大井川知事は「夏の暑さがこたえる昨今、塗るだけで断熱効果が期待できるという素材はインパクトある。急いでビジネスチャンスをつかんでいってほしい」とエールを送った。
小沼和夫代表は「断熱材は今役に立つ技術だが、一方で水素社会に向けた脱炭素をはじめとする環境関係から多くの引き合いをいただいて手ごたえを感じており、今回の表彰を励みにしていきたい」と語った。(相澤冬樹)
◆このほか、優秀賞の3社は次の通り。(県外本社企業も県内に研究拠点などを有している)
▽Octa Robotics(本社・埼玉県さいたま市、鍋嶌厚太CEO、前川幸士COO)自律移動型サービスロボットを、エレベーター・自動ドア等の設備と連携させるサービス「LCI」
▽クォンタムフラワーズ&フーズ(本社・水戸市、菊池伯夫代表)中性子線照射による突然変異の誘発を利用し、生物資源の開発改良を行うサービス
▽ピクシーダストテクノロジーズ(本社・東京都中央区、落合陽一代表、村上泰一郎代表)誰が何を話しているかをリアルタイムで可視化し、聴覚障がい者と聴者をつなぐサービス「VUEVO(ビューボ)」