定価の3倍以上も
11月4日に開催される第92回土浦全国花火競技大会の有料観覧席チケットが、インターネット上で高額転売されている。転売されているのはネット上のオークションサイトや不用品販売サイト、その他チケット専用の売買サービスサイトなどで、オークションサイトでは定価2万4000円の桟敷席に39件の入札があり、2.5倍の6万1000円で落札されたケースもあった。
28日時点でも、C席のイス2席で定価6000円のチケットが3.8倍の2万3000円、B席のイス2席で定価8000円が1.8倍の1万4500円など、定価より高額での販売が確認されている。SNS上でやりとりし、売り買いするケースもあり、主催者の大会実行委員会事務局が重ねて注意喚起している。
一般の有料観覧席は事前申し込みによる抽選販売で、申し込み期間は9月1日から30日までだった。当選結果は10月4日に発表され、チケットの配送は10月中旬から順次郵送で行われている。
県外に住む友人と抽選の申し込みをした牛久市の女性は「5人で見ようと、それぞれイス席2席と3席を2人で申し込んだが、自分だけ当選して友人ははずれてしまった。3人分が足らず、再販売はないかとインターネットで検索したら、定価をはるかに超える高額なチケットが出てきて驚いた」と困惑する。
大会実行委員会事務局の土浦市商工観光課は「抽選に漏れた皆さんが(高額転売を)残念に思われることは、もちろん主催者としても大変残念に感じている」とし、「本大会は、国内最高峰の競技花火の大会であるという自負があり、本当に花火を見たい方にチケットを購入していただきたいという思いから、利益を得ることを目的に購入される方には強い憤りを感じている」と吐露する。
人気の入場券や観覧券などのチケット類を転売目的で購入し、法外な値段で売るいわゆる「ダフ屋」行為は法律で禁止されている。2019年6月から「チケット不正転売禁止法」が施行された。
さくらパートナーズ法律事務所(土浦市文京町)の中島隆一弁護士は、転売されているチケットが同法で定義されている「特定興行入場券」に該当し、他の要件も満たせば、規制の対象になり得ると指摘する。中島弁護士は「20年8月には人気アイドルグループのコンサートチケットを不正に転売した者に対し、裁判所が、懲役1年6カ月(執行猶予3年)、罰金30万円等の有罪判決を下した事例もある。法も内容を変えながら進化していくものであり、以前大丈夫だったから今回も大丈夫、という安易な考えを持つべきではない。チケット本来の目的に沿って、本当に必要な人にチケットを利用してもらうことが主催者の願いであり、その願いに思いを巡らす必要がある」と警告する。
大会実行委員会では、高額転売が確認された場合、販売サイトに連絡し掲載の削除依頼を行っている。また、チケット購入時の注意事項やチケットへの注意書きに転売禁止を記載し、チケット購入者に対して注意事項文を送付、ホームページでも転売禁止文を掲載するなど、重ねての注意喚起を行っているが、高額転売がなくならないのが実情だ。
市商工観光課は、チケットの高額転売は、全国の花火大会で長年の懸案事項であり、解決策を模索しているという。転売できないようにするため、顔認証システムや電子チケットなども検討しているが、いずれも様々な課題があり導入には至っていない。今後、チケット会社や他の花火大会と連携し、有効な手立てを研究していくとしている。
同大会の一般桟敷席は1人1マスまで、イス席は1人4席までの申し込みとなっており、桟敷席とイス席を両方申し込むことはできない。また、チケット当選後のキャンセルはできない。チケットの金額は、4人桟敷席が2万4000円、2人桟敷席が1万2000円、イス席はA席が1席5000円、B席が1席4000円、C席が1席3000円となっている。(田中めぐみ)