【コラム・片山秀策】今回は、秋になると里山で目立ち始める野鳥、モズについて紹介します。モズは、スズメとムクドリの中間の大きさで、里山だけでなく市街地でも見られる鳥です。漢字で「百舌鳥」と書くように、ウグイスなど他の鳥の鳴きまねが得意です。
関東では1年中いるのですが、秋から春にかけて鳴き声を出したり、子育てをするなど活発に動き回るので目立ちます。童謡「モズが枯れ木で」で歌われるように、木や電柱の天辺(てっぺん)で「キチキチキチ」や「キーィ」と鳴き声をあげる「高鳴(たかな)き」を始めると、秋が到来します。
モズの高鳴きはエサが少なくなる冬の訪れに向けての縄張り宣言で、縄張りが見通すことのできる高い場所で鳴くのです。縄張りに入ってきた別のモズを見ると、雌雄に関係なく追い払い、時には激しくつかみ合いになることもあります。
「モズの高鳴き七十五日」ということわざがあって、高鳴きを初めて75日目に初霜が降るということで、農作業の目安にしている地域もあります。
モズの貯蔵食のハヤニエ
モズのエサは主に昆虫やカエルなどの小動物ですが、ネズミや小鳥など自分の体と同じくらいの大きさの動物を狩ることがあるので、「小鳥の猛禽(もうきん)」と呼ばれることもあります。猛禽は脚で獲物を捕まえますが、モズはクチバシで獲物をくわえて捕まえます。
狩った獲物はすぐに食べるだけでなく、木の枝や棘(とげ)に刺して冬の間の保存食にする「早贄(ハヤニエ)」を作ります。ハヤニエは他の野鳥では見られない行動です。注意して見ていると、イナゴ、カエル、ネズミ、トカゲなどが刺さっているのを見ることができます。ザリガニやカタツムリのハヤニエを見たことがあります。
モズは里山で冬を越す野鳥の中で一番早く、2月初旬ごろから繁殖を開始します。そのころは、オスがエサを持ってメスにプロポーズします。メスが雛(ひな)のように羽を震わせてエサをねだると、結婚成立になります。低木や竹林に巣を作り子育てして、4月ごろに巣立ちヒナが見られるようになります。(宍塚の自然と歴史の会 会員)