「悩んでいる人の力になりたい」「『普通じゃない』をなくしたい」ー高校生ら42人が、身の回りの社会課題に向き合い、解決方法を提案する課題解決チャレンジ事業の発表会が9日、土浦市大和町の県県南生涯学習センターで開催された。
課題解決に向け「悩んでいる高校生にスクールカウンセラーを身近に感じてもらう」「LGBTQ(性的少数者)やSOGI(性自認)について理解を深めてもらう」などの提案が出され、解決方法の一つとして啓発ポスターの図案や動画などを披露した。今後、実際にポスターを印刷したり、動画を投稿するなどして社会に働き掛ける計画だ。
同センターが昨年8月から開催してきた「ユースチャレンジプロジェクト」(22年11月2日付)で、土浦三高、石岡商業、取手一高など県南地域8校の高校生38人と、筑波大生4人の計42人が3つのチームに分かれ、課題ごとに話し合ったり、現地調査やアンケートなどを実施してきた。大手広告代理店、博報堂出身の入沢弘子さんがアドバイザーを務め、これまで計21回、40時間以上のワークショップを重ねてきた。
まず身の回りの社会課題を出し合い、63の課題の中から3つに絞って、課題ごとにチームをつくり、それぞれ課題解決方法を模索した。
「悩んでいる人の力になりたい」をテーマにしたチームは、高校のスクールカウンセラーに着目。まず現状を調べるため、メンバーの高校生4人が通う4校でアンケート調査を実施した。864人の回答者のうち、悩みを相談する相手は1位が友人、2位が家族、3位が先生で、カウンセラーに相談する人は5番目の6.8%しかいない実情を把握した。カウンセラーに相談しないのは、カウンセラー側に問題があるのではないかと考え、各校ともカウンセラーを利用できる時間が週に数時間しかないことを調べたり、カウンセラー本人にインタビューするなどした。その上で利用生徒を増やすために、ポスター制作を発案し図案を発表した。ポスターには「一人で悩まず、どんな話でもいいので相談してほしい」などカウンセラーのコメントを掲載してある。今後はポスターを印刷し各高校や駅などに掲示する計画だ。
「『普通じゃない』をなくしたい」をテーマにしたチームは、LGBTQやSOGIについて理解を深めてもらう啓発ポスターの図案を制作し発表した。ポスターに掲載されているQRコードを読み込むと、さまざまな性の在り方についての解説や、学校の男女別の制服をテーマに「普通とは何か」を問い直す短編漫画を読むことができる。
ほかに障害者や高齢者、ベビーカー利用者など移動弱者が優先的にエレベーターに乗れるよう、壁面だけでなくエレベーター前の床面にも優先列を示すステッカーを掲示する提案が出された。さらに「茨城県の魅力度を上げたい」をテーマにしたチームは、土浦市のコミュニティーバスに着目し、土浦の魅力を伝えるバスを使ったプチ旅行を提案する動画を作成した。
発表会には、参加した生徒が通う高校の教員や、生徒らが現地調査した事業者らが参加し、高校生らの発表に聞き入った。発表内容は今後、同センターのホームページに掲載する予定だという。
「『普通じゃない』をなくしたい」というテーマのチームに参加した高校2年生は「(社会課題を出し合う中で)自分が思っていた以上に、他の人たちの悩みが分かった。今後(啓発ポスターの掲示を通して)LGBTQやSOGIについて普通に話せるようにもっていければ」とし、土浦の魅力を伝えるプチバス旅を提案をした高校3年の女子生徒は「学業との両立が大変だったがいい経験になった。今後、動画を広めて、バスに乗ってくれる人が増えてくれれば」と話していた。(鈴木宏子)