筑波山でこの夏、まるで紅葉のように赤茶けた樹木が目立つようになり、麓から中腹にあるコナラなどが集団で枯れている。南側の宝篋山でも枯れた樹木を確認することが出来る。筑波山などで活動する市民団体「つくばネイチャークラブ」代表で環境カウンセラーの田中ひとみさんによると「ナラ枯れ」だという。
何本がナラ枯れで枯死したかは不明だ。赤茶けて見える箇所がすべてナラ枯れの被害を受けた樹木かどうかも現時点で分からない。一方、幹が太く、樹齢を重ねた樹木が被害を受けやすいとされており、枯死した樹木は早期に対策を取らないと、翌年以降さらに被害が広がるとされる。筑波山はこれから紅葉シーズンを迎えることから、景観や観光への影響を心配する声もある。

ナラ枯れは、ナラ類、シイ・カシ類などの樹木が集団で枯れてしまう病気で、全国的に大きな問題になっている。梅雨明け後の7月中旬から8月に発生するとされ、森林病害虫のカシノナガキクイムシ(通称:カシナガ)が引き起こす。カシナガが媒介する病原菌、ナラ菌の作用により、7~8月頃に急速に葉の色が赤褐色に変色し、枯死する。カシナガは、生きている木の幹に直径1.5~2.0ミリの丸い穴をあけて食い入る。その穴からは粉のように細かい木くずが排出され、幹の根元にたまる。1匹で数百個の卵を生むとされ、被害はあっという間に拡大する。
初確認は昨年 筑波山系
県内では2020年につくば市内で確認されたのが最初で、今年5月時点で県内44市町村中31市町村で確認されている。県林業技術センターによると、筑波山系では昨年、朝日トンネル付近で確認されたのが最初という。今年になって急速に筑波山や宝篋山まで広がったかどうかは不明だ。高温少雨の年は被害が多いともいわれる。
つくば市によると、筑波山麓の同市臼井、筑波ふれあいの里で今年、ナラ枯れが確認された。市は32本を伐採し、薬剤によるくん蒸処理を実施した。

筑波山は水郷筑波国定公園になっており、国有地や私有地などさまざま。市は市有地について、今後ナラ枯れを調査し、今後の対策を検討したいとする。
県林業課はホームページで、ナラ枯れの被害木を放置したり伐倒したままにすると、カシナガが増殖し分散して被害が拡大する恐れがあるため、伐倒後は焼却または薬剤によるくん蒸処理が必要だと呼び掛けている。さらにナラ枯れが発生した森林では、猛毒のキノコ、カエンタケが発生することがあり、誤って食べてしまうと死亡する危険や、触れるだけでも皮膚の炎症をおこすので注意が必要だとしている。
田中代表は「地球温暖化にも間接的な原因がある。冬に死ぬはずのカシナガが越冬してしまい繁殖してしまう。筑波山では標高の低い所で顕著であり、管理されずに放置され大きくなった老木に被害が進んでいる」と話す。(榎田智司)
◆ナラ枯れの過去記事は以下の通り
➡ナラ枯れの脅威! 被害対策奮戦記(上)《宍塚の里山》79(21年7月27日付)
➡ナラ枯れの脅威! 被害対応奮戦記(下)《宍塚の里山》80(21年8月28日付)
➡先月「ナラ枯れ」調査を行いました 《宍塚の里山》88(22年4月23日付)
➡ナラ枯れ対策 子どもたちの活躍《宍塚の里山》97(23年1月28日付)