【コラム・奥井登美子】気温が、体温と同じくらいになるなどということは、今までの日本で考えられなかった現象である。コンクリート道路の上などは40度C近くになってしまう。
こうなると自分で自分の体温が維持できない人たちが増えてくる。
今までにない身体現象だから、あいまいに、おおまかに、春は「花粉症」、夏は「熱中症」と呼んでいるが、呼吸、皮膚炎、頭痛、咽喉炎、生理痛などが体温の変化と複雑に絡み合ってしまっている。
こういう時代が来ることは、医療関係者も予想していなかったにちがいない。
平凡に解熱鎮痛剤を処方する医者。抗アレルギー薬を入れて処方する医者。熱があるからといって抗生物質を処方する医者。先生たちも気温と体温の、からみあいのめちゃめちゃに頭を悩ましているに違いがいない。
えっ、ドクダミって薬草なの?
暑すぎるので雑草たちも元気がない。その中で、なぜか根茎で増えるヤブガラシとドクダミだけは元気過ぎるほど元気で、我が家の庭も草抜きが大変だ。
子供たちにドクダミの花を見せてあげる。
「ほら、ドクダミの花、可愛いでしょ」
「おかしな匂いがするね」
「嗅いでごらんなさい。薬草の匂い」
「えっ、薬草なの? ドクダミは毒草だと思っていた」
「冗談じあない。十薬といって10の効果のある薬草の中の王様なのよ。昔は家で採ったドクダミを、きれいに洗って軒下にぶら下げて、干してある家もあったわよ」
昔の子供たちはごく自然に、ドクダミは身近にある家庭用薬草ということを知っていたのに、今の子供たちは全然知らない。
「毒ではないのに、何で毒ダミなんていう名前なの?」
さあ困った。何でドクダミなどという名をつけたのだろう。「牧野富太郎先生、教えて下さい」(随筆家、薬剤師)