【コラム・山口京子】「自分らしく生きる」というフレーズをよく見かけます。そんなとき、「自分とはなんだろう?」とわからなくなります。「自分らしく生きる」とは、他人の評価を気にしないで、自分の価値観を大事にして、自分の気持ちに正直に生きることを意味するようです。
では、自分が持つ価値観はどんなものなのか、自分の気持ちに向き合ってどんな気持ちが表れるのか…。自分が持つ価値観はどういう価値観か。それはどうやって形成されたものか。時代や社会、家族の影響が少なくないでしょう。今の自分の気持ちに向き合うとき、思うのはケンカはしたくないということです。
ケンカって、しようと思ってするのではなく、相手がいて、相手と合意がつかなくなって、聞き苦しい言葉があったりすると、手や足が出てしまう。物心ついたころから、父親が母親を殴ったり蹴ったりする光景を見てきました。酒が入ると一方的に殴りつける父親。しらふのときは借りてきた猫のような父に、殴ったことをまくしたて非難する母。その繰り返しが何十年も続きました。
子どものころ、妹とケンカして、泣かせてしまった記憶があります。結婚してからは夫とケンカになったり、子どもとケンカしたり大人気ない自分です。自分の至らなさと配慮のなさを自覚しないまま、自分が言っていることは正しいと一方的に主張していました。
自分も相手のこともきちんと知る
自分が正しいと思っていても、それは自分のご都合主義でしかなかったかもしれません。また、正しいと思っていたとして、それを相手に伝わる言葉で相手が納得できる裏付けをもって説明できたのか。相手の言い分をどれだけきちんと聞き取れたのか、感情的に反応しなかったか。…出来ていなかった。
それが出来るには時間がかかります。とても難しいと感じています。でも、穏やかに暮らしたいので、穏やかな人間関係を持ちたいのです。
自分のことも相手のこともきちんと知ろうとすること。自分の主張と相手の主張を踏まえて、時間軸も意識しながら合意を見つけること。時には、距離を置いてみること。事柄によっては、ほどほどで落ち着くようにすること。
「自分らしく生きる」というけれど、自分に執着しないほうが幸せに暮らせる気がします。最近は対面でのセミナーに呼ばれることが増えました。テーマについての自分の思いを相手に伝わる言葉で話すことの大切さを痛感しています。さまざまなテーマをいただいて、レジュメを作ることが楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまいます。(消費生活アドバイザー)