県内在住の武蔵野美術大学卒業生らによる美術展「武蔵野美術大学校友会茨城支部展」が4日、県つくば美術館(同市吾妻)で開幕した。20回目を迎えた今年は、30人の作家が絵画や手芸など103作品を展示している。
沼尻正芳さん(73)は、卒業生らが集まる校友会の茨城支部を25年前に立ち上げた。当初3年ほどは展覧会を開くことができなかったが、仲間が集まり、夢だった支部展を2002年につくば市二の宮のスタジオ‘S(関彰商事つくば本社1階)で初めて開催した。以来、スタジオ‘Sから市民ギャラリー(つくば市吾妻)、県つくば美術館へと場所を移し、コロナ禍で中止した2020年を除き、毎年開催している。
沼尻さんは冬の筑波山を描いた80号の油彩画「雪景色」など8点の作品を展示する。武蔵美大工業デザイン学科でテキスタイルデザインを専攻。学生の頃から油彩画が好きで描き続けている。秋の筑波山を描いた「収穫の頃」は5年前から描き始めたモチーフで、同じ構図で描くのはこれが3枚目になる。1枚目は売れ、2枚目は校長を務めていたつくばみらい市立伊奈東中学校に寄贈した。「筑波山はみんなが日々見ているものなので、適当に描けない」と話す。筑波山の木々の緑のグラデーションや、山に落ちる雲の影など、色を丁寧に重ねて描き上げる。
NEWSつくばコラムニストでもある川浪せつ子さん(67)は、沼尻さんと同じ工業デザイン学科テキスタイルデザイン専攻出身。10年前から描きためた160枚のイラスト「おいしい時間」と小品5点を展示する。「おいしい時間」はNEWSつくばのコラムにも掲載しているもので、県南地域の飲食店のメニューを水性顔料のサインペンで描き、透明水彩で鮮やかに着色した作品。絵に描くメニューはあらかじめ決めてからお店に向かうという。「毎回新しい描き方を試している。色が濁らないように気を付けて描いている」と話す。
冨澤和男さんは、武蔵美大通信課程の修了生で、卒業制作だった100号の作品「大地の恵み—冬―」や、つくば市手代木の風景を描いた「ユリノキ並木の大通り」など8点を展示する。「ユリノキ並木の大通り」は元々通勤路で、前から絵にしたいと考えており、去年の秋に描いた。冨澤さんのモチーフは野菜や果物、風景、動物が主だが、今回は人物画にも挑戦し、女性を描いた「黄色い衣装のひと」を展示する。「和綴(わとじ)製本」も制作。5種類の綴じ方で作った本7冊を展示している。
開幕初日は、来場した女性が作品の前で足を止め、作家らに画材や描き方について熱心に尋ねる姿が見られた。沼尻さんは「中央公園を散歩がてらふらっと入ってほしい。無料なので、アートに興味のない方にも見てもらえたら」と来場を呼び掛ける。(田中めぐみ)
◆「武蔵野美術大学校友会茨城支部展」は9日(日)まで。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。期間中の8日(土)午後1~3時は、野澤寿子さんによるワークショップ「SDGsなタッセル作り」が開かれ、古布や織物の残り糸を有効活用し、糸などを束ねた房飾り「タッセル」作りが体験できる。ワークショップは定員20人、参加費無料。参加申し込みはmsb.ibaraki@gmail.comへ。