筑波山南麓のつくば市神郡、細草川沿いや周辺では6月下旬、ゲンジボタルとヘイケボタルが同時に飛び交う姿が見られる。5月下旬からはゲンジボタル、6月半ばからはヘイケボタルが加わり、6月下旬には30匹ほどが乱舞する姿が見られた。
ルールを守った観賞を
今の時期、筑波山麓でホタルが見られるのはつくば市神郡、臼井、沼田、国松などの沢沿い。NPOつくば環境フォーラム(つくば市要、永谷真一代表)理事の大塚太郎さん(53)によると「6月中旬は、ゲンジボタルとヘイケボタルが交差する時期、農薬を使わない水田にはヘイケボタル、きれいな沢にはゲンジボタルが見られる。7月に入るとヘイケボタルが主流になる」と説明する。
細草川周辺は、筑波山や里山の環境保全に取り組む同フォーラムや、知的障害者と共同生活をしながら有機農業に取り組むNPO自然生クラブ(つくば市臼井、柳瀬幸子代表)らが農薬を使わずコメ作りをしている。筑波山本体の南部に位置しており、民家がなく、谷津田が広がり街灯もないなどの昔ながらの自然が残されており、ホタルが生息しやすい環境となっている。15年前ぐらいから、同フォーラムの「すそみの森」など、農薬を使わない米作りが広がってからホタルの数が増えていった。
コロナ前は6月に入ると、地元の小学校の児童やボーイスカウト、環境団体などがホタル観賞に訪れていた。地域の元PTA役員が中心となって出来た「田井エンジョイクラブ」が地域の子供たちを集めて、10年以上ホタル観賞会を続けてきた(2019年6月16日付)が、コロナ禍で途絶え、2020年以降は団体でのホタル狩りは少なくなった。行動制限がなくなった今年は家族や友人同士で訪れている姿が見られる。
六所地区にある「ホタルの里」の石碑は、2008年頃近くの工事をしていた建設業者がホタルがたくさんいることに感動、地域への感謝の気持ちをこめて寄付したものだそう。
23日、つくば市谷田部から訪れた男性(48)は「昨年知人から教えられ、この地区でホタルを観賞するようになった。市内にも豊かな自然が残されている場所があるのは感動でした。環境を守り、いつまでもホタルが見られるようにしていきたい」と述べた。
六所地区の元区長でホタルパトロールなどを提唱していた森田源美さん(87)は「ホタルを見に来る人は歓迎したい。六所地区には六所大仏の前に市営駐車場があるので、そこから歩いて私有地などには入らずに、ルールを守った観賞会を実施して欲しい」と語る。
大塚さんは「ホタルに興味を持ち自然とふれあうことは良いことだが、ルールを守らない観賞者もいる。ホタルを持ち帰ったり、狭い道の中まで車が入ってきて、車のライトでホタルの『こんかつ』を邪魔したり、貴重な水生動物をネットオークションで売ったりする人もいる。『すそみの田んぼとその周辺の森』という環境フォーラムの活動拠点には絶対に無断で入らないで欲しい」と訴える。
「すそみの田んぼ」(環境省のページ)は生物多様性保全上重要な里地里山に選定されている。(榎田智司)