突然、我が子が学校に行かなくなった。どうしよう―。子の不登校に、悩む親は少なくない。親子、夫婦の考えの違いが、時に、家族にきしみを生む。当事者である親たちの声に耳を傾けた。
親は困惑
「もう、学校には行きたくないんだ」。
3年前の9月。つくば市の中村昌人さん(44)、規乃さん(48)夫妻は、目の前で泣きじゃくる中1の長男(15)の訴えを戸惑いながら聞いていた。2週間前から学校で毎日のように体調不良で早退していた。少し様子がおかしいと思っていた。
行きたくない理由に、友人とのトラブルを挙げた。
「まさか、うちの子が不登校?」。信じられない思いだった。悪ふざけもするけど、明るい性格で誰とでも仲良くできるタイプだったはず。これまでも時々、行きたがらない日もあったが、休ませると、数日後には、自然に学校へと足が向いていた。
学校側にトラブルの内容は伝えたが、友人への指導は求めなかった。再び登校したとき、トラブルを引きずってほしくなかったからだ。
「そっとしておけば、学校へ足が向くだろう」。登校しないことに罪悪感を感じているかもしれない。夫婦とも、登校や勉強を強制せず、長男の前で不登校の話題は口にしなかった。
すんなり受け入れたわけではない。秋が深まり、暮れになっても、長男が登校する気配はない。昌人さんは出勤途中に制服姿の同級生を見かける時に胸が痛んだ。イライラも募った。「なぜ、我が子は学校に行かないのか」。苦しそうな昌人さんの姿を規乃さんはよく覚えている。
夕食を終えると、すぐに自室へ引き揚げる長男。夫婦でその背中を見送りながら、葛藤を胸にしまい込む日々だった。
中1の冬休み明け、中2の4月。新学期になれば、気持ちが変わるかもしれないと期待した。でも、長男は動かなかった。
学校以外で、居場所を見つけてほしい―。規乃さんはそう思い、中1の1月からフリースクールに通わせ始めた。だが、体調不良を訴え、1、2カ月で足が遠のき、毎日は通えず週2回ぐらいがやっと。費用もばかにならない。規乃さんはいらだちが募ってきた。3人で話し合い、結局、4カ月足らずでやめさせた。「子どもの気持ちを考えず、居場所を見つけなければと焦りすぎていた」。規乃さんは振り返る。家にずっといると、長男が気になる。なるべく用事を見つけて出かけ、自分の時間を持つように心がけていた。(鹿野幹男)
続く