【コラム・浅井和幸】キャッチフレーズとは、時に人が悲しみから抜け出すきっかけになり、時に勇気をもって立ち向かうようになる素晴らしいものです。
・夢は必ずかなう
・人間生きているだけでもうけもの
・明けない夜はない
・親が変われば子が変わる
これらは前を向くときに、説得力のある大きな力になります。少ない文字数で端的に表せる素晴らしいものですね。しかし、「端的に表せる」表現は危険をはらんでいます。時に、一方的に決めつけて責め立てる言葉となることもあるので、注意が必要です。
例えば、優勝を逃した選手に向かって「大丈夫、夢は必ずかなうよ」と言えるでしょうか? 大切な人が交通事故で重体となり、虫の息のときに「人間生きているだけで儲けもの」と声をかけられますか?
苦しみのさなか、泣き叫んでいる状況で、そのようなキラキラした言葉をかけることはマイナスになることはあっても、決してプラスにはなりません。端的に言い切る言葉は、時と場合、その人との関係性で、言って良いか悪いか決まってきます。
自分が良いと思う言葉だからといって、いつも良い言葉として受け取られないことは肝に銘じておくべきです。また、キャッチフレーズに縛られて、その言葉が示すことは逆の言動をしてしまうこともあります。
「8050問題」というキャッチフレーズ
人に共感をすることが大切だと伝えたいがために、共感が出来ない相手を責め立てる。「あなたは共感力が足りない。なんで人に共感できないのだ」と。相手がいかに共感できずに周りを傷つけているかを説教して、ケンカになったり、相手を悲しませたりする場面はまあまあ見られます。
このとき、共感が苦手な人の気持ちに共感を出来ずに、共感を押し付けている状況で、自分自身が相手に共感する気持ちから離れていることに気づきにくいものです。
ちなみに、ひきこもり問題で「8050問題」というキャッチフレーズがあります。親が80歳で、ひきこもった子どもが50歳。親の年金だけの収入で苦しい生活を送っているという問題を世間に広く伝え、しかも若者だけの問題ではないのだと認識してもらうためには、とてもよいものだと考えます。
しかし、80歳と50歳。人口が多い団塊の世代と団塊ジュニアがその世代になってくると考えると…。止めておきましょう。ひきこもり問題が若者だけの問題ではなく、中高年、高齢者も含む問題には変わりないのですから。
キャッチフレーズにとらわれずに、うまく使う方法を試行錯誤していけると、より人とのコミュニケーションや自分が成し遂げたいことに利用できるかもしれませんね。(精神保健福祉士)