行動制限のない夏、つくば市栗原の古民家で続く「邑(むら)マルシェ」が母から子へのバトンタッチを図りながら、古民家活用の新しいモデル構築に挑んでいる。6月10日には今年3回目のマルシェ開催も予定され、準備に余念がない。
マルシェが開かれるのは、県道土浦大曽根線沿いにある下村家の本宅「下邑家住宅」。代々の地主で、2軒の分家も長屋門を構えるなど、地域を代表する豪農だった。江戸時代後期に建てられたとされる住宅は約4200平方メートルの敷地に長屋門、3つの蔵、日本庭園、屋敷林などを構える。
マルシェには庭にキッチンカー、和洋菓子、カフェなど、屋敷内にマッサージ、ハンドメイド作品など、計23店舗が集まる。コロナ禍にもかかわらず毎回抽選で出店者を決定するほどの人気イベントになっている。
主催は、下村家の長女の郷晴美さん(61)が代表を務める邑マルシェ&ギャラリー。古民家を継承し、維持していくには負担が募ることから活用方策を模索し、6年前から月1回ペースでマルシェを開催するようになった。
昨年から晴美さんの長男である郷悠司さん(30)が7代目当主となり、古民家の運営を引き継ぐ形で、レンタルスペースとしての活用を始めた。さらに長女の郷瑞季さん(25)も加わり、イベント全体(マルシェ)を仕切ることになる。年4回の開催となったが、若い感覚でSNSなど、デザインなど変えてみるとすぐに効果が現れたという。
レンタルスペースとしては、ワーキングスペースよりも撮影会の利用が多く。古民家を使った動画「刀剣乱舞」(個人作品)などの撮影が行われたりした。NHK総合のテレビ番組「鶴瓶の家族で乾杯」で紹介され、6月17日放送のテレビ東京「出没!アド街ック天国」でも取り上げられる予定という。
悠司さんに話を聞くと、「一度実家を離れた時に、自分の生家の素晴らしさを改めて発見した。是非色々な人に見てもらいたいと思うようになった」そう。「自分の生家が稀有な古民家で、伝統的建築で作られたものであり、その価値を他の人にもわかってもらい、その思いをさらに広げていきたい」との思いが募る。
筑波大学などの調査ではつくば市内には現在、長屋門を持つ古民家が200以上あるとされる。しかし今風の居住スタイルには適さないこともあり、継承や維持には各戸とも頭を悩ませている。土蔵を改築するとなると約2000万円がかかるという。
悠司さんは「イベントなどを通じて知り合った人にファンになってもらい、クラウドファンディングなどの方法を用い資金を集めていきたい」と語る。(榎田智司)
◆邑マルシェ 6月10日(土)午前10時〜午後3時 下邑家住宅(つくば市栗原3470)連絡先電話080-5380-9321(郷悠司)ホームページはこちら