バラやチドリソウの花々が見頃を迎える5月、ガーデニング愛好家が自宅の庭を公開するチャリティーイベント「つくばオープンガーデン2023」が20日と21日に開かれる。今年で22回目を迎えるイベントには、つくば市の11軒をはじめ、土浦、牛久、つくばみらい、常総、美浦など8市町村から22軒が参加する。期間中に集められた協力金や、苗や手作り品の売り上げは、例年通り、福島震災復興義援金として寄付する。
「立体的な庭になるよう工夫しました」と話すのは、つくば市春日の田澤貴子さん(58)。小ぶりで赤い「紅玉」というバラで作ったアーチが心地よい日陰を庭に作っている。隣に咲くベルフィニュームの鮮やかな青色も庭のアクセント。田澤さんがイベントに参加するのは今年が初めて。昨年、公開された園庭を訪ねた際に、主催者から声かけられたのがきっかけになった。一年前から丁寧に手を入れて準備を進めてきた。「優しい庭にしたいと思って手を入れてきました。見ていただけることで私自身の励みにもなります。皆さんに楽しんでいただければ嬉しいです」と明るく話す。
つくば市作谷の木村久美さん(65)も、初めてイベントに参加する。大谷石であしらった手製の花壇には白やピンクのバラ、赤く色づくハマナスの花などが、入り口付近にはカルフォルニアポピーやアグロステンマが鮮やかに咲き誇っている。「この地域は自然が豊かで静かなところ。庭も自然の景観を意識しました。風を感じたり、鳥の声を聞いたりしながら皆さんと交流できれば」と来場を呼びかける。
オープンガーデンの起源は20世紀初頭のイギリスで、看護師の育成と引退後の生活支援への寄付を募ったのが始まりだとされている。つくばでは2002年に、同市松代の田中公子さんがバラ好きの仲間らと3人で始めた。年々、愛好家の輪が広がり、来場者は昨年1000人を超えるまでになった。
つくば版「イエローブック」も作成
昨年からは「より多くの人にも楽しんでもらいたい」と田中さんの息子さんたちが中心になり事務局を開設、ウェブ制作など普段の仕事を生かし、メディア対応やSNSでの告知などを通じて活動をバックアップしている。
「20年間、活動を間近で見てきた」という長男の田中裕之さん(32)は「ガーデニング愛好家のみなさんは、素敵な空間で過ごしたいという気持ちで、個人で頑張っていた。それを公開してみると、共通の趣味を持つ人同士の出会いが生まれた」と言い、「庭園の愛好家同士が繋がる楽しさと、チャリティーとしての社会貢献。市民の中に気持ちのいい循環が生まれているんだと思います」と話す。
今年は、活動を後押しする試みとして、本場イギリスで発行されているオープンガーデンに参加する園庭の場所と公開日時を記した「イエローブック」のつくば版を作成した。「初めての試みですが、黄色い本を持っていたら『今年もオープンガーデンの季節だな』って思ってもらえたら素敵ですよね」と、今後の広がりに期待を込める。
「これまでに庭づくりを楽しんできたシニア層だけでなく、ガーデニングを始めたばかりの方やこれから始めようと思っている方には、是非、気軽に話を聞きにきていただければと思います。みなさん庭が好きなので、『それはこうやるといいですよ』など、いろいろアドバイスもあると思います。ガーデニングに関心を持つきっかけしていただければうれしい」
参加する園庭には、外からわかるところに大きい黄色いリボンが設置され、目印になっている。訪ねたイエローブックは一冊500円。当日、田中邸か篠原邸で購入できる。インスタグラムやTwitterのメッセージから取り置きの予約も可能。
20日には、つくば市松代の松代公園内と篠原昭子さんの庭で、ガーデンマーケット「ハンドメードと蚤の市」を開催し、篠原さんら作家による手製のカゴや小物、アクセサリーなどを販売する。売り上げの一部はチャリティーに寄付する。(柴田大輔)
◆時間、場所、予約方法などはつくばオープンガーデン2023のホームページへ。