コロナ禍で演奏会が開けず昨年、存続の危機に直面したクラシックギターの殿堂「ギター文化館」(石岡市柴間、池田由利子館長)が、全国のギターファンの支援を受けて再起に向け歩み始めた。
4日にはギターのフリーマーケット初開催
今年からは、コロナ前も開催してきた演奏会や貸しホール、音楽教室に加えて新たに、同館が所蔵する貴重なギターの館内貸し出し、演奏会の動画配信などに取り組み始めた。4日には出店者を募って、自宅に眠っている思い出の中古ギターやお宝ギターを販売してもらうフリーマーケットを初めて開催する。専属ギタリストを地域イベントに派遣する回数も増やし地域全体の音楽文化の振興にも力を入れる。
2020年から演奏会が相次いで中止となり、21年末、運営母体の東京労音(事務局・東京都新宿区)から、30周年を迎える22年11月以降は運営費の補助が難しいと通告を受けた。存続を賭け、昨年4月と5月、年間運営費の700万円を目標にクラウドファウンディングを実施した(22年5月2日付)。
全国各地のギターファンなど445人から計745万円が集まり、400人を超えるファンから「大切な施設」「存続させてほしい」などのメッセージが寄せられた。池田館長(62)は「こんなにも愛されていることを改めて感じ、感銘を受け、運営する東京労音が、何とか維持し運営を続ける方向にかじを切ってくれた」と振り返る。
昨年6月からは、中小企業の無料経営相談所「県よろず支援拠点」(水戸市)で10回近くオンラインで相談に乗ってもらいながら、昨年末、経営改善企画書を練り上げ、新規事業を一つずつスタートさせている。
感染防止の行動制限が大幅に緩和された今年度は、館主催の公演を復活させ、新たに石岡駅から往復の送迎バスを運行する。貸しホールのイベントはコロナ前より増える見通しで、8月には首都圏のギター愛好者団体が、石岡市内に宿泊しながら1日中、同館でギターの練習をする2泊3日のギター合宿を開催したり、9月開催の館主催のギターコンクールの翌日、過去の優勝者らが自ら出演料を払って演奏するなどのイベントが企画されている。
池田館長は「危機を知ったファンが、ギター文化館に少しでもお金を落とそうと応援してくれているのだと思う」と感謝の意を現す。
経費節減にも取り組む。これまで開館時間はいつでもホールや所蔵ギターの見学ができ、常時、全館で冷暖房を使用していたが、館内を見学できる日を制限し、光熱費を節約する。
一方、新規事業を加えても年間運営費の700万円の収入には届かないことから、来年度以降もさらに、中古ギターのシェアリングサービスや受託販売、周囲の景観も含めた音楽イベント以外の結婚式や芝居、撮影などでの施設貸し出し、所蔵するアナログレコードや楽譜などの活用にも取り組む計画だ。
池田館長は「ギターの聖地というイメージを大切にしながらさらに魅力あふれるブランドを構築し音楽文化の発信地を目指したい」と意気込みを語る。
同館は1992年、八郷地区の自然豊かな小高い丘の上に開館した。スペインのフラメンコギターの巨匠、マヌエル・カーノが収集した貴重なギター18本を収蔵し、ギターを響かせるために特別に設計されたドーム型のホールがある。
◆ギター文化館(石岡市柴間431-35)第1回ギターのフリーマーケットは4日(木・祝)午前10時~午後3時。7組が出店し30本以上のギターなどが展示・販売される。入館料500円(税込み)。詳しくは同館ホームページ。問い合わせは電話0299-46-2457(同館)。