駐日ウクライナ大使のセルギー・コルスンスキー氏が24日、筑波大学(つくば市天王台)を訪れ、日本人学生やウクライナからの避難学生、大学関係者ら約100人を前に講演したほか、ウクライナからの避難学生と懇談した。
同大は昨年4月にウクライナからの避難学生の受け入れを表明し、渡航費用や生活費を一部支給している。さらに学生宿舎の無償貸与、日本語学習プログラムの提供、カウンセリングの実施など、サポート体制を整えてきた。現在は、国立大学としては国内最多の42人を受け入れているなどから大使の訪問に至った。
講演では、ウクライナが誇る芸術のバレエや、卵の殻に花や鳥などを描き込んだ工芸品の「プィーサンキ」、郷土料理などを、スクリーンに写真を映しながら紹介し、ウクライナの歴史と、ロシアから侵攻を受け破壊された街並み、犠牲となった市民の姿に触れながら、戦争により傷ついた祖国の現状を訴えた。
大使はまた「侵攻後、最初に支援を表明したのが茨城県」であるとし「茨城とは特別な関係がある」との述べ、感謝の意を表した。今後の日本への期待として「日本の企業などとは戦後復興について、インフラ再建への投資など協力関係構築について協議をしている」とした上で、「難民の帰還への協力とともに、新しいウクライナを共につくっていくことを期待したい」と語った。
講演の後には避難学生との懇談会が開催され、大使から学生に「学生たちは、この大学で学ぶことができて、明るい未来があると私は思っています。しっかり学んでください。ウクライナはあなたたちを必要としています」とメッセージが送られた。
講演を取材した、同大の学生で筑波大学新聞の川上真生さん(19)は「ウクライナのことはこれまでテレビなどの報道で接してきたが、直接、話を聞いたことはなかった。講演を聞く中で、被害を伝える場面での声の強弱などによる感情の変化に接して、現状をよりリアルに感じられた」と話した。
茨城県は、ロシア侵攻が始まった翌日の昨年2月25日、県議会が「ロシアによるウクライナ侵攻に断固抗議する決議」を全会一致で可決。さらに全議員から募った義援金100万円を大使館に贈った経緯がある。また同年3月には、守谷、常総、坂東、つくばみらいの4市が連携し、ウクライナからの避難民受け入れを表明している。(柴田大輔)