【コラム・小泉裕司】「ただいま霞ケ浦湖畔で打ち上げているのは、花火師研修のための花火です」。3月11日(土)午後6時30分を少し回ったころ、花火画像とともに、このメッセージが土浦市の公式SNSに流れた。
コロナ禍、花火大会の中止が相次ぐ中、花火業界は直接的な打撃を受け、未来を担う人材育成にも赤信号がともり始めるなど、世界最高峰と言われる日本の花火技術の継承が危惧される状況にあった。そこで土浦全国花火競技大会実行委員会では、国の支援制度を活用、昨年、「花火技術後継者育成事業」を起ち上げた。
内容は、後継者育成プログラムに、「花火道」を志す全国32業者95人の花火師が参加、実績豊富な花火師による花火製造と打ち上げ技術のオンライン講習を8月から計5回開催。その成果として、参加者それぞれが製作した4号(直径約12センチ)菊型花火7発、同牡丹花火7発を順次打ち上げ、できばえを確かめたもの。
本日、「振り返り」研修をもって事業は完了。昨年にも増して花火大会の再開が予定される今年、経営危機は脱しつつあるようだが、今回の研修成果が、未来に向けて、持続可能な花火産業構築のきっかけになることを願う。
防波堤2カ所からの対打ち(同時打ち上げ)による間断無き連打1300発は、とても斬新な光景、まさに、初春を彩る「菊」と「牡丹」の品評会のごとし。作品の出来具合はピンキリだったが、これもまた一興。見上げ続けること45分、万年肩こりが、また悪化した。
三浦春馬さんをしのぶHEART花火2023
正真正銘の美青年。品のあるストイックさと才能あふれる輝きで、多くの人を魅了した三浦春馬さんの突然の訃報から今年で3年。今でも、春馬さんに思いを寄せる多くのファンが、生誕の地・土浦を訪れるという。
「HEART花火」プロジェクトは、こうした思いを共有する皆さんが、春馬さんをしのび、4月5日の誕生日を祝って、故郷土浦で花火を打ち上げるイベント。昨年に続き、第2回目の今年は、4月1日に土浦新港で開催する。
土浦市の花火マッチング事業がサポート役となり、山﨑煙火製造所(つくば市)が打ち上げを担当。かかる経費はクラウドファンディングで募集。300人を超える賛同者から寄せられた144万円の支援でまかなうという。春馬さんが土浦の花火に魅了され、故郷の誇りとして大切にされたことは「見上げてごらん!」4(2022年7月17日掲載)のとおり。
彼へのリスペクトを込めて、筆者も些少(さしょう)ながら、今回の募集に参加。当日午後6時、打ち上げに先立って行われるセレモニーで、土浦の花火や春馬さんへの思いを参加者に伝えしてほしいとのオファーが届いた。何時間あっても語り尽くせぬテーマを5分にまとめるなんて、至難の業。千思万考は、当日まで続く。
春真っ盛りの花火を見ながら、主催者の思いを共有しよう。「春馬さんへの思いを込めた花火が少しでも皆様の心を癒やし、さらには、大切な人に思いを巡らせ、平和を祈る…そんな機会にもなってほしい」。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)