火曜日, 10月 6, 2026
ホームコラムアーカイブ「遠藤周作『聖書』をゆく」 《遊民通信》60

アーカイブ「遠藤周作『聖書』をゆく」 《遊民通信》60

【コラム・田口哲郎】
前略

J:COM茨城で放送されている「泉秀樹の歴史を歩く」アーカイブの今月の番組は「遠藤周作『聖書』をゆく」です。以前書きましたが、泉さんは若いころ産経新聞の文芸担当をしていて、遠藤周作と知り合います。昭和41年(1966)のことで、遠藤は代表作『沈黙』を執筆した直後でした。遠藤周作はカトリック作家としての地位を確立し、ぐうたらシリーズ、狐狸庵先生シリーズなどのユーモア・エッセイで一世を風靡(ふうび)していました。

その後、泉氏はフリーのライターとなり、遠藤と親交をさらに深めます。そして昭和44年(1969)に、エルサレムへの遠藤周作の取材旅行に同行します。今月の番組「遠藤周作『聖書』をゆく」はこのエルサレム旅行の模様を中心にすえています。

きびしい神の沈黙とやさしい神の愛

エルサレムはキリスト教の始祖イエスが宗教家として成長し、最終的に十字架にかけられた場所です。聖書のクライマックスの舞台を遠藤周作はカトリック信者として、そしてカトリック作家として旅します。エルサレムは砂漠のなかにある都市です。まわりは荒地でとてもきびしい環境です。このきびしい世界こそが、イエスが生きたユダヤ社会の神、つまりユダヤ教の神ヤーウェのきびしさを生み出したのではないか、と遠藤は考えていました。

そのユダヤ教の改革者としてイエスは生き、そして保守的な人々と対立し、無実の罪で処刑されました。これはとても悲しい出来事です。イエスの弟子からしたら、師匠がみじめに処刑されたなんて、なんとも救いようがないことだったでしょう。しかし、イエスは不思議なことに復活して救い主になります。こうしてキリスト教が生まれました。

この沈黙と見えるみじめさのなかの希望は、なにもイエスの復活物語だけのことではないのです。歴史的なむごい出来事の前にも神は沈黙する。たとえば戦争が起きて、無数の悲劇が繰り返されて終わりません。それについて神は沈黙しているのではないか? 遠藤は神はなぜそんなことをするのか、と考えます。人間の罪を責めて、罰を与える神、きびしい神だけしかこの世にはないのか?

遠藤の答えは、神はきびしいだけではない、イエスは人類のために犠牲となった。それは人類への愛である。そして聖書に描かれるイエスは人間とともに一緒に歩む、やさしい神なのだ。神の沈黙は冷たく、人間を見はなしたように見える。でも、それは物事の一面でしかない。かなしみのなかに希望があるのではないか。神はイエスのように人間を愛している。それは愛であり、いつも人間に注がれている。そのようなイエスのようなやさしい神はたしかにいる。遠藤はこうした信仰を読者に伝えたかったのだと思います。

遠藤周作が亡くなって27年になります。遠藤の遺した作品を読んでみるのは意味があることでしょう。世界が混乱し、さわがしいいま、きびしい神の沈黙ではなく、やさしい神の愛を感じてゆきたいものです。ごきげんよう。

草々
(散歩好きの文明批評家)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最近のコメント

最新記事

霞ケ浦、水城に敗れ優勝ならず 秋季関東高校県大会

第79回秋季関東地区高校野球茨城県大会は4日、ひたちなか市民球場で決勝戦が行われ、霞ケ浦は水城に2―3で敗れ、11年ぶり5度目の優勝はならなかった。高橋祐二監督に代わってこの日も指揮をとった霞ケ浦の大高直人部長は「(水城のエースの)大川君の落差のある変化球に対応出来なかった」と敗因を語った。 水 城 010100100 3霞ケ浦 020000000 2 霞ケ浦は2回に失策で1点を先制されるが、その裏2死満塁のチャンスに鹿又煌翔が、先発の大川のストレートをレフトへタイムリーツーベースを放ち、2ー1と逆転する。「みんなが繋いでくれたので何としても打ちたかった。ヒットになって良かった」と鹿又。しかし水城は4回、内野ゴロの間に同点に追いつき、試合を振り出しに戻す。 霞ケ浦打線は4回以降、毎回走者を出すが、チャンスであと1本が出ずホームが遠のく。霞ケ浦先発投手の内山雷斗は、調子は悪いながらも徐々にスライダーの感覚が良くなり、6回まで粘り強く投げ、水城打線を抑えた。 しかし7回、甘く入ったスライダーを水城打線に仕留められ、水城の村田琳央、野口心大から連打を浴びる。1死一、三塁とされ、続く大森寧起にも低めのスライダーを上手くライト前に運ばれ、勝ち越しを許した。 7回途中、霞ケ浦の2番手投手として後藤稜空がマウンドに上がるが、水城の幡耕誠に四球を与え1死満塁のピンチを招く。しかし続く富田陽大をショートへの併殺打に仕留め、味方の反撃を待った。 その後、霞ケ浦打線は8回、9回と3者凡退に抑えられ、水城のエース大川を攻略することが出来ず、夏、秋と県大会連覇は果たせなかった。 先発した内山は「準々決勝、準決勝と三浦が頑張ってくれた。決勝は自分が任されたが、いい結果が出ず悔しい。関東大会では弱気にならずに攻めていき、霞ケ浦の野球をして、1勝、1勝積み重ねていきたい」と話した。主将の湯浅隼人は「投手を中心とした守りから攻撃に繋げていくチームだったが、今日は守りからミスを重ねて失点をしてしまい、打線も点を返すことが出来なかった。自分たちが今までやってきた野球が出来ず、負けてしまったのは悔しい。守りから勝つ霞ケ浦の野球をもう一度見直し、関東大会では自分たちが目標としている春の選抜甲子園出場を果たすために頑張る」と意気込みを語った。 霞ケ浦の大高部長は「守備のエラーが出たのは予想外だった。内山も不安なところはあったが、苦しい中でも何とか打ち取った。しかし守備のエラーで浮き足立ってしまった。鹿又のヒットで逆転し、気持ちが切り替わっていけたら良かったが、出来なかった」と話した。 水城は、今夏準優勝校の常総学院、優勝校の霞ケ浦を倒し、秋季県大会で16年ぶり2度目の頂点に立った。水城は茨城の王者として強豪校ぞろいの関東大会に挑む。霞ケ浦も2日の準決勝ですでに関東大会出場を決めている。(高橋浩一)

バイシクル・ダイアリーズ ⑹《ことばのおはなし》97

【コラム・山口絹記】ツール・ド・つくば2026、本番当日。朝5時前に起床。普通に寝不足である。炭水化物をとるため、山盛りのパスタとパンを無理やり食べ、前日に車に積んでおいた自転車とともに会場へ向かった。 会場に着くと、すでに参加者たちが周辺を走り込んでいる。使い込まれたロードバイクに本格的なサイクルウェア。チームで参加している人も多い。 私はこれまでスポーツの大会というものにほとんど参加したことがない。最後に出たのは、小学生のころの水泳の区民大会くらいだ。どうにも自分だけ場違いな気がする。 スタート地点には見たこともない数のロードバイクが並んでいた。その中に自分がいることが不思議で、一体どうしてこうなったのだろうと思う。 自分はいつもこうだ。自分で決めたことなのに、どうして自分が今ここでこうしているのかと、ふと我に返ってしまう。 55分21秒 201 スタート。 自転車屋の店長さんから「周りのペースに乗せられないように」と言われていたので、自分の脚にかかる負荷だけを意識する。 とはいえ、ずいぶん追い抜かれるな。 30代の集団では早々に最後尾。やがて後ろからスタートした40代の人たちにもすさまじい勢いで追い抜かれていく。 どうなってんだよ。おかしいだろ。 横をぶち抜いていく立派なふくらはぎを見て、まぁさもありなんと諦めた。 それでも練習で一度座り込んだ不動峠を今回は止まらず通過。スカイラインに入ると、今度は店長さんの「下りは休憩じゃないですからね」という言葉を思い出す。 ギアを上げ、一気に踏む。 下りで加速し、その勢いのまま次の登りへ。これは意外とうまくいった。今まで抜かれ続けていたのに、今度はこちらが何人も追い抜いていく。最高速度54.7キロ/時。人を追い抜くというのは、結構気持ちがいい。 風返し峠を越え、残り1キロで経過時間は50分。 コレは1時間を切れる。 急に気合が入り、初めてダンシングをしてみたら脚がつりそうになったので、すぐやめた。右膝も痛い。 最後まで見えないゴールへ向かって、残った力でペダルを踏む。 55分21秒201。 目標だった1時間を、4分以上縮めていた。 もっと遠くへ行ってみたい 帰りは参加者数十人で、登ってきた道をゆっくり下る。段差があれば前の人が手でサインを出す。それを見て、私も後ろの人にサインを送る。 なんだか、これがすごく楽しい。 ツール・ド・つくばを完走することは、私にとって大切な約束でもあった。その話は、いつかきちんと書こうと思う。 今はただ、もっと遠くへ行ってみたい。 そんなことを考えていたところ、父から「6月末に佐賀へ行かないか」と連絡があった。 佐賀は、この自転車にも深い関わりのある場所である。 そうか。このバイクを、佐賀に持っていけばいいんだな。 次の目標が決まった。(言語研究者)

タッチパネルの回転ずし《看取り医者は見た!》56

【コラム・平野国美】先日、遅い昼食をとろうと、大手チェーンの回転ずし店に入りました。ご存じのように、最近の回転ずしは、皿が回っていません。ここ数年、店内でのいたずらがSNSで拡散し、社会問題になりました。その対策として、タッチパネルで注文した品だけがレーンで届く仕組みに変わっています。 しばらくすると、私の隣に80代とおぼしき女性が、独りで座られました。やがて、その方が怒り出しました。しかも、見知らぬ私の方を向いてです。「すしを食べに来たのに、何よこれは。わけがわからないわよ。すしを回してよ」。私は、この怒りを、機械が苦手な高齢者の困惑だとは思いませんでした。 彼女の言い分は、筋が通っていると感じたのです。かって、回っている皿は目の前を通り過ぎていきます。彼女はそれを見て、気に入ったものに手を伸ばせばよかった。何が食べたいかを、あらかじめ言葉にする必要はありません。目で見て手が動く。それだけで食事が成立していました。 ところがタッチパネルは、何を食べたいかを決め、画面を正しく操作しなさい―と、こちらに要求します。回転ずしから回転が消えた瞬間、その店は「正しく注文できる人」のための店になったのです。彼女が失ったのは便利さではありません。「言葉にしなくても伝わる世界」です。 同じ年代の方々の会話では、スーパーのセルフレジも嫌われています。あれもタッチパネルすし店と同じでしょう。かつて、商店街には店の人がおり、お客の気配を察してくれました。今は、こちらが正しく操作しなければ卵一つ買えません。 ここで、誰かを責めるのは筋違いだとも思います。店が冷たくなったわけではありません。発端は、いたずらをした人間の側にありました。人口減少による人手不足もあるのでしょう。社会問題に対抗するためにシステムを変えた結果、新たな弱者を生んでしまった。この皮肉が、私の心に残りました。 誰一人取り残さない そして、これは私たちの世界の話でもあります。今の医療も、「どこがどう痛むのかを正確に説明できる患者さん」を前提に組み立てられています。スマホで受付を済ませ、症状を登録し、診察室で経緯を話し、質問に答え、そして薬を受け取る。この流れにうまく対応できない方は、後回しになってしまうのです。ここにも、回らなくなったレーンがあります。 タッチパネルのすし店で私にできたのは、「店員さんを呼びましょうか」と声をかけることだけでした。画面の使い方を教えることもできたはずですが、そのときは、なぜかそうする気になれませんでした。彼女に足りないのは、操作の知識ではなく、話しかける相手だろうと感じたからです。 やがて店員さんが来て、注文を聞き取ってくれました。しかし、彼女の機嫌は収まりませんでした。SDGsの理念は「誰一人取り残さない」ですが、回転ずしのカウンターで、そう感じたのでした。(訪問診療医師)

常総学院、8回に暗転 決勝進出ならず 秋季関東高校野球県大会

第79回秋季関東地区高校野球茨城県大会は2日、ひたちなか市民球場(同市新光町)で準決勝2試合が行われ、第2試合では常総学院が水城に2-5で敗れた。これで決勝の組み合わせは霞ケ浦対水城に決定した。 水  城 000000050 5常総学院 100001000 2 「新チームの難しさを勉強させられた。攻撃ではチャンスがつくれず、守備ではエラーやミスだらけ。これでは関東大会に行けたとしても通用しない。雨で練習が不足した部分はあるが言い訳にはならない。一から鍛え直す必要がある」と常総学院の島田直也監督はおかんむりだ。 先発投手の箕輪蒼は7回まで被安打1、無四死球、5奪三振と万全のピッチングをした。1回裏には、1年生ながら4番に座った坂本篤睦が左前への適時打で1点を挙げている。「前の試合ではチャンスで打てなかった変化球に狙いを絞り、今回は対応できた。いままで先輩に助けられてきたので、自分が助けたい気持ちで挑んだ」と坂本篤睦のコメント。 だがその後は、走者は出せてもなかなか点につながらない。2回には吉村颯人と加藤晴己の連打に、向原拓哉の四球で1死満塁とするが、続く坂本晃太郎が見逃し三振、佐藤泉里が右飛に倒れた。3回は望月星冴が内野安打で出塁し、宮原悠守の二ゴロでダブルプレー。4回は下山幹太が内野安打で出塁、ボークで二塁に進むが、向原の見逃し三振で終わった。 6回は宮原が四球で出塁し、下山と吉村がともに左前打で1死満塁。ここで加藤の投ゴロが敵失を誘って1点を追加。なおも満塁のチャンスは続くが、向原がスクイズを失敗し、ヒッティングに行っても投ゴロでこの回を終えた。「試合になると、何とかしてやろうという気持ちが裏目に出て、視野が狭くなってしまう。みんなの代表として出ているのだから、もう少し選ばれた責任感を持ってほしい」と島田直也監督の向原評。 そして8回表、箕輪は先頭打者を四球で歩かせ、次打者には右前打を浴びて無死一・二塁。ここで高橋幸聖が救援のマウンドに向かった。「箕輪は突然崩れることがある。今日も7回までは完璧だったが、残りのアウトを取りきる体力が足りない。行けるだけ行こうとしたが難しさが出た」と島田監督。 高橋は、最初の打者をスリーバント失敗に打ち取ったが、次打者の三ゴロがエラーとなって1死満塁。四球押し出しで1点を失った後、遊ゴロのエラーで2失点、さらに左前への適時打で2点を追加された。「勝って関東の切符をつかむつもりだったが、決勝点にからんでしまい申し訳ない。味方のミスをカバーするのが自分の仕事なのに、それもできず情けない。適時打を打たれたのは、自分の球が甘いところへ行った。1球の怖さを感じた」と振り返る。 三塁手の佐藤は「ゲッツー狙いの場面で、気持ちが先走ってジャックル(お手玉)してしまった。チームを引っ張る立場なのに、自分のせいで負けてしまい、スタンドの仲間や応援の人たちにも申し訳ない」と反省し、「次の甲子園のチャンスは夏だけ。もう一度見つめ直してチームを作り上げていきたい」と誓う。高橋も「今の自分に足りないのは、最後まで自分の球をコースに投げきる力。フィジカルもレベルアップして、一回り成長した姿で戻ってきたい」と気合いを入れる。(池田充雄)