総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科(つくば市大穂)の修了生で、現在つくば市内の企業に勤める青木優美さん(29)が主催する「障害者と考える“障害”ー障害平等研修@つくば」が、来月1日、つくば駅前のつくばセンタービル(つくば市吾妻)で開催される。障害者が進行役(ファシリテーター)となり、参加者と対話しながら、共生社会をつくるためにどう行動するかを考える。
青木さんは、視覚言語である手話を使って、科学をイメージとして理解しやすくする実験教室など、障害のある学生が科学を学ぶハードルを低くする取り組みを計画している。まずは、どうすれば障害のある人とない人が共に暮らしやすい街になるのかを、障害当事者や地域住民と一緒に考えたいと、今回の研修を企画した。
健常者を前提にした社会を変えたい
3年前、青木さんは、つくばで研究する大学生・大学院生の交流を目的とした「つくば院生ネットワーク」のメンバーだった。聴覚障害の学生は学会発表をするために手話通訳を自分で手配する必要があるなど、他の学生なら必要のない苦労をしなければならないと知った。
そこで、2020年3月、最初から手話通訳や文字通訳がついている「みんなの学会」を企画した。その後も、聴覚や視覚に障害のある学生と関わり、「みんなが等しく学べる環境をつくりたい」と思っていたところ、障害平等研修=メモ=の存在を知った。「地域の人たちと一緒に、研修を受け、今後の活動につなげたい」と、今年1月「つくばインクルーシブプロジェクト」を立ち上げ、最初の企画として、障害平等研修を開催する。
寝たきりの障害者も病室から参加
同研修当日、会場で中心となって研修を進めるのは、自身も車椅子ユーザーである都内に住む石川明代さん(56)。障害平等研修を通して社会変革を目指し、国内外で多くの研修を実施している。その功績が認められ、昨年には、国連が掲げるSDGsの17の分野で著しい貢献をした個人や団体などを顕彰する「岩佐教育文化財団」(東京都豊島区)の第1回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞を個人で受賞。その賞金をもとに、現在、各地を回り、障害平等研修を実施している。
研修では、NPO法人「障害平等研修フォーラム」(東京都大田区)のファシリテーター養成講座を修了した寝たきりの障害者も、全国各地の病室などから分身ロボット「オリヒメ」(オリィ研究所開発)を通して参加する。「今後、寝たきりの障害者もファシリテーターとして活躍できるようにしたい」と石川さんは話す。
研修を主催する青木さんは「障害のない自分が普段、不便を感じずに生活できているのは、この社会が障害のない人を前提につくられているから。このことに気づかないと、誰かを傷つけてしまう可能性もある。障害のある人もない人も住みやすい社会に変えるために、お互いを知るきっかけになれば」と話す。(川端舞)
◆「障害者と考える“障害”―障害平等研@つくば」は2月1日(水)午前9時~正午、つくばセンタービル1階co-en(コーエン)で開催。参加費は一般1000円、学生500円。申し込みは当日まで可能。申し込みはhttps://tsukuba-det.peatix.com/から。
※メモ
【障害平等研修】障害者自身がファシリテーターとなり、障害者を排除しない組織づくりを考える研修。英国で障害者差別禁止法を推進するための研修として実施され、現在、世界39カ国で実施されている。日本では、障害平等研修フォーラムがファシリテーターを養成し、ユニバーサルデザインの社会づくりに向け、企業や自治体などで展開されている。オリンピック・パラリンピック東京2020大会ではボランティアの事前研修に取り入れられた。