木曜日, 11月 21, 2024
ホームつくば障害者との対話から社会変革へ つくばの理系女子、障害平等研修を開催

障害者との対話から社会変革へ つくばの理系女子、障害平等研修を開催

総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科(つくば市大穂)の修了生で、現在つくば市内の企業に勤める青木優美さん(29)が主催する「障害者と考える“障害”ー障害平等研修@つくば」が、来月1日、つくば駅前のつくばセンタービル(つくば市吾妻)で開催される。障害者が進行役(ファシリテーター)となり、参加者と対話しながら、共生社会をつくるためにどう行動するかを考える。

青木さんは、視覚言語である手話を使って、科学をイメージとして理解しやすくする実験教室など、障害のある学生が科学を学ぶハードルを低くする取り組みを計画している。まずは、どうすれば障害のある人とない人が共に暮らしやすい街になるのかを、障害当事者や地域住民と一緒に考えたいと、今回の研修を企画した。

健常者を前提にした社会を変えたい

3年前、青木さんは、つくばで研究する大学生・大学院生の交流を目的とした「つくば院生ネットワーク」のメンバーだった。聴覚障害の学生は学会発表をするために手話通訳を自分で手配する必要があるなど、他の学生なら必要のない苦労をしなければならないと知った。

そこで、2020年3月、最初から手話通訳や文字通訳がついている「みんなの学会」を企画した。その後も、聴覚や視覚に障害のある学生と関わり、「みんなが等しく学べる環境をつくりたい」と思っていたところ、障害平等研修=メモ=の存在を知った。「地域の人たちと一緒に、研修を受け、今後の活動につなげたい」と、今年1月「つくばインクルーシブプロジェクト」を立ち上げ、最初の企画として、障害平等研修を開催する。

寝たきりの障害者も病室から参加

ファシリテーターを務める石川明代さん(石川さん提供)

同研修当日、会場で中心となって研修を進めるのは、自身も車椅子ユーザーである都内に住む石川明代さん(56)。障害平等研修を通して社会変革を目指し、国内外で多くの研修を実施している。その功績が認められ、昨年には、国連が掲げるSDGsの17の分野で著しい貢献をした個人や団体などを顕彰する「岩佐教育文化財団」(東京都豊島区)の第1回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞を個人で受賞。その賞金をもとに、現在、各地を回り、障害平等研修を実施している。

研修では、NPO法人「障害平等研修フォーラム」(東京都大田区)のファシリテーター養成講座を修了した寝たきりの障害者も、全国各地の病室などから分身ロボット「オリヒメ」(オリィ研究所開発)を通して参加する。「今後、寝たきりの障害者もファシリテーターとして活躍できるようにしたい」と石川さんは話す。

研修を主催する青木さんは「障害のない自分が普段、不便を感じずに生活できているのは、この社会が障害のない人を前提につくられているから。このことに気づかないと、誰かを傷つけてしまう可能性もある。障害のある人もない人も住みやすい社会に変えるために、お互いを知るきっかけになれば」と話す。(川端舞)

◆「障害者と考える“障害”―障害平等研@つくば」は2月1日(水)午前9時~正午、つくばセンタービル1階co-en(コーエン)で開催。参加費は一般1000円、学生500円。申し込みは当日まで可能。申し込みはhttps://tsukuba-det.peatix.com/から。

※メモ
【障害平等研修】障害者自身がファシリテーターとなり、障害者を排除しない組織づくりを考える研修。英国で障害者差別禁止法を推進するための研修として実施され、現在、世界39カ国で実施されている。日本では、障害平等研修フォーラムがファシリテーターを養成し、ユニバーサルデザインの社会づくりに向け、企業や自治体などで展開されている。オリンピック・パラリンピック東京2020大会ではボランティアの事前研修に取り入れられた。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

県営赤塚公園の秋《ご近所スケッチ》13

【コラム・川浪せつ子】今年のつくば市周辺の紅葉は例年より遅めのようです。つくば市で一番大きい洞峰公園のイチョウ並木も、今年は11月中頃でもまだ緑色。温暖化のせいでしょうか? ですが秋は日々深まりつつあり、至る所で紅葉が見受けられるようになりました。 つくば市役所のホームページによりますと、市内の公園は209カ所だそうです。面積の小さな、駐車場もないような近隣公園もあります。私のお薦めは県営の赤塚公園。駐車場は40台分。市営になった洞峰公園と遊歩道でつながっています。小さな池とかわいらしい水路もあります。 春の桜の季節は見事。とても静かで、近隣の方でないと気付きにくい穴場の公園です。絵のような東屋、ベンチも配置されていますので、ユックリできます。先日は、家族連れの外国の方々が、お子さん達を遊ばせながら、ランチタイム。また、大きな袋を持った女性が、木の枝や実を拾っていました。 近くには、映画館、日帰り温泉… お隣には茗溪学園や住宅。子供たちが遊びに来るからでしょうか、大きな時計も設置されています。先日は、全く水鳥は見えなかったのですが、鳥たちも集まっていることが多いです。自然をそのままに残しているような公園、小さいながら本当に素晴らしいです。 最近、研究学園駅周辺など、新しく移住してくる方が多いですが、どうぞ少し足を延ばしてみてください。赤塚公園の前には、映画館、日帰り温泉、ジム施設などもあります。ジムのボルダリング施設は、オリンピックに出場したスポーツクライミング選手、森秋彩(あい)選手が練習もした所です。(イラストレーター)

中止による減収2億3千万円 土浦花火大会 市が追加負担を決定

市長らの給与減額し道義的責任 土浦市は20日、第93回土浦全国花火競技大会の中止に伴って桟敷席などの収入が無くなり2億3000万円の減収があったとして、同額の補正予算を19日、専決処分で決定したと発表した。併せて、中止により多くの人に心配と迷惑をかけた道義的責任を明らかにするため市長と副市長の給料を減額するとした。 同花火大会は11月2日に開催する予定だったが台風21号の影響により中止。荒天の場合、3日または9日に延期する予定だったが、労働力不足により順延日の警備員を確保できず大会自体を中止とした(11月1日付、5日付、17日付)。 桟敷席の設営や撤去などすでに実施済みの委託業務や、中止に伴い新たに発生する経費を速やかに支払うため、議会の議決を経ないで決定する専決処分としたとしている。2億3000万円は、市が事務局を務める土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)に追加補助する。市は当初予算ですでに同実行委に8500万円の補助金を計上しており、中止となった大会の事業費は計3億1500万円になる。全額を市が負担する。 給与の減額は市長が月額20%、副市長が10%を12月から来年2月までの3カ月間減額する。12月の期末手当も市長が20%減、副市長が10%減となる。3カ月間減額する条例についても19日、専決処分とした。 安藤市長は「中止による減収を補うため新たに補助金を増額する結果となってしまったことについて、市民の皆様に心よりお詫びします。開催を心待ちにしていた皆様、 煙火業者の皆様、全ての関係者の皆様に対し、多大なご心配とご迷惑をお掛けしたことについて会長として責任を強く感じています。 今後は花火大会への信頼回復に努め、大会の運営等、様々な課題を検証し、次回の大会につなげて参ります」とするコメントを発表した。

オリジナルレンコン料理専門店開業へ 土浦市産業祭で一部メニューお披露目

日本一の産地である土浦のレンコンを使用したレシピを開発し提供するオリジナルレンコン料理専門店を開業しようと、同市でインターネットテレビ「Vチャンネルいばらき」を運営する会社社長の菅谷博樹さん(55)と、つくば市下広岡で軽食店「ニッチDEキッチン」を運営する増田勇二郎さん(53)が準備を進めている。開業に先立って23、24日開催の第48回土浦市産業祭でオリジナルメニューの一部をお披露目し販売する。 店名は「土浦れんこん物語」。来年1月ごろ土浦駅西口近くの同市川口、ショッピングモール「モール505」の空き店舗に開業し、ランチを提供する予定だ。店を運営する合同会社「土浦れんこん物語」を近く設立する。 菅谷さんによると、土浦にスイーツ店を構えたことがある増田さんと今年9月頃、土浦の活性化について話した際、「レンコン専門店で土浦をもっとアピールしたい」と意気投合したのがきっかけ。 菅谷さんは「レンコンといえば土浦市だが、あまり県外に浸透していないと感じている」と言い、「レンコンを使ったオリジナルメニューを提供し、市内はもちろん全国、海外にも発信したい」と、食を通じた観光促進と地元産業の活性化を目指したいと語る。新店舗のコンセプトについて「農家+料理の職人がコラボレーションしてオリジナルの新しいレシピを作り出していくこと」だと話す。 提供するメニューには、土浦市とJA水郷つくば主催の「日本一のれんこんグランプリ」で2022年と23年に2年連続最優秀賞を受賞した「市川蓮根」(同市田村、市川誉庸代表)」が生産したレンコンを使用する。メニューの開発と監修は、筑波山温泉ホテル一望(つくば市筑波)の料理長を務めた逸見千壽子さんに依頼した。 提供するランチは700円から2000円程度とする予定で、ほかにキッチンカーでの販売も予定し、インターネット販売なども模索している。 コロッケとお焼きを販売 すでにいくつかのオリジナルメニューが完成しており、そのうち「れんこんコロッケボール」と「れんこんお焼き」を23日、24日、モール505で開かれる産業祭で、「ニッチDEキッチン」のキッチンカーで販売する。 れんこんコロッケボールは、レンコンのすりおろしとジャガイモを9対1の割合で配合し、真ん中にカットしたかみ応えのあるレンコンが入っている。食べやすいよう一口大のボール型にしカップに複数入れて販売、クシで刺して食べてもらう。「れんこんお焼き」は、逸見さんオリジナルのレンコン甘辛味噌が入ったお焼きだ。 菅谷さんは「レンコンを使ったオリジナルメニューを今後も開発、提供し、モール505の活性化にもつなげたい」と意気込みを語る。(伊藤悦子)

もったいない(2)《デザインを考える》14

【コラム・三橋俊雄】今回の「もったいない」は、「一物(いちぶつ)全体食」の話からいたしましょう。一物全体食とは、穀物なら玄米のように胚芽まで全部を食べる、野菜や果物なら皮ごと、魚なら骨や頭まで1匹丸ごと食べるという意味で、生物が生きているというのは、丸ごと全体で様々なバランスが取れているということであり、そのまま人体に摂取することで人の身体にも望ましいという考えです。 ウド(独活)の一物全体食 植物のウドも、穂先から茎、皮まで丸ごと食べられる「一物全体食」の食材です。捨てるところがほとんどありません。地中で育つウドの白い茎は酢の物に利用され、穂先の若芽は天ぷらに、硬い皮は細く切ってきんぴらの材料にします。さらに茎の根側の堅い部分は煮付けに用いられるなど、ウドは、それぞれの部位がその特質に合わせて料理に生かされているのです。 ウドという植物を余すところなく食材として使い尽くすこと、そして、前回のコラムでご紹介した「桐材」の多様な利用の仕方も、人間の創造的な知恵の産物であり、「一物全体活用」と言っていいと思います。 さらに、以下にご紹介するのは、一つの「材」ではなく、一つの固有な地域風土が有する「様々な資源」を総合的・循環的に捉えて活用する、三澤勝衛(1885~1937)の『風土産業(1941)』についてです。 塩尻峠横川部落の風土産業 三澤は、横川部落における気候風土の中から、凍(し)み豆腐づくり、養豚、養蚕に着目し、上図に示すような、その地域ならではの循環型資源活用のあり方を提唱しました。 それは、 (1)大豆を購入し、豆腐に加工し、寒い塩尻颪(しおじりおろし)が吹く晩に、凍み豆腐を製造する。 (2)一方、豆腐の搾り粕(かす)の「おから」は、飼っている豚の主要飼料となり、その豚は、肉・皮が利用され、それ以外にも、骨は骨粉にして肥料に、また、油脂も利用する。排泄物は養蚕用の桑や夏期野菜の肥料に使う。 (3)蚕は桑を食べて繭をつくり、その繭は製糸工場で生糸に紡がれる。 (4)繭を売った収入は、冬期の凍み豆腐づくりに向けて大豆購入の資金となる、というものです。 三澤が示したこの「風土産業」は、地域固有の気候風土の中で産み出された様々な資源を、一つの廃物も出さずに全て利用し尽くす循環型の産業であり、今日言われている「循環共生(エネルギーや食を地産地消しながら地域内で資源が循環する自立・分散型の社会づくり)」の先進的モデルと言えるでしょう。そして、広い意味での「もったいない」のデザインと言ってもいいでしょう。(ソーシャルデザイナー)