防災介助士という職種がある。NPO法人日本防災士機構が認定する防災士とは異なり、公益財団法人日本ケアフィット共育機構(東京都千代田区・畑中稔代表)が育成、資格登録する検定ビジネスの一環で2011年12月に生まれた。防災士は災害時に所属団体・企業や地域の要請を受け避難、救助・救命、避難所の運営を行う。介助士はその活動を支援しつつ、障がい者や高齢者といった「災害弱者」の安全を守る。
同機構が認定しているサービス介助士を防災専門に特化させたものだが、サービス介助士が全国で10万人を超える中、まだ認定資格者は1657人(11月時点)という新しい分野だ。
つくば市在住で防災士・防災危機管理者の資格を持つ金栗聡さん(55)は、防災介助士としても活動している。防災介助士とはどんな仕事なのか、金栗さんを訪ねた。
防災士とは異なる災害弱者への支援
「防災介助士は、災害について理解し、どのように備えるか、平常時の啓発、災害が起きた時にどのように避難し、行動するのかを学び、災害時に実践することを委ねられています。例を挙げると防災対策・訓練でハンディキャップのある、災害基本法が示す要配慮者や避難行動要支援者への応対があります。高齢者、障がい者が、起こりうる災害にどんな助けを必要とするか。災害の状況は刻々と変化しますから、初動の避難誘導、避難所での安否確認と救護、健康維持支援などを通して地域の人々の支えになることが職務です」
防災介助士は、防災・災害におけるバリアフリー・ユニバーサルデザイン化にも知見を発揮するという。バリアフリー・ユニバーサルデザインが備えられた地域社会であるかどうかは、災害弱者にとって重要なだけではなく、災害時に負傷した健常者にもかかわってくるインフラであり、ライフラインとなる。
「介助と応急手当と搬送は、その場にいる誰かが行わなくてはならない。災害時、平常時にそのノウハウをお伝えし、或いは実践的に行動することが防災介助士の役目ですが、災害に対する法制度が逆に妨げとなる場合もあります。そのときどう判断すれば被害をいかに軽減できるかという知識も、防災介助士は学んでいます」
街のユニバーサルデザインを情報発信
金栗さんは、2018年に資格を取得し、自身の行動半径として、つくば市内の公共空間にどんな施設があり、そこが被災時にどんな規模の避難所機能を持つか。同時に避難経路の考え方や、施設に付帯している公衆トイレやエレベーターの設備内容を調査し、自らホームページ「やさしい防災」において紹介している。
このサイトでは、つくばエクスプレス(TX)の車両編成ごとにどこに車椅子対応スペースがあるか、つくば駅のホーム側ではどのホームドアが対応しているか、点字誘導や誘導鈴・誘導チャイムの種類に至るまで、実地調査や鉄道サイトからの引用できめ細かに解説しており、さらにつくば駅のバスターミナルから筑波山に出かける際の案内へと連載が続く。
注目すべきは、バリアフリー・ユニバーサルデザインの視点で調査紹介する内容が、車椅子生活者とその介助者に向けた情報発信であることだ。公共空間に埋め込まれた、社会的弱者のための記号や具体的な設備インフラは、統合して紹介されている場が少ない。点字経路に従うとしても、地下からどのエレベーターでどの出口に向かえば良いかは、車椅子生活の人々の身になって考えると、予備知識無しでの移動は困難だと感じる。
「私の書く文章がわかりやすいかどうかという問題も検証する必要がありますが、街なかの些細な情報も一つずつ、多くの人に知ってもらいたいのです」
金栗さんがなぜ防災介助士となり、こうした活動に従事しているのか。そこには金栗さん自身の体験が動機となって背中を押している。(鴨志田隆之)