常総市の圏央道常総インターチェンジに隣接して、大規模いちご農園「グランベリー大地」が17日、グランドオープンする。食と農の融合による産業団地の形成を図る「アグリサイエンスバレー構想」の一翼を担う施設で、15日には現地でテープカットが行われ、内覧会で「日本最大級の空中いちご農園」という触れ込みの全容を明かした。
いちご園は大地(同市三坂新田町、吉原将成社長)が建設、運営する観光農園。3万7000平方メートルの敷地に、連棟で計1万7000平方メートルの大型ハウスを設置。オランダで開発されたという栽培システム「フェンロー型ハウス」では上下に動く可動式タイプの栽培棚を採用、これは関東では初導入、日本では最大規模という。とちおとめ、あまおとめなど7種、19万本のイチゴを栽培している。
栽培棚の上下動により、宙に浮かぶイチゴを立ったまま収穫するスタイル。床面はフラットで支柱など障害物が少ないことから、ベビーカーや車椅子でも安心していちご狩りを楽しむことができる。営業は午前9時30分~午後5時、40分食べ放題制で、大人(中学生以上)2200円(税込み)。
大地の吉原社長は代々、同市で営農してきた認定農業者。栽培棚に用いる培地は独自開発による。オープニングセレモニーでは「小学校の卒業文集に『将来の夢は大農園の社長になる』と書いた。大農園は実現させたので事業として必ず成功させたい」と語った。
23日以降は、毎週金曜、土曜と祝日の前日限定の予約制で午後7時から「夜のいちご狩り」も開催。7200本のLEDでライトアップされたハウスの幻想的な雰囲気の中で、ひと味違ったいちご狩りが楽しめるそう。午後8時までで大人3000円(同)。
来春には「道の駅」が開業
「アグリサイエンスバレー」は、常総IC周辺約45ヘクタールに高生産性の「農地エリア」(約14ヘクタール)と加工・流通・販売が連動する「都市エリア」(約30.7ヘクタール)を集積をめざし、同市が中心になって進めている構想。生産(第1次産業)・加工(第2次産業)・流通・販売(第3次産業)が一体となった地域農業の核となる産業団地(6次産業)を形成し、地域の基幹産業である農業を活性化するためのまちづくりを目指している。
農地エリアは市街化区域に編入しない土地改良事業で整備が進められており、いちご園の敷地も整備前は水田だった。地元地権者からの借地で事業化されている。国道294号をはさんだ区画9.4ヘクタールは、大規模施設園芸ゾーンとしてソフトバンクのグループ企業によるミニトマトの栽培(植物工場)が始まっている。
一方の都市エリアでは運輸・倉庫業の企業が張り付き、一部が稼働開始。市と地権者と3者で官民連携事業(PPP協定)を結んで参画する戸田建設による土地区画整理事業が進められている。2023年4月には「道の駅常総(仮称)」が開業予定で、アグリサイエンスバレーのまちびらきを目指している。道の駅と並ぶ集客施設となる「TSUTAYAブックカフェ」は来年6月ごろ、温浴施設は24年春の開業と見込まれている。
神達岳志市長は「6年間、皆さんが苦難を乗り越え、ここまで来た。この先まだまだ大変だが、今回のグランドオープンでひと山越える。大勢のお客様が来ることを期待したい」と語った。