つくば市北条の街道沿いにある「北条ふれあい館」は大正末期に建てられた店蔵。2000年まで田村呉服店として現役で商売を営んでいた。現在は北条街づくり振興会が観光案内と無料休憩所をこの場に開設し週末に運営されている。
それは喫茶店なのか?と思うかもしれない。しかし訪れた人々へのもてなしでお茶やコーヒーを振る舞ってくれる。さらに北条米を練り込んだアイス「北条米スクリーム」を買い求めることができる。ここはもう番外でもかまわないので加えてしまおう。
「街道筋に発展した町は、江戸時代から続く商業の集積地で、昭和30年代がにぎわいのピークでしたね。確かに、喫茶店というものはここには無かったように記憶しています。なぜと問われたこともなかったけれど、なぜでしょうねえ」
振興会の会長を務める坂入英幸さんは、ふれあい館の近所で眼鏡・時計店を営む北条っ子だ。筑波研究学園都市の概成と市町村合併に伴う地域格差の顕在化、地元の少子高齢化など、地域を取り巻く問題は喫緊と言われながらドラスティックな解決策を見出せないまま現在に至る。
手をこまねいてはいられないと、市商工会の枠組みを超えて地元有志が集まり、町おこし活動を始めた。2007年度に始まり、茨城県のがんばる商店街支援事業にも採択され、北条の商店主だけでなく地域住民や筑波大生にも協力を求め、120人の会員で振興会が立ち上げられた。
震災、竜巻、コロナに折れることなく
人材集結や企画立案は少しずつ形になっていったが、2011年の東日本大震災、12年の竜巻災害で、町は甚大な被害を受け続けた。振興会は折れることなく復興に携わり、観光資源としての町の活用も形になってきたが、2019年から新型コロナウイルスという新たな局面に足を止められた。
震災以前に鉄道が廃線となり、筑波地区は市が唱えるように学園都市の周辺地域として取り残されるポジションとなっていた。公共機関の集積と商業が両立していただけに、元々は飲食業には目のある地域だったが、学園都市中心部とは比較にはならない。坂入会長はこう述べる。
「市にも進言しています。地域格差是正のためのR8(リージョン・エイト、市による周辺市街地活性化事業)にも期待はするけれど、余所の周辺地域はまだスタート地点に立ったばかり。先行してスタートした北条を地域振興のサンプルとして、もっと目を向けてもらいたい」
パン屋、うどん屋、ラーメン店も
北条米スクリームは、地域おこしのシンボルの一つ。北条米を使ったアイスクリームづくりを進めたのは、筑波大生だったそうだが、常識を越えた粘性が災いして「攪拌(かくはん)機が壊れるから製造できない」とも言われた。この粘性の改良の末、北条米の風味を生かした独特の粘りを持つ一品が誕生した。
ふれあい館のいろり端(正しくは集会テーブル)でこれをいただき振興会の人々と談話していると、ちょっとした古民家カフェの雰囲気を味わえる。
「地震と竜巻で、いくつかの歴史ある建築物が解体の憂き目に遭い、空き家問題なども起こっていますが、北条で喫茶店を営むというチャレンジに続いて、町なかに欲しいねと話題にしていたパン屋が2軒、うどん屋も2軒、洋食屋や行列のできるラーメン店が林立しています」と坂入会長は言う。(鴨志田隆之)
終わり