建築家、磯崎新さんが設計したポストモダン建築の代表作、つくばセンタービル(つくば市吾妻)が来年40周年を迎えるのを前に、同ビルをアート拠点として活性化させようと、市民団体「つくばセンター研究会」(冠木新市代表)によるシンポジウムが3日、同ビル内のホテル日航つくばで開かれた。同ビルを核にした博物館群構想や、非日常的な場所である同ビル中央広場の活用などが提案された。
建築意匠が専門の鵜沢隆・筑波大学名誉教授は、25年前、つくばに20世紀を記録する博物館群をつくるという「つくばミュージアム・コンプレックス」構想を紹介した。養老孟司さんや鵜沢名誉教授など7人の識者によって提案された構想で、同ビルがコアとなり、市内の他の施設とネットワークをつくることで、新しい博物館群・美術館群を構築していけるのではないかなどと話した。
当時、いかにして新しい街つくばに文化を根付かせることができるか、つくばエクスプレス(TX)が開通するとつくばはベッドタウンになるという予測の下、開通前に文化的仕掛けを提案したいという思いが、発案者の住都公団つくば開発局長(当時)の三宮満男さんにあったなどと話した。
六角美瑠・神奈川大学建築学科教授は、同ビルを1階の中庭(中央広場)、2階のペデストリアンデッキ、3階以上の三層に分け、2階のペデストリアンデッキは日常、一歩下がった1階の中庭は非日常の特殊な場所だとし、非日常的なゾーンが使われると、外の人も呼べる発信力が増えてくるなどと話した。
ビル1階の改修に異論も
さらに同ビルの建築の骨格や特徴について説明し、今春実施されたつくばまちなかデザインによる同ビル1階の改修に対し「(ぺデストリアデッキ部分から光を取り入れる)トップライトは重要なアイテム。トップライトの光の連続性を保つべきだったのではないか」などと話し、秋から市民活動拠点をつくるため市が改修を始める南側については「(1階部分は)細かく細分化されていろいろな部屋が入り、通路に学習机が並べられると聞いている。細かく細分化すると、どこにでもある施設になってしまう、通路は中庭とコンサートホールが連携して盛り上がりをつくろうというとき大事な軸になる」などと指摘した。
その上で「過去・現在・未来を横軸でつなぐ文化のプログラムがあるといい施設になっていくと思う」などと話した。
つくば市在住の写真家、斎藤さだむさんは、筑波研究学園都市の建設当初から撮り続けてきた写真をスクリーンに映し、著名な建築家が設計した市内の名建築なども紹介しながら、学園都市の成り立ちや変遷について語った。
シンポジウムには市内や県外などから約110人が参加した。参加者からは「小田城跡など(もっと古い歴史)があるのだから(研究学園都市だけでなく)市全体を考えてほしい」「科学万博のとき文化的なものが必要だ、と期間中、市民が発表する場があった。もっと文化的なものをつくってほしいと色々な人が色々なところで声を上げていかなくてはならない」などの意見が出た。
開催に先立って、ホテル3階廊下に掛けられていたカーテンがはずされ、磯崎アトリエが建築当時、大理石の壁に溝を掘って描いた列柱廊のレリーフ「時の歩廊」がお披露目され、同ホテルの馬場清康社長がセンター地区活性化に向けた思いを語った。
同研究会ではさらに11月と12月にワークショップを開き、多くの市民に参加してもらって、来年6月の40周年にアートイベントを開催することを計画しているという。