筑波山神社(つくば市筑波、上野貞茂宮司)で1日、恒例の御座替(おざがわり)が行われた。行動制限のない秋の観光シーズンを迎え、神輿(みこし)を担いで神社拝殿を目指す「神幸祭(じんこうさい)」の開催が期待されたが、今回も完全実施は見送り。筑波山頂での「神衣祭(かんみそさい)」と筑波山神社(拝殿)での「奉幣祭(ほうべいさい)」、2つの祭事の開催にとどまった。
神幸祭の開催見合わせは、コロナ禍に見舞われた2020年春から6回連続となる。奉幣祭も19年までは毎回約200人を招待して社殿にあげていたが、今回は100人に制限されている。記者は山頂まで登って、神衣祭の写真を撮ることになった。
中腹の神社は拝殿で、筑波山神社の本殿は男体・女体2つの山頂にある。親子の神が夏と冬に、本殿と拝殿で神坐を入れ替えることから御座替といい、毎年4月1日と11月1日に行われてきた。
神社の神職らが午前9時30分に男体山、10時30分には女体山の本殿に参り、神衣(かんみそ)を取り替える儀式が神衣祭だ。この日の気温は10℃、標高877メートルの女体山、さえぎるもののない山頂では寒さが身にしみる。
しかし、紅葉シーズンを迎え山頂には朝から登山客の姿があり、珍しい儀式に遭遇する形で、神の衣が入れ替わる瞬間を興味深く眺めていた。登山客の一人は「なんにも知らないで登山をしたが、貴重な神事に立ち会えて有難い気持ちがした」と語る。
神衣が納められたお神輿を担いで山から下りてきた一行は、神橋を渡って神社拝殿に向かう。神幸祭ではさらに中腹の集落を巡って拝殿を目指す長丁場の行程となる。メーンイベント格の神幸祭を含め、通常の形で3つの祭りが実施されるのは、神社によれば23年春の祭礼からになりそうということだ。
地元の総代の中山光昭さん(67)は「総代や神官は男体山、女体山と山道の全行程を歩いていくので大変だ。それでも明治の頃はふもとの六所神社(つくば市臼井、現在は廃社)から全行程を歩くのでさらに大変な行事だったと聞く。今はケーブルカーも使うし、だいぶ楽になった」と語る。(榎田智司)