筑波山の白滝神社(つくば市臼井)で28日に例祭が行われる。付近には、つくばねの峰より落つる「白滝」があって、かつては観光名所でもあった。今は忘れられかけた山中の神社に、隣接の神社の総代たちが年に一度、清掃と除草を兼ねて集まり、筑波山神社の神官によるお祓いを受ける。
信仰の山、筑波山には古く、修験道(しゅげんどう)の時代から多くの登山道があり、要所要所に神社があった。臼井の飯名(いいな)神社、蔵王神社、沼田の月水石(がっすいせき)神社、さらに廃社となった六所(ろくしょ)神社、蚕影(こかげ)神社などが南麓に点在する。
白滝神社もそのひとつで、祭神は日本武尊(ヤマトタケルノミコト)、建立年は不明だが、由緒書きによれば「山に迷い込んだ時にこの地に白い鳥が現れ案内をしてくれた」とあり、別名「白鳥神社」と呼ばれていたそうだ。
毎年8月28日に行われる祭礼は、宮司と飯名神社の総代8人だけの参列で、一般の参加者、見物客はいない。あたりは、巨石と急斜面が多いが、催事の行えるぐらいの空間があり、そこに全員が集まる。足場の悪い小さな神社があり、宮司が五穀豊穣を願い祝詞(のりと)をあげ、一人ひとりが二礼二拍手一礼、参拝をする。
白滝神社は「茨城県神社誌」(県神社庁、1973年)には氏子150戸と記載されるが、一個人に管理が任されていて荒廃し、継続が困難になったため、同じ臼井地区にある飯名神社が奉仕するようになったらしい。
かつての登山道は、六所方面から白滝林道を通り、白滝、桜ケ丘キャンプ場、つつじが丘までまっすぐ登るルート、そこから女体山山頂を目指した。山すそから歩いて登るこのルートは人気で、戦後しばらくまで大いに賑わった。
白滝は南中腹「筑波ふれあいの里」のほぼ真上にあり、標高は300メートルぐらい。修験者が滝に打たれ行(ぎょう)をする場所でもあったらしい。鬱蒼(うっそう)とした空間に、巨岩がひしめき、そこから蛇行するように沢が流れ、いくつもの小さな滝が落ちている。竹で出来た人工物からも滝は落ち、最大で10メートルぐらい。かなりの水量があったというが、最近はかなり枯れ気味のようだ。登山道の一つとして賑わったころは、茶店などもあったが、現在はガイドブックにも載っていない。
つくば市臼井の六所地区の元区長、木村嘉一郎さん(93)さんに話を聞くと、1965年、筑波スカイラインが完成、つつじが丘まで車で行けるようになったあたりから、徒歩での登山客がすっかり減ってしまった。翌66年、女体山側の中腹で土石流が発生、白滝一帯が飲み込まれた。けが人を多数出した災害で、復旧までかなりの時間がかかったという。木村さんは、当時「山津波」と呼ばれた土石流の体験者だった。
今はこのルートを使う人も少なく、かつての登山道はヤブとなっている。木村さんは「もっと白滝について知ってもらいたい。魅力的な場所なので登山道としても復活してもらえばうれしい」と語った。(榎田智司)