つくば市二の宮にある県営の都市公園、洞峰公園(約20ヘクタール)を、県がパークPFI制度によりリニューアルする計画に対し、近隣の二つのマンションの管理組合が19日、県、市、事業者の洞峰わくわく創造グループ(代表・長大)にそれぞれ、パークPFI事業の中止を求める要望書を連名で提出した。
提出したのは、いずれも西大通りをはさんで公園に近接する、同市二の宮のライオンズマンション筑波学園都市管理組合(131戸、渡辺禄郎理事長)と、ガーデンコート筑波管理組合(130戸、川鍋勝利理事長)。
両マンションはいずれも洞峰公園敷地境界から100メートル以内にある。パークPFIのメーン事業であるグランピング施設建設の可否を審査する際の法的な利害関係者にあたり、市建築審査会の判断に影響を与える立場にある=メモ。
要望書は、南側駐車場拡張に伴う樹木伐採により豊かな自然環境が損なわれることへの懸念に加え、同公園は中学生の通学やマラソンなどの学校行事、園児の集団遊びに利用されていることから、グランピングやバーベキュー施設、ビール工房でアルコールが提供されることにより、子供たちへの治安上の問題が発生することが危惧されるとしている。さらにごみ問題、騒音問題、臭気・油煙問題など計6項目を指摘し、住環境が損なわれる懸念があるとして、県と事業者には事業中止を、市にはグランピング施設の建設を許可しないよう求めている。
18日に県と事業者に要望書を郵送し、19日、五十嵐立青つくば市長に手渡した。
つくば市長に提出後、会見したライオンズマンションの渡辺理事長は「今回計画したことを展開しようとするなら(街なかの洞峰公園でなく)ほかにいくらでも候補地がある。なぜ皆が親しみをもって慈しんで育ててきた洞峰公園に設置しなければならないのか。始めにお金ありき、事業ありきでなく、地元の意見や知恵を結集してそこから始めるのが筋ではないか」とし、ガーデンコートの川鍋理事長は「洞峰公園を維持するためにお金が必要だからと、事業者と検討するのではなく、皆の意見を聞いて、地産地消のものを売るイベントを開くとか、野球場でスケートボードやフットサルなどのスポーツができるようにするとか、別のやり方を知恵を絞って決めていったらどうか」と話している。
これに対し県都市整備課は「要望書は受け取ったが(コメントを求められても)特にお答えできない」としている。
一方、五十嵐市長は「アンケートの生データを県からいただくことになっている。市でも独自に分析して、未来に向かった解決策を県と検討していく」とマンション管理組合に答えたという。
公園内の野球場にグランピング施設やバーベキュー施設、ドッグランなどを整備する計画の洞峰公園パークPFI事業をめぐっては、5月に市民団体「地域参加型の洞峰公園整備計画を求める会」(木下潔代表)が、都市公園法で位置付けられた協議会設置を求める要望書を提出した(5月13日付)。7月には県が説明会を計4回開催し、つくば市から出されたアルコールや臭いの懸念に対し対策を示したが、参加者からはアルコール提供や樹木の伐採に反対の声が相次いだ(7月2日付、23日付、8月1日付)。県は8月末までアンケートを受け付け、今後の対応をつくば市と協議して決める。県によると今後の日程は未定という。(鈴木宏子)
【メモ】洞峰公園は宿泊施設の建設が認められていない第1種中高層住居専用地域に指定されており、今回のパークPFIのメーン事業であるグランピング施設を野球場内に建設するためには、つくば市建築審査会の同意を得て、市長の特例許可(建築基準法48条のただし書許可)を受けなければならない。建築審査会の開催に先立って、市は公開で公聴会を開催し、影響が想定される周辺の利害関係者から意見を聴取し、建築審査会に説明することになっている。市建築指導課によると洞峰公園のグランピング施設建設の場合、利害関係者は敷地境界から100メートル以内の近隣住民となり、今回要望書を提出した二つのマンション管理組合は公聴会で意見を聞く利害関係者に当たる。建築審査会は審査にあたって①立地は妥当性か(上位計画等との整合)②住居の環境・商業の利便・工業の利便を害する恐れがないか(市街地環境への影響、商業活動への営業、近隣住民の理解など)③公益上やむをえないか(公益上必要性が高い、公共事業に基づく)などに留意して判断するとされている。一方県は、特例許可が下りるのか否かについて説明会で「住宅地への距離を考えると住環境への影響は極めて少ないと考えている。特例許可の判断はつくば市となる」としている。