木曜日, 9月 10, 2026
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予科練平和記念館 《日本一の湖のほとりにある街の話》2

【コラム・若田部哲】第1次世界大戦以降、戦略上、航空機の重要性が増すにつれ、多くのパイロットが必要となりました。そこで、より若いうちから育成することで、優秀な人材を養成しようとしたのが飛行予科練習部、通称「予科練」です。発足当初、全国から集められた14~17歳の優秀な少年たちに飛行の基礎訓練が行われました。

土浦市の隣、阿見町には、大正末期に霞ケ浦航空隊が設置されており、昭和14年(1939)に神奈川県横須賀市から、この予科練が移設されました。こうして軍事上の一大拠点となった同町の歴史を伝えるべく建設されたのが、今回ご紹介する「予科練平和記念館」。同館学芸員の豊崎尚也さんにお話を伺いました。

館内は「予科練」の代名詞であり、少年たちの憧れであった制服「7つボタン」にちなみ、7つの展示室により構成されています。

壁面の集合体で構成された館内は、至る所から空が見える印象的な空間となっているのですが、これはかつて予科練生たちが憧れ、昔も今も変わらない「空」を見せることにより、今日の平和について想いを巡らせてほしい、との設計意図だとのこと。この特徴的な空間の各所に、昭和を代表する写真家・土門拳による写真が配置され、厳しい訓練の様子や、つかの間の休息時のあどけない表情など、予科練生の日常を浮かび上がらせています。

「入隊」から「特攻」までで構成された7つの展示室では、入隊に当たっての少年たちの心情や、予科練での厳しい訓練の様子、訓練の合間のつかの間の憩いのひと時、そして予科練を卒業し、さらに厳しい本格的な飛行訓練へと移行していく様子が展示されます。

若い訓練生の8割が戦死

ところで、兵隊というと屈強の体格を想像してしまいますが、ここに集っていたのは少年たち。合格に達する体格の基準は150センチ後半程度だったとのことで、実際の教室を再現した教室の椅子や机の小ぶりさからも、年端もいかぬ子供たちであったことが実感され、胸が締め付けられます。

展示は、進行とともに緊迫の度合いを高め、終戦の年、昭和20年(1945)6月に起こった「阿見・土浦大空襲」を再現する展示を経て、最後の展示「特攻」へ至ります。暗い室内の壁面に、予科練生の命を示す小さな灯(あか)りが無数にともり、特攻の映像が流れます。映像が進むごとに減ってゆく灯り。予科練生を経て戦地へ赴いた2万4千人のうち、約8割の1万9千人が特攻などによりその命を落としました。

「1万9千人」。文字にすればたった5文字ですが、その1人1人に愛する人や、夢見た未来があったでしょう。全ての灯りが消え、室内が闇に閉ざされると、悲しみや虚無感とともに、言い知れぬ怒りが湧いてきます。

「戦争は、決して遠い昔の話ではない。70数年前に戦争を経験した方々がおり、その時代があって今という平和な時代がある。そのことに、展示を通して思いをはせてほしい」。豊崎さんはそう語ります。終戦の夏。少しでも多くの人に、この展示が語るメッセージに触れてほしいと思います。(土浦市職員)

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