茨城県障害者差別相談室(水戸市)に2021年度、寄せられた相談は107件で、前年度から1.5倍増加した。28日オンライン開催された同相談室の21年度実績報告会で明らかにされた。報告会には県内の障害者団体のメンバーなど11人が参加した。
相談室は2015年に県障害者権利条例をもとに設置された。県が運営し、障害者やその家族、支援者などから、障害者差別に関する相談を受け付けている。相談内容によっては、関係者双方から事実を確認し、解決策として合理的配慮を提案したり、関係者間の調整などを行う。
相談件数は2016年度の173件をピークに毎年減少していたが、21年度は20年度の68件から1.5倍の増加に転じた。理由について、相談員は「昨年度の相談件数のうち、実際に差別に該当し、相談室の介入を必要とする事例が21件と、相談件数における差別事例の割合も増えている。どのようなことが差別に当たるのか、周知されてきたのでは」と話した。
相談室の介入で解決した具体例として、車いすでも利用できる施設なのに、受付の職員の認識不足で、車いすでの利用を断られた事例や、発達障害で急な変更への対応が難しいため、担当医の変更は早めに教えてほしいと伝えたのに、直前まで教えてもらえなかったケースが紹介された。
感染対策と合理的配慮の両立
一方、コロナ禍での新しい生活様式が定着したゆえの相談も出てきているという。例えば、聴覚障害児が出席する式典で、感染対策のために手話通訳者の立ち位置が登壇者から離れてしまい、両者を同時には見られないため、通訳者の立ち位置を変えてほしいという家族からの相談事例が紹介された。この事例では、相談室から式典開催者に働きかけた結果、感染対策と両立しつつ、可能な限り通訳者を登壇者に近づけ、該当児童の席を通訳者が見やすい位置に配置する対応がとられ、相談者の納得が得られた。
「オンライン授業が広がる中で、情報を得にくくなった聴覚障害者からの相談があるなど、感染対策と障害者への合理的配慮をどう両立させるかについての相談も増えた印象がある」と相談員は話す。
合理的配慮とは、障害者が他の者と同等の生活を営むために必要な環境の調整をいう。車いすでも店に入れるように、入り口にスロープを付けたり、聴覚障害者に筆談で対応すること。2016年施行の障害者差別解消法で、行政機関等は、過重な負担でない限り、合理的配慮を提供することが義務化された。努力義務とされていた民間事業者も、昨年5月の改正により、2024年5月には義務化になる。
今回の報告会では、過去3年間の相談件数における、相談者の障害種別や、医療や教育など、分野別の内訳が報告された。これに対し、参加した障害者等から「県内の地域別内訳も教えてもらえると、私たちも差別相談室の周知活動に協力しやすい」「3年後の差別相談室開設10周年の節目に、開設当初からの相談者の男女比や、分野別の相談件数をまとめてもらい、データをもとに私たち障害者団体も協力しながら、差別をなくしていきたい」などの意見が聞かれた。(川端舞)