水曜日, 11月 26, 2025
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2,3回目も質問や意見途切れず 洞峰公園事業説明会

知事発言に異議も

つくば市二の宮にある県営の都市公園、洞峰公園(約20ヘクタール)のパークPFIを利用したリニューアル計画で、2日に引き続き12日と21日、県による2回目と3回目の説明会が同市谷田部の谷田部総合体育館で開催された。両日とも参加者からの質問や意見が途切れず、予定時間を30分延長した。2回目は約30人、3回目は約50人がつくば市内外から参加した。

参加者からは、大井川和彦知事による6日の記者会見での発言に対し、異議を唱える声が12日、21日の説明会で複数の参加者から上がった。大井川知事は2日開かれた第1回目の説明会を念頭に「反対だという方は会場内にはいらっしゃいましたが、明確な理由はあまりなかったのかなというふうに報告を受けております。とにかく、変えてほしくないから変えたくないと言っているというふうにも聞こえます」と発言。会場からは「知事に、市民の声が正確に伝わっているか疑問」だなどの声が出された。

ほかに、施設での飲酒による治安への影響、樹木の伐採による自然環境への懸念のほか、「慣れ親しんだ洞峰公園を変えてほしくない」という意見や、収支計画の不透明さへの不満など、計画に対する否定的な意見が数多く出た。一方で愛犬家からは、ドッグランへの期待など、肯定的な意見も出た。

一方、参加者からたびたび質問に上がった、年間8000万円が必要とされる公園施設全体にかかる大規模修繕費の内訳について、2日の説明会で県担当者は「ウェブサイトに公表できるかも含めて検討する」と述べていたが、21日には回答方法は未定であるとした上で「後日、公開する」と答えるにとどまった。

県、現計画を「より良いものに」

また今回のパークPFI事業に対して「知事はゴーサインを出したのか」との質問に対して県は「もちろん、そういうこと」と回答した。21日の参加者からの「説明会を開いて(参加者の声を聞いた上で)今後どうするのかを決めるのかと思っていた」という声に対しては、「PFI事業は4月1日からスタートしている」とし、「県民、市民の皆さんの声を伺い、現状のPFI事業をより良いものにしていくことで、皆さんのご理解をいただきたいと考えている」と説明した。

最終回となる4回目の説明会は、31日(日)午後2時~4時 洞峰公園体育館(つくば市二の宮 2-20)で開催される。

会場で記入可能なアンケートについては、県のウェブサイト(「洞峰公園パークPFI事業に関する説明会及びアンケート調査の実施について」)を通じて回答できる。(柴田大輔)

儲ける公園 あり得ない」「市の許可出なかったら 出来ない」

21日の第3回説明会の参加者と県・事業者との主なやりとりは以下の通り。

約50名が集まった21日の説明会=同

参加者1 現在の洞峰公園利用者の、目的別人数、人数比率などのデータは、県・長大は持っているのか。例えば、スポーツ目的とか、散歩目的とか。

 お金を払って利用していただいている方は把握をしているが、散歩や広場で遊んでいる方の数は把握していない。有料施設の来園者数は年間27万人程度。

参加者1 目的別の人数を把握していないにも関わらず、茨城県、長大は「公園の魅力向上」「満足度向上」「にぎわいの創出」「収益」「コストダウン」ということをうたっている。果たしてにぎわいの創出が公園利用者にとってプラスになっているのかもわからない状態でこの言葉を使っているのは、あまりにも非常識ではないか。にぎわいをつくってうれしいのは、県と事業者だけでは。公園利用者は、静かでのんびり、いい空気を吸って、鳥をみて、花を見てということを希望しているのではないか。本来、公園というのは、行政サービスの最たるものであって、コストダウンや収益という言葉はそぐわないものだと思う。繰り返すが、散歩やウォーキング、憩いの場として使っている人にはにぎわいというものは全く不要。この件に関してどう思われるか。

 貴重なご意見として承り、参考にさせていただきたい。さまざまな意見をいただいているので、そういったものを含めて、いろいろと検討させていただきたい。

参加者1 このPFI事業は、県知事はGOサインを出しちゃっているんですか。洞峰公園でやることは決定になってるんですか。

 その方向で進めさせていただいているので、こういった説明会をさせていただいているという状況。

参加者1 分かりずらい。県知事はゴーということで、もうハンコは押してるんですか。

 もちろん、そういうこと。

参加者2 質問が2点。まず1点、インクルーシブ遊具はさまざまな市町村等で導入されていることはよく耳にしているが、その際にトイレの方も拡張していただきたいという思いがある。(利用者の)ご家族の皆さんは、遊具によって公園に入りやすくなる分、排泄が困難だと、せっかくある遊具を有効に活用できない。トイレは障害のある方にとって大変重要なもの。その件については再検討をお願いしたい。もう1点、シンプルになるが、県職員の皆様、事業者の皆様、是非、洞峰公園の利用をお願いしたい。言葉を聞いている限り、皆さんから(実際に洞峰公園を)利用したという声がまったくない。県内で働いている皆さんが積極的に洞峰公園を活用していただいて、利用した感想を、県職員の声というものを聞いてみたい。事業として、都市公園法の下で進めていることもわかるが、公園をプライベートで使ったこともないのに公園のことを語る資格はないと思う。県職員の皆さんが公園をプライベートで活用していただいて、その声を県職員として活用していただくことが、筋だと思う。

 ありがとうございます。1点目のインクルーシブ遊具に関しては、障害者を支援している団体などからも何度かお話しを伺い、その際にもトイレのお話は伺っていた。トイレについては、既存のものを改修することに今後なる。その際は、その辺りの配慮は考えていかなければいけない。今後検討させていただきたい。それから我々県職員も、この洞峰公園を利用して、肌で感じることは重要だというご指摘、そういったことを感じながら、この計画を進めていき、説明会、アンケート調査等で寄せられた様々な意見を踏まえて、より良い公園にしていきたいと考えている。

参加者3 (洞峰公園を県は)稼げる公園にするというビジョンを持っているということでいいのでしょうか。

 稼げるというか、今回の計画の大きな柱として、公園内の区域を利用し、収益を上げて公園の管理費に充てるというのがパークPFI制度の大きな特徴。稼ぎながら適切な管理をしていくというのが趣旨だと考えている。

参加者3 収益を上げられるから、適切に管理できるというわけですね。公園というのは自治体の仕事。自治体が提供するサービス。警察や消防署と同じ役割があると思っている。なので、収益を上げなければ運営できない状況にしてしまうのは、自治体の怠慢じゃないかなというのが私の意見。特に、この洞峰公園はつくば市の中心にあり、街づくりの中心を担う公園。他の小さな公園とはまた役割が全然違う。そういった都市計画の中心的な公園を、簡単に民間に渡してしまうということに、私はとても不信感を持ち、残念に思っている。税金を使ってもいいので、ちゃんと運営してほしい。

 ご意見ありがとうございます。

参加者4 安全管理について伺いたい。不審者対策について、管理人が24時間常駐とのことだが、不審者というのは、通常の出入り口から出入りするとは限らない。壁を乗り越えるなど、それ以外から入ることも考えられる。これをどう防ぐのか。また、客同士のトラブル、飲酒をした際のトラブルはどう対処するのか。それを管理人が抑えられるのか。

 基本的には、事業所が説明している防犯対策、治安対策でまずは対応する。それ以上のことに関しては、今後、警察などと相談しながら検討していく余地はあると考えている。

参加者4 騒音調査について、酒を飲むと騒ぐ人がいる。宴会、音楽を流すなどでの騒音調査はしたか。

 騒音のシミュレーションをどういった条件でやったのかについては、土浦にあるグランピング施設で実際の騒音をチェックした。その際に、グループでの利用者など一般的な利用状況を踏まえて騒音状況を測定した。

参加者4 24時間のトレーニングジムは非常に危険だと思う。無人だ。もし利用者が心臓まひを起こしたり、けがなどした場合にどう対応するのか。また深夜の利用者同士のトラブルや犯罪につながるのではないか。

 24時間のジムが危ないのではということについては、実際に民間でも24時間のジムはある。詳細については、私の方からはなんとも言えないが、今の時点で考えられている安全対策がとられると考えている。

参加者4 パークPFIによる指定管理での収益還元の割合が分からない。あるいは、金額で想定されているか。どれくらいの割合の収益還元を考えているか。

 収益還元の割合は、改めて確認の上で回答する。

質問者4 グランピングの提案っていうのはそもそも県が提案しているのか。それとも長大の提案か。

 県が提案したものではなく、公募の段階で事業者から提案があった。

参加者4 茨城県の総合計画が、2022年から25年まで第2次のものが行われている。そのポイントとして「県民の声をすいあげていく」とある。県だけで決めるのではなくて、県民と協力しながら、協力・連携のもとでこの総合計画を進めていると思う。地域づくりの方向というのは、基本的に、その地域住民の自主性を尊重していく、その地域の住民の声を尊重していくということが書かれている。計画の中には「人に優しい魅力ある街づくり、快適で美しい街づくり、レクリエーション、交流空間を創出するための都市公園」とある。まさに洞峰公園がそうだと思うが「都市公園等の整備を通じ、地域の魅力を活かした街づくりを推進する」とある。静かな、緑の木々のある洞峰公園が魅力。それをにぎわいなるもので壊すことが、地域の魅力を活かした街づくりになるのか。是非、再考していただきたい。

 総合計画で位置付けられている県民の声を聞いてということについては、まさにこういった説明会やアンケート調査が、県民の声を聞くために行っていると認識している。

参加者5 グランピング施設の中で自由に飲酒できるか。

 それ(飲酒)は可能。

参加者5 ということは、飲酒した人が自由に(グランピング施設の区域外の)園内に出られることも考えられる。外からグランピング施設に入る人は監視できるが、中から酔っ払いが外に出て、例えばジョギングをしている女性や、早朝通学している子どもたちにさまざまな影響が出る。つまり、安心して夜の散歩やジョギングができないような環境が必然的にできるのではないか。グランピングするなら、飲酒した人はグランピング内から外に出させない。それができないなら、グランピングはやめるべき。普通の人が朝から夜まで楽しんでいたものが使えなくなってしまう。それが心配だ。

 貴重なご意見として承り、ご参考にさせていただきたい。

参加者6 アンケートの集計結果の公表はされるのか。その日程と方法を示してほしい。というのも、第1回終了後の知事の定例記者会見の知事の発言は、説明会でのやりとり全てが知事にきちんと伝えられたとは思えない内容だった。アンケートの集計結果を含めて、知事に伝えられた内容を我々が共有して初めてアンケートの信頼性が保たれると思う。計画そのものに対する反対意見を含めて(アンケートの)選択肢にない、その他の質問などのスペースに書かれた一字一句が知事に伝えられるのかとても心配。つくば市と共有すれば県民に対してアンケートの透明性を保持できると考えているのか。

 アンケートの取り扱いについて、まずはつくば市と共有するということでアンケート調査を行なっている。結果を公表しないということは全く考えてない。集計の上で、なんらかの形でお示しすることになるかとは思うが、現段階で、どういった形で集計して発表していくかというのは、今後もつくば市と相談しながら検討していくことになる。知事へもその結果というのは当然報告する。

参加者6 グランピングのエアコンの排気について、室外機について調査されたということが以前の説明会でなされたが、排気による気温の上昇については調査されたか。夏場のエアコン排気はヒートアイランド現象の要因の一つ。これまで草地だった野球場にグランピング18棟と共用棟などの人工物が設置されることで、風通しが悪くなるだけでなく、エアコンからの高温の排気が24時間垂れ流されることになる。グランピングの施設はテントタイプ、コテージタイプ共に断熱効果の期待できない造りであり、快適な室温に保つために周囲のランニングコースの気温が上昇することは明らか。これでも従来の利用者が尊重されているといえるのか。

 グランピング施設のエアコンによる排気については、具体的に何か検証したわけではない。一般論として、根拠があるわけではないが、ある程度のエアコンから出る排気については、許容される範囲ではあると個人的には考えているが、必要に応じて検討する必要があるとは考えている。

参加者6 県からは電力需給のひっ迫により節電するよう再三要求されている。世界的にCO₂削減が叫ばれている中で、地球温暖化を促進するような事業を推進することの整合性についての説明を。

 温暖化についても同様で、一般的に新しい建物が造られればエアコンは付いてくる。それに対して電力がひっ迫している中でそれを止めるというのは、ちょっと論点が違うのかと、個人的には思っている。

参加者6 これまでの質問で答えをいただけなかったことに対しては、ホームページでお答えいただくと伺っている。もうホームページで回答はされているのか。

 その回答につきましては、全4回の説明会が終わってから、なるべく早く整理をしてホームページに掲載したいと思っている。

参加者7 洞峰公園は自然の中でぼーっとするのが好きなのでよく行っている。先ほどから聞いていて、春ごろに見た地図と今日拝見した地図で、計画の変更があった。皆が取り入れてほしい計画に内容を修正したようだが、結果、それで非常につまらなくなった。グランピングって自然の中でおいしいものを食べて、お酒を飲んで、アウトドアの気分を楽しんだりするんでしょうけど、いろいろ配慮をして、部屋から出るなとか、酒飲むなとか、柵を立ててそこから出るなとか、そんなふうな計画になってるので、そもそもこの場所に造ることに無理があるのではないか。

 我々も洞峰公園にとってどういった形がいいのかというのは常に考えながら、事業者も計画の見直しを考えて、3月のオープンハウスでお示ししたものから、今日ご説明したものへと修正を行なっている。そのせいで使い勝手が悪くなるのではないかというようなこともあろうかと思うが、その点もバランスを見ながら検討しており、今日いただいたご意見を参考にさせていただきたい。

参加者7 県と事業所の方が、皆同じような年齢で、男性ばかり。(会場の)住民の方々はいろんな年齢、立場、女性もいる。計画を進める方にも、いろいろな年齢や性差が入ってくれたならば、もうちょっと細かいところが見えるのかなと思う。私たちは有志で自腹でここにきた。私たちは真剣に、今まで慣れ親しんだ洞峰公園のこの現状を変えてほしくないという意志でこれだけの人が集まり、様々な意見が出ている。

参加者8 プール、体育館の大規模修繕に年間8000万円かかっているというご説明だったが、その8000万円をかけてどういったことをするのか説明してほしい。リニューアルしてものすごい施設ができるのか、現状維持のために8000万かかるのか。

 大規模修繕にかかる費用の根拠としては、プールや体育館に限らず、公園全体の将来的な維持管理、修繕に関わる費用を平均して算出している。例えば、フィールドハウスという建物の改修費用、プールなどの目に見えないところもある。そのほかに修繕しなければならないところも将来出てくるため、そういったところも見込んでいる。で、あくまで修繕費用であって、建て替えなどは考えていない。建て替えが必要となれば、さらに費用が必要になると思う。最低限の維持管理、修繕。施設をなるべく長生きさせるためにも一定の費用がかかるということで、積み上げ試算をした。内訳については、後日お示しする。

参加者8 6000万円の経費を削減するという。また指定管理面積が減るから、指定管理費が2000万円減ると。その分、事業所がそこを維持管理する。残りの4000万円が「にぎわい創出」によるものであるという想定かと思うが、この4000万の内訳を教えてほしい。

 4000万円の収入増の内訳は、駐車場拡張による単純な収入増、テニスコートの拡張による利用増、また、もろもろの「魅力向上」による今の体育館やプール、テニスを含めたスクールに通われている方の増加を、事業所が想定し、約4000万円の増収というものを見込んでこの収支計画が建てられた。

参加者8 このパークPFIをやろうとやるまいと、(結果として)体育館やプールがなくなることが一番悲しい結末だと思っている。そのリスクをどのようにお考えか。たとえば4000万円の収益が出なかった時にどうなってしまうのか。公金を使ってその分の維持管理費を負担するのか、事業者が負担をするのか、地域住民が利用料という形で負担しなければいけないのか。

 制度の仕組みとしては、万が一収入が見込めない場合でも、税金を使って、いわゆる指定管理料は10年間の固定の金額というのが決まっているので、そこで追加で税金を使って何かをするということはない。事業者が工夫し、この収入を確保しながら公園の維持管理をするということが前提となっている。

参加者9 地球温暖化について心配している。この事業は地球温暖化に無関心で、SDGsにも逆行している。グランピング施設建設により駐車場建設に伴い樹木が伐採されるが、これに反対する。グランピングやドッグランが野球場跡地に建設予定だが、あそこには木が一本もなく、木陰がない。こんなところでグランピングの稼ぎ時と考えられている夏には、朝から猛烈な暑さが予想される。人間にも犬にも居心地がいい場所ではないのでは。ドームテントには断熱材は使われているのか。ドーム内は炎天下に置かれた車内のようにならないか。管理棟を含めると40台以上のクーラーの設置になるかと思う。省エネを考慮していないものをつくるのは、地球温暖化に即したものであるのか、県、事業者それぞれの意見をいただきたい。

 回答はまた改めてさせていただきたい。

参加者9 大規模修繕については、まだ計画が立っていないという話だった。どのようにして8000万という数字が出てきたのか。

 指定管理者の筑波都市整備、東京アスレチッククラブの2社で指定管理をしてきた中での、いわゆる小規模の修繕とは別に、県の方から発注している修繕工事というのがあり、それを積み上げている。それを整理して、改めてそこはお示ししたい。将来の計画もないわけではなく、計画があるものを積み上げて算出している。そこはきちんとお示ししたい。

参加者9 年間8000万円で20年かければ16億。16億の金が、プールや体育館の修繕費に本当に必要なのか。普通なら最初に修繕費がいくらかかるか金額を出して、そこから逆算していくんじゃないか。16億というお金はについてどう考えているのか。

 (修繕費が)プールと体育館だけではないということを先ほどからご説明している。公園全体の修繕費というのはそれなりにかかってくる。その中でも体育館とプールというのは、高額だというように考えている。

参加者9 しかし「ここにいくらかかる」という具体的なものが一切出てこない。私たちはこの金額をどう信用すればいいのか。

 出さないと言っているのではない。出させていただく。なぜ後から出させていただくかと言えば、参加者の中には1回目だけ出席されて、その後(別の回に)出席しない方もいる。そういった方に公平に情報を提供するためには、(質疑やアンケート等で)提案していただいたものを、私共でまとめて、説明に来ていただいた方全員に提供するという趣旨で、個別の説明会での説明を避けている。(4回目の)説明会が終了し次第、速やかに公表する。しばらくお待ちいただきたい。

参加者10 洞峰公園はつくば市だけではく日本が誇る公園の一つになっていると思っている。自然の中を散策し、森林浴、セラピーとしてのリフレッシュなどの効果が出ている。そういった中で、利用者にとっての共有地を切り売りするような、儲けるための公園っていうのはありえないと思っている。グランピング、ドッグラン、トレーニングセンター、ビール工房は、(公園外の)至る所にある。なぜそれを公共の土地でやらなければならないのか。さらにPFIで業者が収益を上げる前提だが、それが崩れるということは有りうる。どのくらい還元させるのかといえば、それも答えがない。私は、(県と事業者が)説明会を開いて今後どうするのかを決めるのかと思っていた。でもそうじゃないらしい。もう決まっているんですよね。もう一度立ち止まってほしい。こんな状況で進めるのは無理がある。この説明会の意図を説明してほしい。

 説明会の意図というのは、何度も説明しているので、出席回数の多い方はご存知かと思いますが、今回の説明会、それからアンケートについては、事業の内容について丁寧に説明し、県民・市民の意見を聞きたいというのが唯一の趣旨だ。

参加者10 私たちの意見をどう反映させるのか。

 ですので、どう反映させるかを含めて、説明会が一旦終わって意見を取りまとめ、その上で対応について告知をさせていただければと考えている。その方法については、ホームページに載せるのか、改めて説明をするのか、その他の公表という形でやっていくのかは、現在決めているわけではないので、その方法については改めて発表させていただきたいと思っている。

参加者10: パークPFIは決まっているという前提なのか。これは覆ることはないのか。

 事実、パークPFI事業は4月1日からスタートしている。覆らないのかと言えば、現在進んでいるものについては、もうスタートしているというお答えになる。ただ、こうして県民、市民の皆さんの声を伺い、反映させるべくやっているのは、全てを覆させるのかどうかというのは別にして、より良いものにしていくための検討を、私共の方でもさせていただきたいという趣旨で意見を聞かせていただいているというところ。そういったことでご理解をいただければ。それから、PFI事業が覆らないのかとのことについては、現状のPFI事業をより良いものにしていくことで、皆さんのご理解をいただきたいと、考えている。

参加者10 公園自体は、私たちだけでなく、次の世代が使っていくもの。やっと40年かけて森が育ってきたんですよ。そういった視点で是非考えていただきたい。

 併せて、私どもで説明してなかったと思うんですが、4月に事業がスタートしているんですが、事業自体が進行しているかというと、今のところストップしている状況。県が説明している中で事業を進めるのはよろしくないだろうということで、今は止めている。

参加者11 南側駐車場の拡張について伺いたい。グランピングには各棟にシャワー・トイレなどがつくと思うが、配管はどこを通すのか。

 詳細の設計はこれからということで、今は説明できる材料がない。

参加者11 配管の設計もなくて、ここまで(計画を)出すというのはおかしくないか。グランピングの位置まで全部書いているのに、配管をどこに通すかというのがないというのはおかしい。これ、当然(設計を)やってますよね。沼には流さないというのはさっき聞いているが。

長大 今のご質問ですが、変更後の概略設計を、今、手続き作業をしているところだが、我々は設計者ではないから、現時点で回答できる概略図面等の材料を持ち合わせていないため、後日改めてご回答したい。

参加者11 では、配管の行き先はどこか。上・下水道の本管はどこに。

 既設のつくば市の下水道に接続する。大通りの方に本管が通っていますのでそこに接続する。

参加者11 沼に出さないということは(配管は)駐車場の下か、園路を通すのか。

 駐車場であったり、園路の下であったり。

参加者11 園路は壊さないという話だった。園路には影響は与えないという契約と聞いていたが。そうすると、駐車場の拡張というのは、みなさんが駐車場のことで困っているからというよりは、自分達の配管を通すためのものだったのでは。

 園路を壊すということはないが、実際に園路の下を通すかどうかわからないが、仮にそうなった場合、必要な工事の後に現況に復旧するというのは通常これまでの維持管理の中でやっていることで、許容されることと考えている。

参加者11 質問を変える。この駐車場の拡張の際に木を切らないよう努力すると長大さんはおっしゃっていたが、拡張エリアに木は何本あるのか。

 そこもこれから調査して、なるべく影響がないように設計していく。

参加者11 私、前に数えたんですが、400本あった。長大さんの計画に入る別の場所も合わせると全部で600本。これを全部伐採しないと計画を進められないと思う。これはものすごく影響があると考えている。

 実際、樹木の調査に入れていないのが現状。これから適地がどこかということも含めて、なるべく影響が少ないようにするいう考え方のもと(計画を)提案させていただいている。

参加者12 洞峰公園を変えてほしくない。グランピングなんて誰も来ない。ビール工房とかつくったり、なんで公園の中で酒を提供したり、こんな施設をつくらなければいけないのか。全然、つくば、茨城らしくない。私がやるなら、にぎわいとしてやるなら、北側駐車場の方に科学の展示物を置いて、茨城は農業県だから農作物が買えるような場所をとりあえず駐車場の方に置いて、道の駅みたいに農作物が買えるようにする。(公園の)中はいじる必要はない。駐車場は広げる必要はない。土日は利用料を倍にするなど値上げすればいい。利用者のほとんどは土日だから。それだけで稼げる。グランピングなんて儲かると思えない。とにかく酒とか、そんなの公園じゃない。やめてください。

 貴重なご意見ありがとうございます。検討いたします。

参加者13 今回の指定管理事業とパークPFIの中で、声高々にインクルーシブ遊具を語るのをやめてほしい。そういうことは本来、私たちが払っている税金でやらなければいけないことで、パークPFIをやらないとインクルーシブ遊具を入れられないというのはおかしい。福祉、誰も取り残さないなど言葉はいろいろあるが、やっぱり、皆が楽しめるっていう、ハンディキャップっていうのは、メンタルのこともある。そういう人にとってもにぎわいがあるところでよくなるのかと。仕事に疲れた人とかがいう視点だと、癒しとかっていうのがベースにあって、そういうところから公園というものを考えていただきたい。

 貴重なご意見ありがとうございます。

参加者14:事業者募集の際に、Q&Aというのが県のホームページに出ている。建築基準法第48条のただし書きに基づく許可を受けるための事前相談について、いつ、どのような書類で相談すればいいかという問いに対して「提案書提出前に、配置面積等の概要が確認できる資料で県に事前相談の上、つくば市に確認協議」ってお答えされてるんですよね。で、このことが6月のつくば市議会で問題になった。(洞峰公園は)宿泊施設が本当は建てられない場所。だからグランピング施設を建てるとしたら、つくば市の許可が必要。もしもこの許可が出なかった場合、今回のメーン事業であるグランピングができない。だけど、このグランピングを前提とした事業者を県は選定されて、年間8800万円の指定管理料で足りると、10年間の契約をしたわけだが、もし市が許可を出さなかったら、この事業、成立しない。それを分かって県は契約した。この許可が出るという前提でやっているのか。市とそんな相談してるのか。市はどこかで「できますよ」って言ったんでしょうか。そうでないとしたら、やれるかやれないかも分からない事業を、県は契約したということ。つくば市は許可を出すって言ったんでしょうか。許可が出なかったら誰が責任を取るんですか。

 まず建築基準法上の手続きとして、48条の特例許可が必要になってくるのですが、その中で、48条の許可を下すのは、つくば市になりますが、つくば市も「建築審査会」という第三者委員会に諮らなければならない。では事業者募集の段階で、正式にそこに諮れるかというと、まだ正式に決まってもいないのに、それはできない。だから(事業者は)県に一声かけて、事前に市の建築指導課に相談をしてくださいということ。当然、つくば市も、建築審査会にかけているわけではないので、できる、できないの判断はできない。それは事実。ただ、こういう手続きを踏めば、可能性はありますよと我々は認識し、事業者も認識し、それに沿って手続きを進めてきた。そこでできるとも、できないとも、市は判断していないが、一般的に建築基準法48条の特例許可を受けるための要件というのはあるので、その要件に照らし合わせれば、この計画は決してダメな計画ではないということが分かる。そこはつくば市から「絶対できない」というような回答は得ていないので。もちろん、絶対できる、できないということはないが、その可能性はあるということで、この(グランピングを含む)計画を(県が)認定したということ。

 つくば市の判断を待っては事業者の決定はできないため、事前の相談の上、対応しましょうというのが、パークPFI上のやり方でございます。

※12日開催の2回目説明会については、ハウリング等の録音の不備により、質疑の主なやりとりを掲載しませんでした。

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県の監査に5年間虚偽報告 つくば市の生活保護行政をめぐる不適正な事務処理に関し、同市が県の監査に対して虚偽報告をしたのは「虚偽公文書作成罪に該当する」などとして、同市職員(40)が20日付でつくば警察署に刑事告発していたことがわかった。 告発内容は、生活保護を担当する市のケースワーカーなどの現業員が受給者に生活保護費を支給するにあたって、組織的に現業員が現金を取り扱っていたにもかかわらず、2019~23年度の5年間にわたり、県の監査調書に虚偽の回答を行い県に提出していたほか、23年度の県の監査でも県に対し「現業員が現金を取り扱うことはない」など事実と異なる説明をしていたなど。告発した市職員は、公務員がその職務を行使する目的で虚偽の文書を作成した虚偽公文書作成や背任などにあたるなどと指摘し、「虚偽が5年以上に及んだ事実を考慮すれば市が組織的に行ったものであることは否定し難い」「すべての事実が明らかになっているとは思えず、看過することはできない」などと指摘している。告発対象者は不詳としている。 現業員の現金取り扱いをめぐる虚偽報告については、県が2024年度に実施した特別監査で、市に対し「監査において虚偽の報告を行う行為は非常に悪質であり、生活保護行政に対する社会的信頼を損なうものとして誠に遺憾」だなどと指摘している(25年3月17日付)。 生活保護費の現金取り扱いをめぐっては、全国各地で現業員が現金を失くしたり取ったりしていたことが分かり、会計検査院が2007年度の報告で是正を求め、厚労省が現金取り扱い手順や決済権者を明確にした事務処理規定の整備や、事務処理方法の見直しなどを求めていた。 つくば市の場合、2015年度に「現業員は原則として金銭等を取り扱わないものとする」などの内部規定を作成し、18年10月に「現金支給については現業員以外の担当職員を指定する」などと改めた。内部規定が守られなかったことについて同市は県の調査に「(内部規定が)組織的に周知徹底されず、引き継ぎもされなかったため適切に運用されなかった。現金取り扱い員の人員不足もあり、現業員による現金支給を組織的に黙認していた。そのため監査においても事実と異なる説明を行っていた認識はあり、虚偽の報告を行っていた」などと回答している。現在は改善され「基準に基づいた運用を徹底し、二度と虚偽報告を繰り返さないことを徹底」しているとしている。 県に対する虚偽報告について、市福祉部は今年6月に発表した報告書の中で「(現業員の現金取り扱いについて)管理職は業務中も『口外しないこと』『台帳に記録しないこと』を指示し、県の監査においても事実と異なる回答をするよう指示していたと考えられる」などと記述している。なぜ5年間も県に虚偽の報告を続けたのかについての原因や背景は、報告書では明らかにされていない。 今回の市職員による刑事告発について同市の五十嵐立青市長は「(刑事告発が)どの部分か確認してないのでコメントできない。(生活保護行政をめぐる同市の不適正事務については)これまでも福祉部の報告等ですべて明らかにしているし、是正も行われているので、我々としてはこれまで通り改善を進めていきたい」としている。 刑事告発した市職員は2022~23年度まで約2年間、市社会福祉課に所属し生活保護行政を担当した。業務の中で、誤支給や誤認定など不適正な事務処理が行われていることを見つけ、内部で是正を訴えたが聞き入れられず、24年2月と3月に各種の不適正事案の是正を求めて市公益通報委員会などに通報した。その後市は、県などからの指摘を受けて24年7月に誤支給や誤認定などを公表し、25年6月に報告書をまとめた。しかし市職員は「すべての事実が明らかになっているとはいえない」などとして、24年8月と25年6月に特別委員会や第三者による調査委員会の設置などを求めて市議会に請願書を出し、不採択となっていた(9月26日付)。 告発した市職員は「最近のつくば市の記者会見や議会での様子を見るに、とても市民に対して誠実に向き合っているとは言い難く、このまま市当局に任せていても遅々として事実は明らかにならないと思い、刑事訴訟法に定められた公務員の告発義務に基づき今回告発した」としている。 つくば警察署は、告発状を受理したかどうかについて「個別のことはお答えできない。仮に出ていたとしても捜査に関わることはお答えできない」としている。(鈴木宏子)

神様の日常は人間の非日常《マンガサプリ》1

【コラム・瀬尾梨絵】私はマンガの大ファン。いろいろな作品を主に冊子で読んでいるが、このコラムでは私が面白いと思ったものを紹介していきたい。初回は、筑波山をモデルにして神様も登場する「ひとひとがみ日々」(古山フウ著 全5巻 小学館)。神様が出てくるというと、枕詞に「いにしえの〜」とか、「昔々…」なんて言葉がついてくるイメージが強いと思うが、背景の時代は限りなく現代に近い。 舞台は、町から少し離れた「ミツカド山」の麓。隣には「フタツカド山」という二峰の山もあり、筑波山の周りの山々のような地形だ。そこの廃村に、人間の姿になった神々が暮らしている。石の祠(ほこら)の神のイシ、菊の神の菊など、個性的な能力を持った神々が登場する。 例えば、猯(まみ)と呼ばれる神はタヌキのように姿を自在に変えられる。たくさんの神が登場する中で、宝塚がお好きな方は、「ヤネ」という神に注目してほしい。しかし、その力は人間の姿になる前より衰えてはいるようだ。少し時間がたつと大けがが治り、神様と人間の狭間でチグハグな様子がかわいらしい。 「人間1年生感」の神々 彼らはなぜ自分たちが人間の姿になったのか、思い出せないまま時を過ごしている。元は人間が暮らしていた廃村に、人間の姿になった神様たちが工夫を凝らして生活する姿も「人間1年生感」があり、ほほ笑ましい。 体の作りは人間なので眠くもなるし、空腹にもなる。神の姿だった時ではすることの無かった食事をする。食材の調達は主に、物の怪たちが新月の際に開く市でそろえる。ここまで書くと本当に人間のようだが、市でのお代の支払いは、髪の毛数本だったり爪の先だったり、突然人間らしくない。 イタチやトカゲなどの姿をしている物の怪たちにとって、神様の体の一部というのは力のあるものらしく、お代をもらった物の怪が当たり前のように髪の毛を食べていて、こちらの喉に引っかかりそう。 筑波山がモデルの「フタツカド山」 食事をするシーンが何度もあるのだが、これら全ておいしそうなのも注目したい。山菜を使った煮物や、市で売っている冷やしアメ、ペンキの缶で沸かしたミソ汁まで様々な食べ物が出てくる。個人的にフキミソのおにぎりは確実においしいと思う。素朴で魅力的な料理の数々と、ほっこりする作画が相まってとてもお腹が空く。 筑波山をモデルにしたという山も「フタツカド山」として出てくる。立派な神社があり、登山客も多く、まさしく筑波山のようだ。神社があるのでこの山にも神様たちがおり、それぞれの山の神同士交流も描かれるのだが、これもまた人間(?)模様が渦巻いており、ほほ笑ましい。 冒頭でも記したが、ミツカド山の神々はなぜ人間の姿になったかは本人たちも覚えていない。人間に忌み嫌われ打ち捨てられてしまったのか、何か良からぬものが働いているのか。力があるとはいえ、人間の姿になる以前よりも弱くなっているということは、ゆっくりと消滅へ向かっているのかもしれない。優しい作画と少し暗さを感じるこのバランスが病みつきになる作品だ。(牛肉惣菜店経営) 【せお りえ】土浦市出身。飯村畜産(土浦市)の直営店iimura-ya(いいむらや、つくば市二の宮2丁目)店長。地域密着型の弁当・惣菜・精肉販売店に10年間従事。日々の店舗運営で、多様な年代、多様な価値観を持つお客様と接する中で培った人間観察眼を、マンガの選定に生かす。コラムでは、疲れた心にサプリとして、マンガで癒され明日への活力になる一冊を紹介していく。

掃いても、掃いても《短いおはなし》45

【ノベル・伊東葎花】 私は、イチョウの木でございます。神社の参道へと続く道に、たくさんの仲間と一緒に立っております。このあたりでは、少しばかり有名な並木道でございます。 青々と茂っていた葉は、秋が深まると黄金色に染まります。それはそれは素敵な散歩道になりますのよ。葉っぱたちは、風にはらはらと舞い落ちて、地面に黄色のじゅうたんを敷き詰めます。ため息が出るほど美しい晩秋の風景ですわ。 ところでこの春、神社の長男が嫁をもらいました。その嫁が、まあ、きれい好きと言いますか、風情がないと言いますか、せっかくの美しい葉っぱたちを箒(ほうき)で掃いてしまうんです。竹箒でザッ、ザッ、ザッ、と葉っぱを集め、ゴミ袋に入れるんです。何ともまあ、風情のない現代っ子でございます。 こちらとしても、負けるわけにはまいりません。 「おまえたち、あの女めがけて散りなさい」 私が命令すると、葉っぱたちは嫁をめがけて、まるで矢のように降りました。 「ああ、もうっ、掃いても、掃いてもきりがない」 嫁はとうとう掃くのをやめて、家に帰って行きました。勝ちました。 …と思ったのもつかの間、今度は、大きな熊手を持って現れたのでございます。あんなものでかき集められたら、たまったものではありません。私たちは、嫁がいなくなるまで待って、ふたたび葉っぱの雨を降らせました。負けるものですか。 そんなバトルが、数日続きました。嫁がどんなにきれいに掃いても、翌朝にはまた黄色のじゅうたんが敷かれます。それでも嫁は懲りもせず、毎日箒を持ってやってくるんです。こういうのを、イタチごっこというのかしら。 次の日は、朝から雨でした。よく降る雨でございます。並木道を、レインコートを着た小学生が走って来ました。通学路ではないけれど、おそらく学校までの近道なのでしょう。遅刻しそうなのか、赤い顔をして、一生懸命走っています。子供の長靴が葉っぱを踏んだ時、つるりと滑ってバランスを崩しました。 「まあ大変」 私は、とっさに枝を伸ばして、子供を抱き上げました。子供は、転ばずにすみましたが、よほど驚いたのでしょう。大きな声で泣きました。 それを聞きつけて、嫁が走ってまいりました。 「滑っちゃったのね。気をつけて。走っちゃダメよ」 優しく頭をなでて、女の子を見送りました。そして私の幹に手を当てて、誰にともなくつぶやいたのでございます。 「きれいなんだけど、滑るんだよね」 嫁は、黄色の葉っぱをひとつ拾いあげ、指で優しく汚れを落としたのでございます。 「雨が止んだら、また掃かなくちゃ」 あら、宣戦布告とは頼もしい。 でもね、ごらんなさい。もう葉っぱが、いくらも残っていませんの。もうすぐ12月ですもの。 「どうぞ、好きなだけお掃きなさい」 あら、私ったら…。どうやらこの嫁が、少しだけ好きになったようでございます。 (作家)

スズメの記憶二つ《鳥撮り三昧》7

【コラム・海老原信一】今回はスズメの話を二つしてみます。一つは、野鳥の観察・撮影を始める前のことです。小学生3人の子供たちを連れ、栃木県小山市にあった「小山遊園地」へ出かけた際の出来事です。当時、この遊園地は存在感がある施設でしたが、20年ほど前に閉園となり、今は大型ショッピングセンターになっています。 運転席の窓を全開にして、下館から結城を抜け、小山市内を走っていた時、全開した運転席に小さな塊が飛び込んできました。驚きましたが、すぐスズメであるのが確認できました。車内はこの出来事に興奮状態です。 スズメは自分のいる所が本来の場所ではないと思ったのでしょう、フロントガラスに向かい飛び出そうと羽をバタつかせています。私も、まさかスズメが同乗者になるとは想像もできませんでしたが、右手を伸ばし、ダッシュボード上で動けなくなっているスズメ保護できました。ケガはしてないようでしたので、窓から放鳥しました。 もう一つは、野鳥の観察・撮影を始めて10年ぐらい経った時のことです。「花と鳥」という定番の情景を求めて、何日か同じ場所に通っていました。今日で一区切りと思いながら、周りを眺めていると、視界の下方で何かが動き、自分の方に這い寄って来る気配。見ると、1羽のスズメが足元に来てうずくまりました。 人からは逃げるはずのスズメがなぜ? そう思ってよく見ると、足元にうずくまったまま動く気配がありません。目は半分閉じられ、ゆっくりとした呼吸が感じられるほどでした。見るからに弱っており、残された時間の長くないことがわかりました。 足元に寄って来たのは、冷えてきた自分の体を温めたいと人の体温を求めたからではないか? でも私はじっとしている以外になすすべがなく、かなりの時間そのままでいました。やがて動かなくなったスズメをそのまま置き去りにするのが忍びなく、近くのヤブに隠しました。生きている時間を少しでも遅らせることができればと。 二つの記憶。一つは楽しかった記憶。もう一つは切なかった記憶。これからも、野鳥との関わりの中で多くの記憶を残せたらと思っています。(写真家)