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「被爆ピアノ」コンサート 8月9日つくばで【戦後77年】

77年前に広島で被爆した「被爆ピアノ」のコンサート&映画上映会「未来への伝言 つくば~平和へのいのりwith被爆ピアノ」が8月9日、つくば市吾妻のノバホールで開かれる。桜川市出身の声優で、朗読企画会社「ヴォイスケ」(東京都練馬区)代表の飯島晶子さんが主催する。飯島さんがつくばで被爆ピアノコンサートを開くのは2012年以来、10年ぶり2回目。

被爆者からピアノを託され、全国各地でコンサート活動をしている広島市の調律師、矢川光則さん(70)が、4トントラックでつくばに被ばくピアノを運んでくる。爆心地に近い民家で被爆したアップライトピアノという。

矢川さんは、1998年に被爆者からピアノを託されたのをきっかけに、2001年から全国各地でコンサート活動をしている。現在7台の被爆ピアノを保存しており、託された当時は、ガラスが突き刺さった跡があったり、ピアノのすき間からガラスの破片が出てきたり、原爆の爆風や熱線で倒壊し崩れた家の土塀の赤土が出てきたピアノもあった。音色は1台1台異なるが「古いピアノなので、奥行きのある音がする」と矢川さんはいう。

「私自身、被爆2世だが、平和の問題に無関心で、ピアノを託されたことをきっかけに目覚めた。戦争体験者がどんどんいなくなっている中、被爆ピアノの音色を聞いて、平和に思いをはせ、平和の尊さ、命のいとおしさを感じ取っていただければ」と矢川さんは話す。

「朗読したい」

コンサートを主催する飯島さんは2005年、友人のジャズピアニスト、西郷正昭さんから「私を弾いてー広島被爆ピアノ物語」と題した自作の詩を受け取ったことがきっかけで被爆ピアノの存在を知った。戦争をくぐりぬけた被爆ピアノが調律師の矢川さんと出合い、再び音楽を奏でるまでをつづった詩だ。

「私を弾いてください。私の体に刻まれた運命と歴史と様々な思いをその指先であなた自身が確かめてください」「私の鍵盤で平和の音楽を奏でてください」など、つづられていた。飯島さんは詩を読み、「朗読する者として、皆に聞いてもらいたい」と思ったと振り返る。

以来、飯島さんは毎年、都内のほか全国各地で、被爆ピアノの朗読会やコンサートを開催し続けている。県内では土浦、水戸、牛久などでこれまで5回のコンサートを開いてきた。

飯島さんは「去年、牛久で被爆ピアノコンサートを開いたが、コロナ禍でピアノを広島県外に移動させることができなかった。今年はノバホールで開催できる。毎年続けることが大事だと思う」とし、「8月9日は長崎に原爆が落とされた日。戦争をくぐりぬけたピアノがあることをいろいろな人に知ってもらい、戦争や平和について考えるきっかけにしてもらえたら」と話す。

8月9日は午後1時30分開演。第1部はコンサートで、ピアニストで聖徳大学音楽学部講師の浅井寛子さんが被ばくピアノを演奏し、飯島さんが被ばくピアノの詩を朗読する。ほかに、つくば市在住のビオラ奏者、脇田優子さんらが、広島、長崎とウクライナへの祈りを込めて、六重奏を演奏する。さらに調律師の矢川さんが被ばくピアノについて話す。第2部は、矢川さんの活動を映画にした佐野史郎主演の「おかあさんの被爆ピアノ」を上映する。(鈴木宏子)

◆「未来への伝言」は8月9日(火)午後1時30分から、つくば市吾妻1-10-1、ノバホールで。入場料は一般2000円、学生1000円。全席自由。チケットはノバホール(電話029-851-5881)またはカンフェティチケットセンター(電話0120-240-540、セブンイレブンで購入可)などで販売している。

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