火曜日, 4月 8, 2025
プロモーション
ホームコラムつくば市長の宿痾 総合運動公園問題 《吾妻カガミ》137

つくば市長の宿痾 総合運動公園問題 《吾妻カガミ》137

【コラム・坂本栄】元研究者たちによる五十嵐つくば市長リコール署名運動(7月11日~8月10日)が進行中です。解任の理由は多岐にわたりますが、一番は「議会の議決を取らず公有地を売り払うような市長は辞めさせよ」ということです。このコラムでも何度か、総合運動公園用地売却の手順のおかしさを取り上げてきました。この際、改めて整理しておきます。

リコール運動は「変節」市長への怒り

135「運動公園用地売却…の不思議」(6月20日付)では、▽前市長がUR都市整備から用地を買ったとき、名義上の取得者は市土地開発公社だった ▽しかし、借金した用地代金の返済について、議会から「市が債務を保証する」旨の議決を得ている ▽借金の元利返済も、その予算について議会の承認を得ている ▽それなのに、売るときには議会の議決は要らないという理屈は何か変だ―と指摘しました。

129「公有地売却…『逃げ』の…市長」(3月21日付)では、「市が行ったパブリックコメント(意見募集)では、(コメントを寄せた)77人のうち売却に賛成は2人、残りは反対か対案提示か分類不可でした。2択方式(賛成か反対)で分けると、賛成はたった3パーセントです」と書きました。

125「公有地売却…市の牽強付会」(1月31日付)では、「少ないサンプルで市民の声を計るのは正しくありません。そこで提案です。市民の声を聴くため、市長発意による住民投票(総合運動公園の是非で実施)か、サンプル数が多い無作為抽出調査(土浦市との合併の是非で実施)をやったらどうでしょうか?」と提案しました。

前市長が執行部主導であったことを批判、その否定の上に発足した五十嵐市政のセールスポイントは、議会にきちんと相談する、市民の声をきちんと把握する―でした。ところが、上記3つのパラグラフで引用したように、自ら定めた市政運営の基本を捨て去り、議会と市民の意見を聴かずに市政を進めるようになりました。リコール運動はこういった「変節」に対する怒りではないでしょうか。

議会や市民を軽視し、公有地を売却

五十嵐市長にとって、運動公園問題は「1丁目1番地」のテーマです。最初の選挙で掲げた目玉公約は「総合運動公園問題の完全解決」でした。具体的には、選挙前の住民運動で破棄に追い込んだ運動公園計画の用地をURに返還する、同計画にも入っていた陸上競技場を市内のどこかに整備する―この2つです。

しかし、用地返還は失敗に終わり、跡地をどう処分するかが市政の懸案になりました。そこで捻出されたのが、一部を防災用に借り上げる条件で一括売却する処分策です。なぜ防災施設なのか分かりませんが、一括売却色を薄めたかったのでしょう。市長としては、運動公園問題という宿痾(しゅくあ=長期間にわたって解決できない困難)から、何が何でも逃げたかったようです。

ところが処分を焦るあまり、(議会と市民の声が大事という)民主主義の基本中の基本を軽んじ、市政運営の「金看板」を自ら降ろすという過ちを犯しました。

五十嵐さんは最初の選挙で、運動公園用地売買契約書に「URは市の返還要求を拒める」旨の条項があるのに、目玉公約に「用地返還」を掲げました。つまり、返還が事実上無理であるのに、よく調べないで主要公約に仕立てました。この「フェイク(虚偽)公約」が災いとなり、この6年間、運動公園問題を抱えて迷走。今度はリコール運動を呼び込むに至りました。(経済ジャーナリスト)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

101 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest


最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

101 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




Advertisement
spot_img

最近のコメント

最新記事

見事に矢が的中 日枝神社で流鏑馬祭 土浦

土浦市沢辺の日枝(ひえ)神社で6日、流鏑馬祭(やぶさめまつり)が催された。伝説の登場人物にふんした鎧(よろい)武者が、馬にまたがって長さ150メートルほどある境内の馬場をゆっくり進み、立ち止まって、3カ所に立てられた的に向かって馬上から矢を放った。 一の矢から三の矢まで見事に命中すると、大きな拍手がおこった。当日はあいにくの雨模様だったが約600人の見物客が訪れ、写真愛好家らが矢を打つ瞬間を待ち構えるなど、にぎわった。 境内にすみついた大ザルが村里の作物を食い荒らし村人に害をなしたことから、領主と、弓の達人である家臣が大ザルを退治したという言い伝えをもとにした祭りで、県指定無形民俗文化財に指定されている。山ノ荘地区の平和と五穀豊穣を祈願し、毎年4月の第1日曜日に催される。 開会式には、青山大人、国光あやの衆院議員、土浦市観光協会の中川喜久治会長などがあいさつし、伝統行事の大切さなどを述べていた。日枝神社総代代表で同流鏑馬保存会の宮本勉会長(75)は「これからも未来に向けて続けていければよいと思う。昨年から稚児行列の衣装が変わるなど工夫している。地域全体でもっと盛り上がってくれれば」と話した。 日枝神社は、山ノ荘と称される小高、沢辺、東城寺、小野、大志戸、本郷、永井、今泉、粟野の9カ村の総社で、796年に創建されたと伝えられている。(榎田智司)

コラムの執筆陣が少し変わります《吾妻カガミ》205

【コラム・坂本栄】新年度に入りました。4月からコラム欄の構成を少し変えます。これとの関連で、5月から新しい執筆者に参加してもらいます。コラムは原則として1日1本ですが、行政記事や催事記事とは色合いの違うコラムを引き続きお楽しみください。 執筆回数は月1回に統一 これまでの執筆者は、月2回の方、月1回の方、隔月の方に分かれていました(ほかに随時出稿の方も)。4月からは月2回を止め、月1回に統一します(隔月執筆はそのまま)。仕事で多忙の方もおり、月2回はきついとの声が寄せられたからです。月2回の田口哲郎さんは研究活動の都合もあり、109回(3月29日掲載)が最後になりました。 研究学園駅周辺の地域活動を紹介してもらった「けんがくひろば」は、15回(2月25日掲載)が最終回になりました。題材が尽きてきたとのことで、4月から「随時」に移ってもらいます。12回(24年11月7日掲載)の後、忙しくて休載が続いた医療通訳の松永悠さんも「随時」に移行します。 親友の瀧田君が昨秋逝去 告知はしませんでしたが、国際政治について独自の分析を執筆してくれた瀧田薫さん(茨城キリスト教大学名誉教授)は2024年秋、逝去されました。バイデンとトランプが争う米大統領選挙の構造を取り上げた62回(24年8月4日掲載)が最後です。 瀧田さんは、幼稚園-小学校-中学校-高校の同級生でした。土浦聖母幼稚園(土浦市大町)の第1回卒園で、いろいろな場でいろいろ議論してきました。彼の茨キリ大での専門分野は国際政治、私の通信社での専門分野は国際経済でしたから、「解」を見つけるための情報をお互いに補完できました。田中角栄は米情報機関によって抹殺されたとの陰謀論については盛り上がりました。 茨キリ大で、彼は常務理事として大学運営にも携わっていました。経営学部を立ち上げた後、「新しい学部で兼任講師として国際経済を教えてくれないか」と誘われました。もちろん私は快諾し、毎週1回、大学がある日立市まで常磐高速道を飛ばしました。若い同僚講師との懇親会、好奇心あふれる学生との交流は実に愉快でした。 水戸の元広報課長も参加 逝去、多忙などで生じた「穴」は埋めていきます。2月から古本屋店主の岡田富朗さん(初回は2月1日掲載)に加わってもらいましたが、5月からは写真家の海老原信一さん、元水戸市課長の沼田誠さんにも参加してもらいます。海老原さんは鳥類の撮影が得意で、毎回2枚アップしてもらいます。今休載中のオダギ秀一さん(直近は1月16日掲載)に続き、写真家は2人目です。 沼田さんは、水戸市の「みとの魅力発信課長」を務めていました。変わった組織名ですが、他の役所で言えば広報課長に当たります。数年前に市役所を辞め、今はつくば市に住み、環境問題や街づくりの分野で活躍しています。好奇心が強い方で、水戸地域の話だけでなく、「水戸っぽ」の視点から学園都市のことも書いてもらいます。 ほかの執筆者についても、現在リクルート活動を続けています。独自の視点や面白い話題を提供してもらい、ネット媒体ならではのコラムにしたいと思います。ご期待ください。(NEWSつくば理事長)

逆転で開幕戦勝利 アストロプラネッツ

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツは5日、ノーブルホームスタジアム水戸(水戸市見川町)で今季開幕戦を迎え、栃木ゴールデンブレーブスに8-6で逆転勝利した。 【ルートインBCリーグ2025公式戦】(4月5日 ノーブルホームスタジアム水戸)茨城アストロプラネッツ-栃木ゴールデンブレーブス栃木 013 002 000 6茨城 001 000 61X 8 茨城は5点ビハインドで迎えた7回裏、打者一巡の猛攻で6点を奪い逆転に成功した。この回先頭の5番打者ジョ・ミンヨンが四球で出塁、6番の山本仁が右前打でチャンスを広げ、7番・秋川正佳の敵失と8番・原田京雅の遊ゴロ、9番代打・草場悠の内野ゴロで計3点を奪う。この時点で2死走者なしとなったがむしろここから本領発揮。1番・新太郎が遊撃への内野安打、2番・高田龍が右翼線への安打、3番・原海聖の中前打で1点を加え、とどめは4番・北原翔の中越え三塁打で2点を加えた。 「打ったのはストレート真ん中高め。上がりすぎたと思ったが、思ったより飛んでくれた。タイムリーになってよかった」と北原の談。「打線はいい当たりをしていたが、野手の正面をつくなど乗りきれてなかった。みんなで勝ちに行こうという気持ちが全員に伝わり、この回爆発できた。負けてても返せるという自信につながったと思う」とも語る。 新太郎はこの日5打数4安打の活躍。3回に迎えた第2打席のタイムリーでは、バントの構えで初球を見送った後の2球目、インコースのストレートを右前へ運んだ。「第1打席でもこの球があったので頭に入れていて、次来るなという予感があった」とコメント。オフには体づくりに取り組み、筋肉量が増えパワーやスイングスピードがついた。その成果がオープン戦からの好調につながっているという。 今季はチームとして初めて沖縄・宮古島で10日間にわたる春キャンプを実施。「寒い時期に合宿でしっかりスイング量を確保したことで、他チームよりもバットが振れている。このアドバンテージを生かしてスタートダッシュしたい」と巽真悟監督は期待を込める。 投手は7回表を投げた清原浩斗に勝ち星が付いた。「死球でピンチを招いて苦しいピッチングだったが、無失点で抑えれば野手が点を取ってくれると思い、全力で腕を振って投げた。逆転に感謝」とコメント。今季は直球が最速150キロと5キロアップした。決め球のフォークやスライダーの切れ味も増し、成長を実感しているという。 8、9回は佐藤友紀と石野田拓斗が1イニングずつ投げ、いずれも3者凡退と安定感抜群。先発陣も試合で経験を積ませながら、持ち前の高い能力を発揮させていきたいと巽監督は目論んでいる。 次の試合は11~13日、さくら運動公園野球場(つくば市流星台)などで読売ジャイアンツ三軍との交流戦3連戦を行う。(池田充雄)

消費者トラブルと対処法《ハチドリ暮らし》48

【コラム・山口京子】定期的に学習会をしている市民グループから、消費者トラブルとその対処法についてのセミナーを依頼されました。訪問販売の点検商法、インターネットを使った契約トラブル、詐欺まがいの投資話、強引な訪問購入、食品混入事件や薬害、不当表示など、消費者を取り巻く様々なトラブルについて話しました。 トラブルを避けるために、不意打ち的な勧誘による契約などには、消費者保護の立場からクーリング・オフ制度があります。クーリング・オフは、いったん契約の申し込みや締結をした場合でも、契約を考え直す時間を与え、一定の期間内であれば契約の解除ができるものです。 たとえば、自宅に来た業者に「無料で屋根を点検します」と言われて、屋根を見てもらったところ、「瓦がだめになっていて、このままでは雨漏りする。すぐに修理しないと家がだめになる」と言われて、その場で押し切られ工事の契約をしてしまった場合などは、クーリング・オフが使えます。 クーリング・オフができる取引は法律で定められています。また、事業者が約款で定めている場合もあります。店舗での直接購入や通信販売などは適用されません。インターネット契約は通信販売の一種であり、クーリング・オフ制度はありませんが、使えると誤解している消費者が少なくありません。この場合、事業者が表示する返品特約に記載された返品の可否や条件に従います。 消費生活センターに相談しよう 通信販売については、返品特約がどうなっているか、契約前にしっかり確認することが大事です。以下の点を知っておいてください。 ▽消費者と事業者の間には、大きな情報の量と質、交渉力などの格差がある。 ▽生産と消費が分離し、消費者に生産工程が見えなくなっている。 ▽科学技術の発展や、化学合成物質の多種類・大量使用で、問題が複雑化している。 ▽事業者は利益を出すために低コストの生産を強いられ、その無理が被害につながる。 ▽被害が出ても、因果関係が証明されないとして、実態を企業がなかなか認めない。 ▽被害者が訴訟を起こしてもなかなか認められない。認められても損害賠償金が不十分。 ▽そもそも、諦めてしまう。 悪質事業者による被害から消費者を守るために、全国で「適格消費者団体」が立ち上がっています。総理大臣の認定を受けた法人で、全国に26団体あります。茨城県ではまだ設立されておりませんが、「消費者サポートいばらき」が適格団体になる活動を進めています。困りごとや不安があれば、居住地の消費生活センターに相談しましょう。(消費生活アドバイザー)