観梅の名所、筑波山梅林(つくば市沼田)で収穫された実は例年、梅酒や梅干しに加工され、土産物として販売されているが、今季は大幅な収量ダウンが必至の様相だ。コロナ禍による「筑波山梅まつり」の開催中止に続くダブルパンチに見舞われている。
関東甲信地方の梅雨入りが伝えられた6日に予定されていた梅の実落としは雨のため中止、7日以降に順延となった。
6次産業にも影響
筑波山梅林は筑波山の男体山西側、標高約250メートル付近の斜面地に広がる。涸(か)れ沢沿いの約4.5ヘクタールに筑波石とよばれる班れい岩の巨石が散在し、約1000本の白梅・紅梅が咲き競う。
6月に入り、梅林ではアジサイの花が咲き出したものの、客足はほぼ途絶えている。散策しても梅の木に実はほとんど無く、落ちて転がる実も見られない。このまま梅の実落としをしても、「成果」は期待薄の状況だ。
梅林管理のつくば観光コンベンション協会によれば、例年協会スタッフの5~6人が出て、梅の実落としを行ってきた。低い枝からは手でもぎ、高い場所の実は棒で払って落とした。1日の作業で200~300キロの収量があったという。

収穫した梅は、同市が推進する6次産業化プロジェクトで梅酒や梅シロップなどに加工され、梅林内のショップ「おもてなし館」で販売されるなどしてきた。今年は収量の大幅ダウンが避けられず、加工用にどれだけ回せるか見通しが立たない作況だ。
県内どこも芳しくない
県農業総合センター園芸研究所によれば「県内から集まってくる情報だと(梅の実は)どこも芳しくない状況だ」(果樹研究室)という。昨年豊作だっただけに今年は「裏作」の傾向となるのは否めず、農作物として育てているわけではない観賞用の梅では、多少の落ち込みは避けられないのが相場だそう。
病害虫の発生は認められておらず、天候の影響が大きい。「開花は少し遅れ気味だったが、開花後に雪が降るなど極度の低温に見舞われた。結果、花粉を運ぶミツバチの活動が鈍るなどして着果が進まなかったのではないか」(同)という見方をしている。
例年、梅雨入り前後に行われる県内の梅の実落とし。水戸・偕楽園では9日と10日の2日間行われる。梅の実は 11 日に偕楽園公園センター(水戸市見川)で、1人1袋(1キロ)200 円(税込み)で先着500人に販売する予定だった。同センターでは、昨年より収穫量が少ない見込みとしている。(相澤冬樹)