筑波銀行(本店・土浦市、生田雅彦頭取)は13日、2022年3月期決算(21年4月1日-22年3月31日)を発表した。コロナ禍、預金、貸出金額いずれも過去最高になった。
コロナ禍の20年3月から22年3月末までの約2年間に同行が実施したコロナ関連融資は県内最多の計約1万4300件、総額約2420億円になったという。7割以上で返済が始まっている。
経常利益2.1倍
22年3月期の連結決算については、銀行本来の業務の収支である業務粗利益は、連結子会社の見直しなどにより役務取引利益が減少したほか、国債債権売却益が減少したなどその他の業務利益が減少したが、有価証券利息配当金や預け金利息が増加したなどから、前年比13億7600万円増の296億3500万円となった。
銀行本来の業務で稼ぎ出した1年間の利益となる、業務粗利益から人件費などの経費を差し引いた実質業務純益(単体)は、業務粗利益の増加に加え、10年間で店舗を147店から74店に半減させる統廃合が終了したなど、経費が人件費を中心に減少したことから、前年比25億500万円増加の54億3500万円となった。
銀行の通常の活動から生じた利益を表す経常利益は、資金利益の増加による業務粗利益の増加や、営業経費が人件費を中心に減少したことにより、銀行本体の収益力が大幅に改善したことに加えて、取引先の貸出金が回収できなくなった場合に備える与信関係費用が低水準に抑えられたことなどにより、前年比27億3300万円増益(110.7%増)の52億100万円となった。前年3月期の経常利益24億6700万円の2.1倍となる。
預金(単体)は、コロナ禍による手元流動性確保意識の高まりなどを背景に、個人預金、法人預金いずれも増加し、過去最高の2兆4663億円になった。預かり資産も、投資信託が増加したなどから過去最高の2780億円になった。
貸出金は、コロナ禍の影響を受けた地元中小企業などへの資金繰り支援や本業支援に積極的に取り組み、中小企業貸出が前年度末比218億円増の7610億円になったことや、地方自治体向け貸し出しが増加したなどから、貸出金全体で679億円増加し過去最高の1兆8825億円となった。
健全性の指標となる、リスク資産に対し資本金などの自己資本がどれだけあるかを示す自己資本比率(連結)は、親会社株主に帰属する当期純利益42億円の計上などにより自己資本は増加したが、貸出金や有価証券が増加し、リスクの度合いに応じて調整したリスク・アセット額が増加したなどから、前年度末比0.21ポイント低下し8.94%となった。
金融再生法に基づく開示債権額(単体)は、危険債権の減少などにより前年度末比74億円減少し394億円となった。この結果、不良債権残高の割合を示す開示債権比率(不良債権比率)は同0.48ポイント低下し、2.04%となった。
来期(23年3月期)の業績予想については、コロナ禍の長期化により県内の経済や社会活動がさまざまな影響を受けており、コロナ禍の収束がさらに長期化した場合には与信関係費用の増加が懸念されること、ウクライナ情勢を背景に原材料価格の高騰やインフレ懸念、米国金利の上昇や円安の進行など先行き不透明な状況が続いているなどとして、経常利益を22年3月期と比べ15億円減益の37億円としている。貸出金利の低下に伴う貸出金利息の減少や、日銀の当座預け金における貸出促進付利制度(コロナオペ)が6月で終了することなどにより資金利益の減少や、有価証券売却益の減少を予想していることなども要因としている。(鈴木宏子)