水曜日, 5月 18, 2022
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春の野の花が教えてくれること 《遊民通信》40

【コラム・田口哲郎】
前略

天気がすぐれない日が続いていますが、春真っ盛りですね。桜が散ってしまっても、花がちまたに咲きみだれています。阿見町の阿見プレミアム・アウトレットに行ったら、ネモフィラが咲いていました。ひたち野うしく駅前ではツツジが満開です。そして道端には、ナガミヒナゲシが鮮やかなオレンジ色をあふれさせています。

野の花といえば、新約聖書の一節を思い出します。「今日は生えていて、明日は炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる」(マタイによる福音書6.30『フランシスコ会訳新約聖書』)。イエスは着る物をどうしようかあれこれ思いなやんでいる人々に、こう言いました。神は花のように人間をありのままでも美しくつくってくれたんだから、いろいろ不安にならなくてもよいよ、というメッセージです。

しかし、この短い一節にはもうひとつのメッセージがあります。美しい野の花も枯れれば明日はゴミに出されて焼かれるということ。命ははかない。神は人間を美しくつくったけれども、命には限りがあることをストレートに表現しています。これは桜の花のはかなさを味わう日本人のこころと通じますね。

花は桜だろうと、道端のなんでもない花でも、人間に何かを教えてくれます。ふと思うのは、毎年当たり前みたいに見ている花でも、来年見られる保証はないということです。花は人間がいなくなっても咲き続けるでしょう。この場合、人間のほうのはかなさの問題です。

不安になったら思い出すニーバーの祈り

イエスが、大丈夫!と言っても、生きる不安は簡単に消えるものではありません。どうすればよいのか?と問う民衆にイエスは答えます。祈りなさい、と。そしてイエスは民衆に祈りを教えます。これが、仏教でいう般若心経のごとく、キリスト教の大切な祈り、「主の祈り」です。主の祈りは解釈が少々難しいので、今回は別の、とても美しい祈りを紹介したいと思います。「ニーバーの祈り」と呼ばれる祈りのはじめの部分です。

神よ、変えることのできないものを、平穏なこころで受け入れるために、あなたのいつくしみをわたしたちに与えてください。変えるべきものを変えられる勇気を与えてください。そして、変えることのできないものと変えるべきものを見分ける賢さを与えてください。

この祈りは作者不詳ですが、もともと負傷した軍人を励ますものだったのを、ニーバーというプロテスタント神学者がアルコール依存症患者の更生プログラムのために用いて広まったと言われています。人生にはジタバタしても仕方ないことと、努力してなんとかなることがあるようです。それを静かに見分ける賢さは野の花が美しさとともにわたしたちに教えていることなのですね。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

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