土曜日, 3月 7, 2026
ホームつくばネット配信に工夫凝らし 24日まで科学技術週間 つくば

ネット配信に工夫凝らし 24日まで科学技術週間 つくば

「発明の日」の18日に始まった科学技術週間は24日まで。つくば市内の教育・研究機関でも、各種イベントが展開中だ。新型コロナ感染対策から、施設公開やトークイベントなどをオンラインで行う一方、研究開発に取り組む現場の映像を配信するなど、工夫を凝らしたインターネット上での紹介が大半を占めている。(橋立多美)

宇宙と物質の謎配信 高エネルギー加速器研究機構(KEK)
22日に東海村からサイエンスカフェ「大強度陽子加速器施設(J-PARC)で探る宇宙と物質の謎」を生中継する(午後6時~8時、要事前申し込み)ほか、つくばキャンパスの常設展示施設「コミュニケーションプラザ」にある霧箱を使って「宇宙からやってくる自然放射線を観察する」(午後5時半~8時)。23日は量子を題材にしたアニメの紹介や加速器のオンラインツアーが企画されている(午後1時~3時半)。いずれも参加は無料。配信はYouTube(KEKチャンネル)1日目=https://youtu.be/3muAqQSO04E 2日目=https://youtu.be/POV1rikg284   
https://www.kek.jp/ja/

ショートムービー&トークライブ配信 産業総合技術研究所(AIST)
日々研究に奮闘する現場にカメラを持ち込んで仕上げたショートドキュメンタリームービーを21日まで連日配信。題して「研究の日常は、非日常だ」。ムービーは研究部門ごとに編集され、驚きとワクワクにあふれた非日常空間を楽しめる。22日午後7時半からはムービー出演の研究者たちによるトークイベントが開催され、研究成果を生み出すための地道な作業などが語られる。ショートムービーは産総研公式 Twitter(https://twitter.com/AIST_JP)または YouTubeで。トークイベントの視聴はサイエンス・スクエアつくばのホームページから。参加無料。

研究現場を伝える産総研のショートムービーのワンシーン。「0.03ミリまで岩石をけずる」 (産総研提供)

食と農の科学館オンラインツアー 農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)
「食と農の科学館」をバーチャルで体験できるオンライン特設サイトを5月8日まで開設する。2021年度に新たに展示された植物工場の模型、超極細シルクドレス、農作業事故体験VR(バーチャルリアリティー、仮想体験)を動画で紹介などする。クイズやプレゼント企画などもある。特設サイトはこちら

非常識な『ミカタ』~材料の科学者はこう考えた~ 物質・材料研究機構(NIMS)
24日午前10時から、最先端材料開発の現場から装置や技術をYouTube、ニコニコ動画で配信する。非常識な「ミカタ」から生まれた材料がいっぱいのNIMSのラボからラボへと生潜入。最先端材料開発の現場から、研究者のユニークな視点・発想で生まれた材料・装置・技術を紹介する。登録なしで誰でも視聴できる生放送「ラボぶら」はこちらから。

特設サイトで発信 国際農林水産業研修センター(JIRCAS)
一般公開用の特設サイトを設け、農業や食料をテーマにした6人の研究者によるミニ講演や、360度カメラで撮影した「動物目線から見た景色」、スタンプラリークイズなど、子どもから大人まで楽しめる企画を用意。24日午後1時からパネルディスカッション「変わりゆくアフリカ~研究者が現地で見たアフリカの農業・食料」のライブ配信が行われる。視聴は国際農研一般公開特設サイトで。

オンラインでつながろう! 国際協力機構(JICA)筑波国際センター
21日午後6時半~8時、「国際協力のおしごと座談会!」(対象:高校生・大学生・一般、定員50人)。23日午前10時~11時45分。「つくってみよう世界の料理!~ガーナ“ジョロフライス”」(対象:小学生=保護者同伴=から一般、定員15組)、ZOOMによるオンライン開催。内容はこちら

視覚障害に配慮した学び体験 筑波技術大学春日キャンパス
視覚と聴覚障害者のための国立大学法人・筑波技術大学が科学技術週間のイベントとして、視覚に障害のある学生たちが勉強している春日キャンパスを一般公開する。キャンパスには視覚障害の学生が在籍する保健科学部があり、障害に配慮された学習環境を見学するだけでなく、触覚を用いる教材や音声読み上げソフトウエアなど、さまざまな支援機器を体験できる。公開は22日午後1時~4時半、正面玄関脇の図書館入り口で受付。団体の場合は大学総務課広報・情報化推進係に問い合わせ(電話029-858-9311)を。https://www.tsukuba-tech.ac.jp/department/hs/

このほかの主な公開は次のとおり。

▽筑波大学 スーパーコンピューターと学際計算科学の最前線など研究室紹介の動画配信。宇宙史研究センターによる「宇宙の誕生から銀河の形成」は力作。宇宙の始まりから銀河の形成、さらにその先まで、宇宙の歴史の5日の場面でとらえ、その最新研究の様子を届ける。視聴はこちらのメニューから。

▽JAXA筑波宇宙センター 科学技術週間期間中、館内休憩室でJAXAの取り組みや最新の情報をショートムービーで紹介する。現在、一般見学は事前予約制、見学の案内サイト(https://visit-tsukuba.jaxa.jp)

▽産総研・地質標本館 2021年に発信した特筆すべき研究成果14件をまとめてウェブ会場から紹介。地質標本館は3月16日深夜の地震により一部不具合が生じ、点検と必要な修繕のため臨時休館中。6月末までの新たな来館予約を停止している。

▽国立公文書館つくば分館 春の企画展「ゆっくら温泉ー江戸時代の湯めぐり」は終了した。新旧憲法、終戦の詔書(しょうしょ)などのレプリカ展示は常設で行われている。午前9時15分~午後5時、土日祝日休館。

▽国土技術政策総合研究所 津波越流に対する海岸堤防に関する実験や、災害時の道路交通維持に貢献する道路基盤実験施設など、Webでの公開のみ。視聴はhttp://www.nilim.go.jp/

▽土木研究所 研究所の紹介、免震橋や津波でも流出しにくい橋などの実験を配信。Webでの公開のみ。

▽NTTアクセスサービスシステム研究所 細いガラス製の「光ファイバ」でさまざまな情報を伝える仕組みや、通信基盤を支える技術を紹介する。

▽国土地理院「地図と測量の科学館」 企画展「緯度経度 世界共通の正確な『ものさし』へ」を開催。測量用航空機くにかぜの内部公開は21日午前10時~午後3時、雨天中止。

▽つくばエキスポセンター=企画展「錯視の世界~あなたは今度もかならずだまされる」、科学のポスター展、科学技術映像祭など科学の不思議を体験できる。科学技術週間中は入館料が割引(大人200円、子ども100円)。

▽筑波実験植物園=24日まで「さくらそう品種展」。100種類を超えるサクラソウの園芸品種を、江戸時代から続く伝統的な方法で展示する。一般320円(税込み)、高校生以下・65歳以上は無料。入園は午前9時~午後4時半。https://tbg.kahaku.go.jp/

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14カ国・地域の101人が巣立つ 日本つくば国際語学院で卒業式

学校法人つくば文化学園が運営する日本語学校「日本つくば国際語学院」(つくば市松代、東郷治久理事長)の卒業式が6日催され、14カ国・地域の卒業生101人が、恩師や在校生らに見守られながら学び舎や友達に別れを告げた。 卒業式は、隣接する日本料理店、つくば山水亭のレセプションホールを会場に催された。卒業生らは母国の民族衣装を着て、青いガウンをまとい、学士帽子をかぶって入場、笑顔で式典に臨んだ。卒業後は大学や専門学校に進学したり、国内企業に就職したりなどそれぞれの専門分野に進むという。 卒業生の出身国14カ国と地域は、ネパール56人、ミャンマー16人、中国8人、スリランカ8人、タイ3人、韓国2人、イラン1人、モンゴル1人、フィリピン1人、インド1人、香港1人、マダガスカル1人、 チュニジア1人、 ベトナム1人。 式典では卒業生を代表して、ネパール出身のシリス・リマさんが「日本の生活は決して簡単なものではなかった。故郷のことを思い、言葉にできないほどの切なさを感じた。そんなとき『努力しなさい、あなたなら何でもできる』という母の言葉が勇気を与えてくれた。ここで学んだ日々がこれからの人生を支えてくれると信じている」と感謝の気持ちを語った。 東郷理事長は「皆さんは最初、一人で来たが、今は一人ではない。この学校を実家だと思い。これからも頼って欲しい。そして何のために日本に来たのか思い出し、頑張って欲しい」などと卒業生に語り掛けた。 在校生を代表してミャンマー出身のシン・プム・ファイさんは「日本語の勉強とアルバイトの両立をしながら学校に通う毎日は簡単でなかったと思う。不安や期待はあると思うが、先輩たちなら困難なことも乗り越えられると信じている。夢に向かって進んでください」とエールを送った。 式典では卒業生5人に皆勤賞、49人に精勤賞が贈られたほか、日本語能力試験(JPLT)の表彰が行われ、64人に表彰状が贈呈された。同試験は、日本語を母語としない人を対象に日本語能力を測定し認定する世界最大規模の検定試験で、国際交流基金と日本国際教育支援基金が実施する。認定はN1からN5まで5段階あり、同語学院では今年度、最高位のN1に2人が認定された。 式典後、東郷理事長は記者団の取材に対し「今年の卒業生も101人と膨れ上がった。来年は同じ会場ではできないかもしれない。生徒には日本を好きになってほしいと思っているので、先生方にもやさしく指導するようにと話している」とし「なぜサンスイグループが日本語学校をやっているのかと聞かれるが、私自身も商社時代にアラビア語を習った経験もあって、大変だったが楽しかったということもあるのかもしれない」などと語った。 日本語学校が現在、直面している課題として、急増する入学希望者に対し、教員不足や教育の質の確保などの課題があるという。2024年4月に日本語教育機関認定法が施行されたことにより登録日本語教員という国家資格制度が始まったが、需要と供給のミスマッチが起きている状況が続いている。(榎田智司)

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粘土で広がる世界 自閉症の粘土作家・松橋克希さん つくばで個展

6日から 自閉症スペクトラムなどの障害のある粘土作家で、水戸市在住の松橋克希(よしき)さん(20)の作品展「イマジネーション クリエイト 想像から創造へ」が6日から、つくば市千現、二の宮公園前のギャラリーネオ/センシュウで始まる。アニメや映画などのキャラクターをモチーフにした新作を含む約250点の粘土作品とイラスト15点を展示する。22日まで。 普段は地域の保育園などで毎週、子どもたちに作品作りを教え、「よっちゃん先生」の愛称で親しまれている。制作活動を通じて自分の世界を広げてきた松橋さんの十数年の歩みに触れる作品展だ。昨年12月には、障害のある人の芸術活動を支援する拠点として県に設立された「障害者芸術文化活動支援センター」が、県つくば美術館で開いた作品展「めぐる展2025」に出展。創作実演や対話型鑑賞会も行われ、多くの来場者の関心を集めた。 地域の中で活動を広げる 克希さんは、粘土で作った小さなパーツを一つ一つ繋ぎ合わせてオリジナルのキャラクターを生み出している。その数は、数千体。頭の中には、常に新しいキャラクターのイメージがあふれているのだという。 幼い頃から創作に打ち込んできた。幼稚園のころから小麦粘土や折り紙を用いた工作に夢中だったと、母親の裕子さん(54)は振り返る。地域の小学校に進学すると、支援クラスの教員や放課後に通った学童保育の担当者らが制作活動に寄り添った。さまざまな粘土を試す機会をつくり、時には1日6時間に及ぶ制作を共に見守った。 幼い頃はコミュニケーションが難しく、裕子さんは戸惑うことも多かった。夕方になると長時間泣き続けることもあったという。しかし成長とともに落ち着き、作品を通じて人とのつながりが広がっていった。展示会では「すごい」「また見たい」と声を掛けられるようになり、それが創作の励みになった。 裕子さんは「当時、頭の中は大好きな怪獣でいっぱいだったのだと思う」と話す。克希さんは2、3時間に一つほどのペースで、思い浮かんだ怪獣を次々と形にしていった。 小学6年の時、障害のある他の子どもたちと地元のホテルで初めて展示会を開催。さらに水戸市内の空き店舗を使った販売会やワークショップにも参加し、地域との交流が生まれた。裕子さんは「できるだけ地域の中で、いろいろな人と同じ場所にいてほしかった。障害のある子どもは外との接点が少なくなりがち。だからこそ作品を見てもらう場をつくりたかった」と語る。 映画制作が転機に 活動の大きな転機となったのが、自身も出演し、克希さんの作品をもとに制作された映画「欲望の怪獣」(2019年松本卓也監督)だ。母親がイベントで出会った人との縁から企画が動き、映画制作の中で克希さんがオリジナルキャラクターを考えるようになった。「そこから自分の世界を形にする力が強くなった」と裕子さん。上映会などを通じて、さらに人との出会いが広がったという。 人との交流を重ねる中で、徐々に会話などのコミュニケーションも増えていった。「人に興味を持ってもらえることはとても大きい。作品について意見を聞きたいなど、人との関わりにも意欲的になった」と裕子さん。 克希さんの作品の源は、戦隊ものや海外映画、人気アニメ「ONE PIECE(ワン ピース)」などのアニメやゲームの世界だ。特に仮面ライダーシリーズの敵怪人デザインを多数手掛けた韮沢靖氏は大きな目標の一人。怪人や恐竜、特撮のキャラクターなど、独自のデザインを粘土や絵を通して生み出していく。思いついた瞬間に制作に取りかかる。多い時は短時間で複数の作品を作ることもあるという。 展示について克希さんは「デザインを見てほしい。作品を見た人から『かっこいい』『すごい』と言われるとうれしい」とし、「詳しい人が来たらアドバイスもほしい」と話す。将来については「なるべく認知されて、作品と自分のことをみんなに知ってほしい」と語った。出会いが増えたことについて尋ねると、「言い方が思いつかないんですが」と考えを巡らせながら、「うれしい気持ちです」と言葉を選んだ。 会場では完成作品だけでなく、キャラクターのアイデアやデザインのメモがぎっしりと詰まったスケッチブックも公開される。主催者でギャラリーの山中周子さんは「想像から次の創造へというタイトルに込めた思いとして、たくさんの作品とともに、よっちゃんの想像力が詰まっている制作過程がわかるスケッチブックの膨大なメモも含めて見てほしい」と話す。(柴田大輔) ◆松橋克希個展「イマジネーション クリエイト 想像から創造へ」は、つくば市千現1丁目23-4マイコーポ二の宮101、ギャラリーネオ/センシュウで、3月6日(金)から22日(日)まで開催。開館は金・土・日曜。開館時間は金曜は午後3~7時、土日は午後1~5時。入場無料。問い合わせは、メール(info@neotsukuba.com)でギャラリーへ。