つくば市の福祉機器製造会社、幸和義肢研究所(同市大白硲、横張巧社長)が運営する障害者就労支援事業所ワーク・イノベーションセンターで、障害のある通所者が、不要になった古本を回収、クリーニングしてネット出品し、購入者に発送する活動を行っている。本の売上金の一部は通所者の工賃になる。
古本は、つくば市内や近隣市の企業10数カ所に回収ボックスを設置して回収しているほか、つくば市内の小中学校にも協力を依頼している。古本は無料で提供を受ける。竹園東中学校ではPTAの活動の一環として、回収ボックスを設置し、約150冊の寄付があった。
古本の回収・ネット出品は、障害者の雇用創出などに取り組むワーキングバリアフリー(東京都千代田区)が運営する「ジョブボン(job+本)プロジェクト」によるもので、業務を通じて障害者の就労支援や自立支援を行うことを目的としている。全国で22の施設や団体がプロジェクトに提携しており、同研究所のワーク・イノベーションセンターも提携施設の一つだ。
同センターでは、昨年6月から同プロジェクトの活動を始め、これまでに約3200冊の古本を集めた。集めた本は、通所者が書き込みの有無など本の状態を調べて査定し、商品として販売できるものは表紙をアルコール消毒したり本の間のほこりをはけで払ったりしてクリーニングし、本にビニールをかける。さらに本のバーコードを利用した出品システムを用いてこれまで2500冊を出品、インターネット通販大手、アマゾンのネットショップ「早稲田ブックス」で販売している。
これまで売れた本は約340冊、売り上げは合わせて十数万ほど。通所者の工賃は現在、他の仕事も含めて月数万円程度という。今後は本の回収を積極的に進めてジョブボン事業の拡大を図る。
宛名の貼り付けや梱包作業を担当している通所者は「お客様の情報を扱って発送するので間違いがないよう注意を払っている。その日に何件注文があり、発送するのかを確認し、必要な道具を準備してから作業を始める。本の重さや大きさによって発送方法が変わるが、梱包作業は好きな方なのでやりがいがある」と話す。
同研究所就労支援部の志賀智史さんは「黙々と作業ができ、パソコンを使った作業やクリーニング、梱包や重い本の持ち運びなど様々な工程があるので、障害の種類に応じて分業しやすい。メーンで作業している通所者は本が好きなので、やりがいもあると思う。ただ、本がなければ作業もできないので、活動を知ってもらい、もっと本を集めたい」と話す。「全国ナンバーワンの工賃を払える事業所を目指したい」と語る。(田中めぐみ)
◆問い合わせは同ワーク・イノベーションセンター(電話029-875-3351)へ。