深刻な経済危機に見舞われているスリランカで、大統領退任を求める抗議行動が行われているのに呼応して、つくば市在住のスリランカ人約30人が10日午後、つくば駅前に集まり、プラカードや国旗を掲げて大統領退任を求める抗議行動を行った。この日は東京都渋谷区など日本各地で、在日スリランカ人が一斉に抗議行動を行った。つくばもその一つという。
10日午後、つくば駅前に集まった市内在住のスリランカ人らは、現職のゴタバヤ・ラジャパクサ大統領を名指しし、「大統領は辞任せよ」「大統領は憲法を守れ」「腐敗を止めろ」など、日本語と英語、シンハラ語で書かれたプラカードを掲げ、声を上げて抗議した。
集まったスリランカ人によると、現在スリランカは、中国から巨額の借金をしたことやウクライナ情勢の影響で、物資不足や物価高騰、長時間の停電などが起こっている。ゴタバヤ大統領は家族や親戚を閣僚に据えた政治を行っていたが、今月4日、閣僚ら26人と中央銀行総裁が経済危機の責任を取って一斉辞任した。しかし、ゴタバヤ大統領とその実兄であるマヒンダ首相は現職にとどまっており、スリランカ国内で抗議デモが過熱しているという。
筑波大学で農学の博士号を取得し、現在、市内の会社で農業コンサルティング業務に携わるアルナ・プラバートさん(42)は、市内在住の家族と共に抗議行動に参加した。「(スリランカでは)生活に必要なものがなく、物価が高い。ガソリンや子どものミルク、薬も不足している。エネルギー不足で1日に14時間停電することもある」と話し「自分はつくばに住んでいて不自由なく暮らしているが、父と母、親戚もスリランカにいるので心配でつらい。大統領には責任を取って辞めてほしい。私たちが日本でできることは抗議活動しかないが、この声が大使館などに伝わって、大統領に、国民のことをよく考えてくださいと言ってほしい」と訴える。
市内在住で下妻市内に勤務しているピカル・ハプワラーナさん(33)も家族と共に参加した。「スリランカは外貨不足になっていて海外から輸入ができず、国内に物資がなくなっている。2カ月ぐらい前から状況がかなり悪くなった。2、3カ月前に比べて物価が50パーセントも上がったと聞く。多くの会社が倒産し、みんなの仕事も大変なことになっている。スリランカに父と母がいるが、高齢なので心配している」と話す。
同日は、つくばから、東京都内で行われた抗議活動に向かった人たちもいるという。(田中めぐみ)