つくば市は2022年度の新規事業として、障害者が電車やバスに乗った時の交通費を助成する心身障害者鉄道・バス利用料金助成事業(約1700万円)と、重度障害者の就労時の介助費用を支援する重度障害者就労支援特別事業(当初予算案約830万円)を実施する方針だ。
障害者と家族、支援者などからなる市民団体「障害×提案=住みよいつくばの会」(主催・斉藤新吾さん)が2020年の市長選挙、市議会議員選挙の立候補者に、公開質問状の形で提案したものだ。
タクシー券と選択制に
鉄道・バス利用料金助成は、障害者が交通系ICカードを利用し、電車やバスなどに乗車した時の交通費を助成する。
市はもともと障害者などにタクシー乗車費用の一部(1枚500円を年36枚までなど)を助成している。申請があっても4割程度の金額しか利用がないなど利用率が低かったことから、同会は、既存のタクシー券を、バス・電車などの運賃やガソリン代としても利用できるよう選択制にし、障害者の社会参加をより促進することを提案していた。
市障害福祉課でも検討が進められ、同会も市と意見交換をしてきた。その中で出てきたのが、交通系ICカードを給付し、タクシーだけでなくバスや電車も利用できるようにする案だった。
市との話し合いの過程では、ICカードの精算方法などの課題も出ていた。より多くの人が利用できる制度の仕組みを考えるため、同会では昨年、様々な障害を持つ人や家族、幅広い市民を対象にした市民フォーラムを2回開催した。普段同会に参加しているメンバーは車いす利用者が多いが、フォーラムには視覚障害者も参加した。
市との話し合いで、市が助成して交通系ICカードを作る案が出たが、昨年10月の2回目のフォーラムで視覚障害者から「個人でICカードを持っており、同じ形状のカードが2枚あると、誤って交通費以外に使ってしまうだろう」と危惧する意見が上がっていた。
市障害福祉課によると新年度からは、従来のタクシー券または交通系ICカードのどちらかを選べるようにする。約970人の利用を想定しており、議会で予算が可決されれば4月から申請を受け付ける。助成方法など詳細は検討中だ。

県内初 就労の壁崩す
就労支援特別事業は、就労中の重度障害者の介助サービス費用を助成することで、障害者の就労を促進する。従来の公的介助サービスは通勤時や就労時は利用できないため、介助が必要な障害者は、働きたくても自費で介助費用を負担しなければならず、事実上、就労が難しかった。
同会の提案を受け、市障害福祉課は他市町村の実施状況など調査を進めた。市の調査では、昨年5月時点で県内で同事業を実施している市町村はなかった。
新年度予算では、フルタイムで勤務する重度障害者2人の利用を想定している。
予算計上を受け、同会の斉藤新吾さん(46)は「多様な障害のある人とその家族など、市民を中心に提案したことを、市議会や担当課とも話し合い、実施にこぎつけたことはとてもうれしい」と話す。(川端舞)